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「VHS2025年問題」に備える~職場の映像メディアのアーカイブ化~



VHSのビデオテープは、
カラフルな製品もあるが一般的には黒色。
旧:日本ビクター(現:JVCケンウッド)が1976年に開発。

VHSは1980年代から2000年代にかけて、世界中で主要な録画メディアとして使われました。VHSは旧 日本ビクター(現 JVCケンウッド)が開発した、日本発祥の規格で世界的にも広まり大成功を収めました。

VHSビデオテープの活用の場面を点検してみる

職場を見渡してVHSのビデオテープは一般的にイメージするところでは、以下のようなシーンで活用されていたものと思います。

  • 会社の社史

  • 会社案内

  • 社内イベント

  • 創業記念行事

  • 式典のスピーチ

  • 研修用映像

  • 製品発表会

これらは時間やコストをかけて制作された、いわば職場の資産であるので後世に向けて大切に保管したいものです。

学校でいえば学校案内や創設者などの歴史を振り返るビデオなどが該当するのではないでしょうか。

※このアカウントは会社企業などの業務向けの話題を提供していますが、一般家庭でも同様です。
一般家庭では主にテレビ番組を録画することで使用していましたし、当時のビデオカメラで家族旅行や子どもの運動会などを撮影していた方は、最終的に映像をVHSなどに録画(書き出し)していたので、たくさんのビデオテープを持たれていることでしょう。

VHSの課題(寿命、製造終了等)

VHSビデオテープの記録部分は、テープ状の素材を使用してここに映像を記録しています。このテープに記録する素材を磁性体と言いますが、テープ全体に塗ってあるようなイメージです。
その磁性体が機能する限界が約10~30年程度と言われています。
つまりは製造当時から現在までの経過の中で劣化し、近々限度を迎えることを意味しています。
磁性体が限界を迎えれば情報が失われ、再生しても映像が乱れたりして最悪映らないことになります。

DVDやBlu-rayレコーダに主役が置き換わったときに、VHSのビデオテープは過去に置いてきてしまったかもしれません。
ここではそれらの映像が正しく再生できるうちに、保管について考えてみたいと思います。

ビデオテープはテープが伸びるため高温を避けることや、またカビが発生しないために湿気に気を遣うようなイメージが強いメディアですが、磁性体を使用していることから磁気に弱く、また経年劣化も進んでいることを理解しなければなりません。
近くに磁気を発生させない配慮は、あまり意識してこなかった人も多いのではないでしょうか。これは音楽向けのカセットテープや、フロッピーディスクなども同じです。

VHS再生機器(プレイヤー)の製造は各社から発売されていましたが、最後の製造メーカーもすでに2016年に終了し入手困難となり、また機器を所有していても修理ができる技術者も減少しているということです。

「VHS2025年問題」は国際的な課題

まず「VHS2025年問題」という表現ですが、正式な名称というよりは俗称のようなもので「2025年頃を境に使用可能な再生機器や保存可能なテープの大幅な減少が予測される」という状況をコンパクトにまとめているマスコミ的な表現なります。
ただし多方面で多く表現されていますので、ここではこの言葉を使用して進めていますのでご了承ください。

さて、この問題が一般家庭や個人の問題だけでなく、世界的な文化的・歴史的遺産の喪失リスクでもあるため、ユネスコでも過去の映像資産(VHSに限らずビデオテープなどのアナログ方式のメディア)の保管の将来について関心を寄せています。
企業・教育機関、政府機関の資料保存まで幅広い用途に使用されていたため、その影響範囲は広大です。アメリカ議会図書館(Library of Congress)や英国映画協会(BFI)など、多くの国際的な機関が、磁性体メディアを含むアーカイブ保存プロジェクトを進めています。

解決策としてのアーカイブ化提案

本件を組織の中心に置いて取り組む

このプロジェクトは組織全体の資産に関わるため、全体を見渡せる部署や役職が総括を担うのが望ましいでしょう。また技術的な部分の対応はシステム管理部門などが当たることが適任です。

このような特定の部署や業務に当てはまらないプロジェクトを始めるにあたって、前向きに周囲と調和を図り、協力をしていきましょう。
自分が籍を置いている組織の映像資産に関わる話ですので、仕方なく担当者になってしまったとか、「うちの部署の仕事ではない」という狭い捉え方はうまくいきません。

VHSのアナログ方式からデジタルに変換して永久的に保管する方法として一般的な方法ではありますが、以下に紹介をさせていただきます。

デジタルアーカイブ化のメリット

  • 主にパソコンで映像データを閲覧でき、保管が容易

  • データとして保管するため永続的な保存が可能

  • 必要に応じた場面のカット編集や再利用が容易

  • (VHSビデオテープを破棄でき、スペースを確保できる)

職場の対象VHSビデオテープの収集にあたって

ここではアーカイブの対象となるVHSビデオテープの、職場での呼びかけについて記載します。

  1. アーカイブ化に向けたチーム編成や予算計画を提案
    人的リソースを消費しますので、専業として勤務時間内の業務として対応に当たれるか、など技術以外の面で適切に執り行うことができるか整備が必要です。

