1987年にアイドルの中山美穂さんが高校にいた話
作品データ
【タイトル】
『中山美穂のトキメキハイスクール』
【発売日】
1987年12月1日
【キャンペーン】
1987年(昭和62年)12月19日(土)~1988年(昭和63年)2月29日(月) ※閏年
【供給媒体】
ファミコン ディスクシステム / ディスクカード(青)
物語は学園モノで通常はコマンド選択型のシステムで進んでいくAVGですが、数々の試みが盛り込まれている意欲的な作品となっています。
この記事では攻略ではなく、作品の紹介を中心に進めていきます。
通常は一般的なAVGパート
通常は一般的なスタイルのAVGでコマンド選択型のインターフェイスで進めていきます。
表情とセリフを組み合わせるシステム
ゲームの途中、中山美穂との会話シーンになると、プレイヤーの表情と会話内容を組み合わせるシステムに切り替わります。
組み合わせの総数はそれほど多くはなく、全パターンを試せば進めますが、ディスクアクセスの頻度やスキップ機能がない仕様を考えると多少の煩雑さがあり根気が必要です。
キャンペーン期間中には実現しませんでしたが、後日 表情とセリフの組み合わせの全パターンを試して一覧にしました。
テレホンサービスを使った演出
複数の重要なシーンでは、忙しい中山美穂をはじめ登場人物と連絡を取るために、実際の電話を使って指定の電話番号にかけるという機会があります。これは当時一般的であったテレホンサービスを利用したもので、あらかじめ録音された中山美穂らの演技により次のシーンのヒントがもらえる仕組みです。シーンとシーンの間で物語の一部が音声で演じられます。
ちなみに電話をかけなくてもゲームは進みますが、シーンのつながりや次の行動の方針がわからなくなるのでプレイヤーとしては必要な行動となります。
また電話番号は東京をはじめ、北海道や大阪などの局番も使用され、実際の距離感を演出していました。これによりゲーム画面の外にも世界が広がっている感覚にさせてくれました。
この電話をかける手法はじっくりとテレビ画面の前でゲームをしたい自分にとって、時にはストレスになりましたが、一旦ファミコンから離れて、電話を使って進めるという演出にいろいろな可能性を感じました。
ディスクファクスを使ったキャンペーン
エンディングを迎えたセーブデータが入ったディスクカードを、店頭のディスクファクスを通じて処理をすると、ユーザーデータが任天堂に送信されキャンペーンに応募できました。
景品は2つあるエンディングの種類によって、ビデオテープまたはテレフォンカードとなっていました。その数は なんと各8,000名、計16,000名(!)に抽選で当たるというもの。この数からも任天堂の本気が感じられ、また当時の景気の良さも感じ取れました。
またディスクファクスではエンディングにたどり着けないデータでも、任天堂から進捗状況に合わせたヒントが書き込まれる仕組みを持っていました。
ディスクファクスは百貨店などに設置されていましたが、ユーザーではなく店員が操作をするため、主にレジのカウンター内などに設置されていました。そういったファミコン関連の装置にも関心があるファミっ子としてはもっと近くで見てみたかったという気持ちがありました。
また見慣れているディスクライター(ディスクカードの書き換え機)とディスクファクスの大きな筐体が2台並べられていることが多く、ゲーム業界の景気の良さを感じました。
現在プレイするとしたら?
ソフトの入手よりも環境の再現が困難、といったところです。
以下に主な理由をまとめました。
中山美穂という固定イメージがあるキャラクターが受け入れられるか
会話パターンの組み合わせを探すことに注力してしまう
ゲームの中心にあるテレホンサービスのギミックが体験できない
ディスクファクスのサービスはすでに終了している
‥‥などの理由で、当時の温度感が再現できるようなプレイ環境を用意できないことが残念。
攻略本は2種類あるが様子が異なる
双葉社(左)は昔からある手法で、公式ではないイラストが満載です。権利の都合上、タイトルも"中山美穂の"という部分が省略されており、単に『トキメキハイスクール』と表記されています。誌面も「ミホちゃん」と、漢字表記できないなど、権利関係の苦労が見え隠れしています。
一方 宝島(右)の方は、中山美穂のゲーム向けの公式写真やゲーム以外の宣材写真が多く使われていて、よりイメージがしやすい内容となっています。
開発陣は豪華スタッフ
任天堂と旧スクウェアが開発にあたっています。
当時はメーカー同士がタッグを組むことによる話題性はあまり感じられなかったのですが、後日クリエイターという職業が注目されはじめた時期に知ることになって驚きました。
スクウェアのスタッフ(一部)
デザイナー‥‥坂口博信 氏
音楽‥‥植松伸夫 氏
美術‥‥時田貴司 氏
まとめ
早い段階からファミコンの枠組みを超えたメディアミックスを実現していたことや、学園モノに実在のアイドルを起用してファミコンで表現したことなど、大きな楽しみ方を提供してもらえたと考えています。
あの時代では一般的で親しみがあったテレホンサービス、景品のテレホンカード、そして80年代のアイドルブームなど、活気に溢れていた時代に、この作品をリアルタイムで体験できた価値は大きいと思います。
(終)