【番組紹介】『X年後の関係者たち あのムーブメントの舞台裏』ドラゴンクエスト編
この記事は番組内容を簡素にまとめる形で構成しました。
ゲームと同じように、番組もご自分で視聴することに価値があると思いますので、全体の感想のようなイメージでお読みいただけると幸いです。
画面のスクリーンショットは法律で定められている引用の範囲で使用しています。
番組名『X年後の関係者たち あのムーブメントの舞台裏』ドラゴンクエスト編
BS-TBS 11月11日(月)放送
ARKによる番組解説
番組内容は当時ゲーム雑誌だけでなく関連書籍や、一般誌などのインタビューで公表されていた話が多くありましたが、テレビというメディアで当事者から話が聞けることはとても貴重で、時代が戻ったかのような感覚になりました。
私は、一プレイヤーではありますが、当時の活気を知っている者として、とても感慨深く思える内容でした。
番組は開発側からみた濃い内容で構成されています。
データの単位であるバイトという言葉や、色数の制限など、ファミコンのスペックの事情を予備知識としてもっているとより楽しめる話でした。
MCをカズレーザー氏として、『ドラゴンクエスト』のゲームデザイナーである堀井雄二氏と、ゲームディレクターの中村光一氏が、当時の話を振り返っています。
特にカズレーザー氏は様々な分野で博識があるうえ、『ドラゴンクエスト』はすべてプレイしているようで、ご自分の言葉で話されていたので、そんな観点からも興味深く拝見しました。
この放送は9月に収録したようですが、11月14日(木)に発売される、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のPRの目的もあるものと思われます。
しかしながら ほとんどがファミコン版の話でしたので、リメイク元となるオリジナルの様子を知るよい機会となったと思います。
『ドラゴンクエスト』の優しさ
少ない経験値で早くレベルアップを体験させたり、HPが0になっても復活の際に所持金を半分にするだけという緩い措置など、あらゆる場面で配慮を考えたとのことです。
『ポートピア連続殺人事件』が発売された理由
ここでAVG愛好家として、『ポートピア連続殺人事件』と『ドラゴンクエスト』の関係について触れておきます。
『ドラゴンクエスト』がテーマの記事ではありますが、『ポートピア連続殺人事件』の存在も外すことができません。
まずファミコンにアドベンチャーゲームを用意する
『ドラゴンクエスト』の発売前‥‥1986年以前、パソコンでアドベンチャーゲーム(AVG)が流行していました。アクションゲームしかなかったファミコンに新しいゲームジャンルを持ってくるという取り組みを考えたときに、グラフィックなどの容量の都合でファミコンへの移植は難しいとされていました。
そこで堀井氏自身の作品であるパソコン版『ポートピア連続殺人事件』であれば、小容量でシンプルな構成のため移植ができるだろうということで選定され、ファミコンに登場しました。
『ポートピア連続殺人事件』で操作に慣れてもらう狙い
ご存知の通りファミコン版『ポートピア連続殺人事件』は、コマンド選択方式を採用し、登場人物と会話し、文字を読んで進めるというスタイルを採っています。
後に発売される『ドラゴンクエスト』も同様に、メッセージを読むことで物語を進めていくため、『ポートピア連続殺人事件』は予習としての役割を持って、事前にシステムを理解してもらうという狙いが含まれていました。
『ドラゴンクエスト』の"コマンド選択"の祖先は『オホーツクに消ゆ』
それまでパソコンのAVGは、キーボードからタイピングしてコマンドを入力する方法が主流でしたが、堀井氏作のパソコン版『オホーツクに消ゆ』ではキーボードがあるにもかかわらずコマンド選択型を採用(発明)していました。
この方式をファミコン版『ポートピア連続殺人事件』に持ち込み、『ドラゴンクエスト』のシステムのインターフェイスにつなげました。
ご参考までにまとめてみましたが、コマンド選択のインターフェイスの採用順は、以下のようになります。
1983年 コマンド入力方式:パソコン版『ポートピア連続殺人事件』発売
1983年 ファミコン発売
1984年 コマンド選択方式:パソコン版『オホーツクに消ゆ』発売
1985年 コマンド選択方式:ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』発売
1986年 ファミコン版『ドラゴンクエスト』発売
1987年 コマンド選択方式:ファミコン版『オホーツクに消ゆ』発売
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RPGと『ポートピア連続殺人事件』の関係
堀井氏はRPGをファミコンに持ち込むことについて、ウケると感じていたようでした。RPGの始祖とも呼べる『ウルティマ』や『ウィザードリィ』が海外ではすでに流行っていましたが、難易度が高いRPGと同じものをいきなりファミコンに持ち込むことは難しいと考え、その下ならしとして『ポートピア連続殺人事件』が役割を果たし、大衆ウケする親しみやすいRPGの形をつくり、『ドラゴンクエスト』が発売されました。
堀井氏が考えたコマンド選択方式だけでなく、中村氏が考案したウィンドウシステムなどを採用することで、操作まわりのやさしいインターフェイスが誕生しました。
このあたりの話は、当時堀井氏が書かれていた書籍や雑誌のコーナーなどで断片的に語られていますので、あの時代に記事を読まれた方も多いことでしょう。
容量との戦い
カズレーザー氏は『ドラゴンクエスト』シリーズをすべてプレイするほどのファンであることから、ご自身で気が付いたことを話される場面がありました。
同作の敵は一般に"モンスター"と呼ばれていますが、ゲーム中では"まもの"との表記が使われていることを堀井氏に伝えたところ、「"モンスター"は5文字を消費し、"まもの"は3文字で済む」との回答。こんなところからもメモリ節約の工夫がうかがえました。
ファミコンでは おなじみのテクニック、色を変えることで強さを表現する話題が出ました。
ほかにも容量オーバーでメッセージの文字数の削減、町をまるごとひとつ削除したなど、当時の苦労が多く語られました。
まとめ
番組は主にファミコンで発売された、シリーズ『I』,『II』,『III』,『IV』を中心にまとめられていて多くの尺を使用しています。
故・鳥山明氏や 故・すぎやまこういち氏との出会いやエピソード、ドラクエ名物の"復活の呪文"にまつわること、シリーズで語り草となっている『II』のバランスの悪さなど、いろいろな話がおふたりの言葉で語られています。
※番組の収録は今年9月に行われたとのことですが、この時期にはすでに、鳥山明氏とすぎやまこういち氏はお亡くなりになられています。しかしながら このことについての言及は全くありませんでした。
テーマから外れてしまうことを考慮しての対応だったと思います。
番組は取り扱う内容の深さなどから、同作について相当熟知しているスタッフが構成したものと思われます。
全体的に『ドラクエ』愛に包まれた作りになっているので、ぜひご覧いただきたい番組です。
(終)
(参考)HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』ゲーム紹介トレーラー
1月14日(木)発売
※HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』は、2025年発売予定
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