  2. 職場でのVHSビデオテープの所有・保管状況を確認(呼びかけ)
    「VHSを保管している人は持ってきてください‥‥」という程度の軽いアナウンスではなく、職場の正式な方針として取り組まれた方が賢明です。

  3. 回収期間の設定
    無駄に長く設定しても終わりが見えないので、早い段階で収集できるような期間を設定するとよいでしょう。

チーム編成など大げさに聞こえるかもしれませんが、手が空いている人などが対応すると間違いが発生することがあるので、ルールを決めて対応します。またこの活動を通して現状よりもさらに職場に関心を持ってもらえる よい機会になるものと思います。
「収集した映像をライブラリ化していつでも活用できるようになる」などと最終的なゴールがイメージできるようアナウンスするのもよいと思います。


以下では具体的なデジタル化の方法を記載していきます。

デジタルアーカイブ化と活用の流れ

  1. VHSテープの内容をパソコンで扱えるmp4などの映像形式に変換
    ※方法については下記で紹介。

  2. ファイルにメタデータ(日時、イベント名、撮影者等)を付加して整理
    ※「20010105_新年会_総務課.mp4」のように、ファイル名に規則性をもって命名する。

  3. 社内ファイルサーバで利用できるようにし、バックアップ体制を整備
    ※通常の小さな文書ファイルを保存しておくファイルサーバに、大容量の動画ファイルを置いて利用することは、ネットワークを圧迫して全体のパフォーマンスを落とすことになります。そのため専用のストレージを用意するか、または映像の保管が多い業種であれば、これを機会にメディアサーバなど配信専用の仕組みを取り入れてもよいと思います。

  4. 運用の管理体制について
    最終的にはパソコンで扱える映像ファイルになり、利便性が向上します。しかしその反面以下のような事が発生しますので、事前に対策の検討が必要です。
    ・ファイルの操作ができてしまうので、持ち出しルールの策定や削除された際の対策
    ・DVDプレイヤーで観たいなどの要望に対応できるか、または対応しないか

デジタル化の選択肢

【方法1】専門業者に委託

選択肢として、VHSビデオテープからDVDやBlu-rayへの変換サービスを提供している家電量販店やカメラチェーン店を利用されることが近道であると思います。それら店舗やサービスは一般家庭向けの対応が主となるので、細かな指定はできず、また大量のビデオテープがある場合は専門業者を探してみるとよいかもしれません。
ただし著作権として保護されている、例えばテレビ番組を録画したビデオテープはNGとなります。また市販の製品はプロテクトがかかっているので正しく複製できません。
結局のところ、DVDやBlu-rayのメディアも寿命がありますので、これが正しい選択かは、職場の考え方によると思います。

【方法2】自分たちで対応

パソコン向けに用意された一般的なキャプチャーユニットやキャプチャーボードを利用して、パソコンに取り込む方法です。
ビデオの映像をパソコンのデータに変換するだけであれば、機器を接続し操作するだけですが、より高い品質の映像に仕上げるには知識が必要です。これについては、当記事のテーマから離れてしまいますので、別の記事でまとめたい(後日掲載)と思います。


(参考)キャプチャーユニット製品の例


個人で行う場合、作業にかかる労力も考えよう

一般的にはビデオテープに30分の映像があり、これをパソコンに取り込む場合、この作業だけで30分かかります。前述しましたが、勤務時間内の業務として対応できるのか、プライベートな時間を割くのか、時間的コストや人的リソースなどの問題をクリアにする必要があります。
また作業を行う環境について、周囲に大きな電力を必要とする機器がある場合はアナログ信号のため映像が乱れることがあります。このようなことに対して対応できるような適切な環境が用意されていることも考慮すべきです。

当方の事業の一環でも変換作業を行っています

当方の事業の一部として、ITの技術的な業務改善などの対応を行っていますが、この記事で扱っているような変換作業も行っております。
ただ現在のところ当方の知り合いなど、周囲の方々から要望があったときに対応しており、作業の時間制限もなく完了次第 納品、といったような条件で対応している状況です。
法人様のみとなりますが、ご相談がありましたらご連絡いただけますと幸いです。

これを機会に保管方法を検討された方がよい

磁性体を使用しているメディアは、VHS以外にも以下のようなメディアで使用されています。

  • ビデオテープ

  • ビデオカメラのテープ(8mm,MiniDV等)

  • カセットテープ

  • DAT (Digital Audio Tape)

  • フロッピーディスク

  • ストリーマー

経年劣化で磁性体の機能が低下してくると、映像は乱れ、音声はノイズが聞えるようになります。データであれば読み書きのエラーが発生します。

保管先として、CD,DVD,Blu-ray、USBメモリ、HDDやSSDなど多くのメディアがありますが、すべての保存メディアには寿命があります
考え方として提案したいのは、ひとつのメディアでの永久保存は難しいため、現行メディアに適宜移行(コピー)をして、時代に合わせて保存メディアを変えていくことです。


職場の歴史が記録されている映像コンテンツや、家庭の想い出を途絶えさせないためにも、この分野は意識的に取り組まれることをお勧めします。
単にデータ保管というテーマではなく、後世に伝える重要な意味があるものと思います。


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