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ハーレーの内紛。自爆営業はX500か、は邪推か【公取が立ち入り検査】

ハーレーダビッドソン・ジャパン(以下、ハーレー・ジャパン)による、ハーレー販売会社いじめが事件化された。
ハーレーの販売は好調なのに、なぜ内紛が起きたのか。
原因はX500ではないのか、というのが私の仮説である。

これまでの流れ

文春はすでに2024年5月までに、アメリカのハーレーダビッドソンの日本法人、ハーレー・ジャパンが、ハーレー・ディーラーを運営するハーレー販売会社に、自腹でハーレーを買うよう強要している問題を報じていた。
いわゆる自爆営業である。

そして2024年7月、公正取引委員会がハーレー・ジャパンを独占禁止法違反(不公正な取引方法)容疑で立ち入り検査を行った。

公取が疑っているのが自爆営業だ。
ハーレージャパンがハーレー販売会社に、不人気車を一方的に出荷して販売を強要した、というのである。
その不人気車は、2023年10月日本デビューのX500なのではないか。
そう推測する根拠を紹介したい。

X500は格好悪い、といってよいのではないか

X500のスペックは、500㏄、47馬力、46Nm、車両重量208kgだが、実は性能なんてどうでもよくて、このバイクの最大の欠点はV型エンジンではないこと。
つまりハーレーのアイデンティティがない、悲しいバイクなのだ。
そして最大の欠点はもう一つあって、それは価格が84万円もすること。
いや、最大の欠点はもう一つあった。
格好悪い。

格好良い・悪いは人の感性によるわけだが、しかしなかには、絶対的な格好良さ・悪さというものが存在する。

X500のデザイン上の欠点はいくつかある。
まずタンクが腫れぼったい。
もっと小さくするか、逆にもっと大きくするべきだっただろう。
形状も悪い。
単純なラインで構成されていて、金型コストを下げる狙いがうかがえる。

そしてサイドカバーは、いかにも「タンクとリアカウルをつなげました」という形状で、工夫を感じられない。
シートカウルは、無理矢理ハーレーの人気車種に似せているから違和感がぬぐえない。
ここにハーレーのアイデンティティを入れたつもりなのかもしれないが、製造コストが安いシートカウルで自己主張するのは、なんかセコイ。

ライダーのステップと後者ステップの一体化も、マフラーのサイレンサー部分も、ぼってりしていてシャープさに欠ける。
遠慮なくいわせてもらうと、取ってつけた感すらある。

ここまで欠点が多いと、倒立サスとラジアルマウント・キャリパーの豪華装備すら、車体価格を吊り上げるために無理矢理つけたのか、と疑われてしまう。

X500、走行1kmの自爆営業車は10万円引き

グーバイクには、走行距離1kmや5kmといった、自爆営業車が濃厚に疑われるX500が並ぶ。
その車両価格は74万円や75万円で、新車価格の約10万円ダウン。
「ここまで値下げしないと売れない」という、ハーレー販売会社の悲鳴が聞こえてくる。

「日本用にX500をつくって日本で売れないんだから押し売りするしかない」的なものか

さしものハーレー本体も、X500のようなハーレーらしからぬハーレーを、アメリカで売る気はないだろう。
だからX500は、ハーレーのブランドがあればなんでも買ってくれそうな、小金持ちのアジア人がターゲットになっていると推測できる。
ところが日本のハーレー・ファンも、ミドルクラスのバイク乗りも、偽ハーレーに踊らされることはなかった。

そうなるとハーレー本体やハーレー・ジャパンとしては「日本用にX500をつくったのに売れないとは何事か」となる。
しかしハーレー本体やハーレー・ジャパンは、X500をつくった張本人だから「日本のバイクファンをなめすぎた」と反省することはできない。
それでハーレー・ジャパンは「X500が売れないのはハーレー販売会社が一生懸命売らないからだ」と考えたのだ。

以上が私の空想である。

しかもハーレーのV型の大型バイクは売れているから、ハーレー・ジャパンはハーレー販売会社に「X500を売らないなら、V型大型を卸さない」と言うことができてしまう。

以上の考察が、ハーレー自爆営業事件の原因はX500にあるのではないか、という仮説の根拠である。

安く売るか、きちんとつくるかすればいいのに

ここからは解決策を考えてみたい。
私は、ハーレーはX500をつくるべきではなかったと思うのだが、ではハーレーは何をすべきだったのか。

自爆営業事件の第1義的な原因は、ハーレー・ジャパンの横暴さであるが、第2義的な原因はマーケティングの失敗ではないか。
マーケティング原因説とは、価格設定の失敗と開発コンセプトの失敗である。

CL500も失敗している

まず価格設定であるが、X500と似たコンセプトを持ち、性能も同レベルのバイクにホンダCL500があるが、こちらも失敗している。
CL500の新車価格は86万円だが、自爆営業的なバイクが10万円引きで売られているのだ。

X500とCL500の性能の比較は以下のとおりで、2台が酷似していることがわかる。
■X500
500㏄、47馬力、46Nm、車両重量208kg
■CL500
471㏄、46馬力、43Nm、車両重量192kg

この2台の失敗から、中途半端な排気量の、それほど精魂込めてつくったわけではないバイクは売れない、という法則がみつかる。

「精魂込めてつくっていない」という言い方は申し訳ないと思う。
どんなバイクも一生懸命つくっているのだろう。
しかし、それでもなお、私にはそう思えて仕方がないのである。

X500の84万円も、CL500の86万円も、実は安い。
というか、安くつくって適正価格で売っている。
ハーレーもホンダも、それほど熱いわけではないバイク乗りが、この程度のバイクを欲しているだろうと考えたのだろう。

この見立ては悪くなかった。
つまり、それほど熱くない消費者を狙うのは、マーケティング戦略としては、あり、だ。
しかし事実はそうではなかった。
熱くないバイク乗りは、熱くないバイクを好むわけではないのである。
だからハーレーもホンダも、精魂込めていないバイクは、適正価格よりもはるかに安く売らなければならなかったのである。

ドカ・スクランブラーが正解では

X500とCL500の同類車にドカティのスクランブラーがある。

性能はこうなっている。X500とCL500の性能も再掲した。

■ドカティ・スクランブラー
803㏄、73馬力、66Nm、車両重量189kg

■X500
500㏄、47馬力、46Nm、車両重量208kg

■CL500
471㏄、46馬力、43Nm、車両重量192kg

スクランブラーはX500・CL500より排気量がかなり大きく、馬力もトルクもしっかりあり、それでいて軽い。
つまりドカティはスクランブラーをしっかりつくり込んでいるのだ。

グーバイクには、スクランブラーの自爆営業車はあまりなかったが、1台それらしきものがあった。
走行2kmのスクランブラー・フルスロットルの価格は139万円だった。

新車のスクランブラー・フルスロットルの希望小売価格は133万円なので、むしろ上記の個体のほうが高くなっている。
つまり自爆営業しているとはいえないのである。

しっかりつくるしかない

バイクに詳しいわけではないがバイクは好き、という人に、X500とCL500とスクランブラーをみせたら区別がつかないと思う。
だからハーレーとホンダが、スクランブラーの廉価版をつくった気持ちはよくわかる。
しかしバイクに詳しいバイク好きは、スクランブラーには乗りたいと思うが、X500とCL500には乗りたくないと思うのだ。

しっかりつくって、適正価格で売る。
バイクのビジネスモデルはこれに尽きるようだ。


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