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六十の手習い、九十の間に合う
行政書士としての知識や経験のブラッシュアップを図るため、行政書士会の支部で開かれているいくつかの勉強会に参加しています。中でも、相続・遺言・法定後見の勉強会では、この5月からとりまとめをお引き受けし、試行錯誤しています。「六十の手習い」という言葉があり、六十は七十や八十でも置き換えられ、最後は「九十の間に合う」でと言われています。これは年をとってから学問や習い事を始めることのたとえで、自分の年を考えるとまだまだ間に合うということだと思って、お引き受けしましたが、前のとりまとめをされていた方はかなり年下の方なので、ほんとによいのかなと思ってしまいます。
行政書士の勉強会の運営で一番難しいと感じているところは、他の士業の方々との業際問題に関わる部分です。勉強会は、相談や業務の質を上げるためにやっているのですが、その内容には他の士業しかできない分野(当事者本人はすべてのことができますが、代理人として行う場合には法律でこの士業しかできないと決められているものがあります。)も含まれてきます。それは他の士業しかできない分野に属することであっても、常識論や一般論として知っている必要があるからです。
相談業務においては、ご相談者に対して一般論としてお話していい部分なのか、専門の士業の方に譲るべき話題なのかの線引きの問題が出てきます。毎回の勉強会でも頻繁に議論になります。
ご相談者のほとんどは、行政書士がどこまで話をできるのかはご存じありません。そして、「法律で決められてできない分野があるので、ここからは他の士業の方にご相談ください」と聞いたご相談者に、二重手間になるとか不親切とかといった思いを持たれてしまうと、サービス業をしては避けたいシチュエーションに陥ってしまうリスクがあると思っています。
相続の話で具体例を言えば、具体的な相続内容が相続人間で決まって、遺産分割協議書の作成するだけなら行政書士としてできます。ただ、相続税のところになると一般的な知識でお話しできるところはありますが、税額の算出に関わるところになると税理士の業務の範疇になってしまいます。弁護士との境界も問題になります。相続人間でもめてしまった相続は弁護士の業務の範疇になります。
先日の勉強会で出た話ですが、相談会で離婚に関する相談が来たらどう答えますかという話が有りました。離婚は相手との交渉事になるので、そもそも弁護士の業務の範疇になります、単純に弁護士にご相談くださいとも言えますが、それだけではどうかという話となり、ある先生から何も決まっていない間は離婚届に判は押さないでくださいと話をされると話が有りました。なかなかの回答と感心してしまいました。
知識はネットや書籍で調べることが可能ですが、この業際に関わる問題は、これは業務経験を積む中で定まっていく部分ではないかと思います。ただ、士業は一人でご相談者の相談を受けることが多く、実際の業務経験で迷ったところを勉強会等で他の先生方のお話を聞いていくことが、すごく大事だなと感じました。
勉強会とは別になりますが、過去取得した資格に関しても、特に仕事上直接関係ない資格でも、更新講習を受け、資格の更新をしています。直近では貸金業務取扱主任者という資格の更新講習を受けました。昔ながらの貸金業の世界は存続していますが、IT技術と金融が結びついたフィンテックと称される分野も広がっています。IT技術による既存の金融商品の改良や審査手法の刷新、クラウドファンディングの一般化、金融サービス仲介業の具体的法制化など、即今の動きは、時代の変化を感じ大変勉強になりました。更新講習のあと、大学の友人が関わっているNPO法人が、先般クラウドファンディングをやって、目標金額を達成したのを目の当たりにし、その変化を本当に身近なものとして感じることができたのはよかったと思っています。