仕事のこと3.〇〇ごっこ
子どもの世界はおもしろい。
「ただいまー!」と帰ってくる子を、「おかえりー」と迎えて、受付簿にマルをつけていた私。
子どもの顔と名簿をせっせと見合わせている背後を、女の子グループが通った。そのときに、可愛らしい声で
「ねぇ、今日はハンニンゴッコしようよ」
「うん、いいよー」
と、聞こえてきたのです。
……ん?え、何ゴッコ?何ゴッコって言った??犯人ゴッコ、って何?!
思わずふり返って聞こうかと思ったけれど、その気持ちをぐっと我慢して、背中越しに聞こえる会話に耳をすませる。
犯人ゴッコのルールは次のとおり
①誰が犯人かはわからない
②犯人だと思う人に質問する
③犯人を見つける
以上。
「犯人がわかるまでみんなバラバラでね、犯人ですかって聞いていくの」
「ふーん。わかった。でも、私、犯人になるのヤダー」
私の後ろを抜けて走っていく様子に、ちらと視線を向けると、犯人ゴッコの言い出しっぺは、以前、クリスマスにちなんだゲームを考えるプログラムのときにも『謎解きゲーム』を提案した子だった。
「前におうちで人狼(という推理ゲーム)やったんだ。それみたいなやつをやりたいの」って、言ってたわ。
きっと、おうちの人なのか、友だちなのか、みんなでやって楽しかったんだろうなぁ、とその記憶を想像する。
しかし、まぁ、そのルールは斬新だなぁ。
プログラムに落とし込むには、どういう設定をつくればやれるだろ?
と、ニヤニヤする顔を受付簿で隠した。
こんなに愉快な出来事に出会えるのは、子どもの世界の近くにいる特権ということで。
その後、彼女たちの姿は体育館のすみっこに。また何やら楽しい企画で盛り上がり、次は犯人ではなく、ボールを追いかけることにしたらしい。