見出し画像

タウシュベツ日誌 番外編#003 夏至の頃のタウシュベツ川橋梁


北国の夏至

写真家の星野道夫が、夏至について印象深い文章を残している。
僕がそれを読んだのは、まだ北海道に移り住むことなど考えてもいなかった頃のことだ。北海道はただ憧れるだけの土地だった。

夏至がやって来る。太陽の描く弧はどんどん頭上に舞い上がり、もうほとんど沈むことはない。が、夏至はこの土地で暮らす人々の心の分岐点。本当の夏はこれからなのに、明日から短くなる日照時間に、どこか遠くにはっきりと冬の在り処を感じるのだ。アラスカの人々はいつも太陽の存在を確認しながら生きているのかもしれない。

『長い旅の途上』星野道夫

アラスカほどではないにしろ、北国と呼ぶことにそれほど躊躇しなくてもよい程度には北の土地に暮らすようになり、いつの間にか僕自身も特別な思いで夏至を迎えるようになっている。この日を境に冬へのカウントダウンが始まるような感覚は、北国で暮らす多くの人たちが共有するものなのかもしれない。

本当の夏はこれからなのに。

星野道夫が書いていたのは、本当に心からの実感だったのだ。そのことに心底共感できるだけでも、冬が厳しいこの土地に暮らすことを僕は肯定したい気分になる。


ここ10年の夏至の頃を振り返る

今日6月21日は2023年の夏至にあたる。

そこで、最近10年間の夏至の日前後のタウシュベツ川橋梁の写真を並べてみたい。年によって、同じ時期であっても糠平湖の水位が大きく異なり、橋の見え方も違っていることが分かるはずだ。

10年前の2013年は糠平湖の水位上昇が早く、この時期にはタウシュベツ川橋梁全体の8割ほどが水没していた。

2013年6月22日

翌2014年からの2年間は、夏至の時期になっても沈まない橋を見ることができた。

2014年6月21日


2015年6月22日

2016年には橋の6割ほどがこの時期までに水没。同じ時期であっても年によって、糠平湖の水位は10メートル以上違っている。

この年の8月に降った大雨の影響で糠平湖底が様相を変えたことは、先日の#002で触れた。

2016年6月22日

翌2017年は前年とうってかわって湖の水位が低い状況が秋まで続いた。橋の大部分が水没したのは10月半ば頃になってから。

2017年6月21日

2018年はこの夏至の時期に、ちょうど橋が水面に映り込む様子を見ることができた。まとまった雨が降ったこともあり、湖の水位はそのまま上昇を続け、7月上旬には橋がほとんど水没している。

2018年6月22日

2019年は一転して水位が低い年になった。橋が水没したのは9月下旬になってからのこと。

2019年6月21日

翌2020年はさらに記録的に水位が低い年になっていた。タウシュベツ川橋梁はこの年、水面下に沈むことなく冬を迎えた。

2020年6月21日

紅葉の時期を過ぎ、雪が積もる頃になっても橋が沈まなかったのは、僕が知る限りでは初めてだった。新雪が積もる森の中に佇むタウシュベツ川橋梁が水面に映り込む様子を収めることができた。

Youtube『タウシュベツChannel』では当時の様子を限定公開している。

前年の揺り戻しかのように、翌2021年は早い時期にタウシュベツ川橋梁が水没した。この年、橋全体を見ることができたのは6月上旬までの短い期間に限られた。

2021年6月21日

昨年2022年、この時期のタウシュベツ川橋梁はちょうど水面に映り込んでいた。糠平湖は微妙な水位の増減を繰り返しながら水かさを上げ、秋の終わり頃に橋が沈んだ。

2022年6月20日

以下は今朝の撮り下ろし。水位が下がり続ける糠平湖底が3年ぶりに緑色に染まり始めている。今後どのように水位が変化し、タウシュベツ川橋梁がいつ水に映り、そして沈むのか。やはり予想は難しい。

2023年6月21日 ①


2023年6月21日 ②


2023年6月21日 ③


2023年6月21日 ④

今日のタウシュベツ川橋梁を映像でまとめたものはこちら。


On the day of the summer solstice in the northern region

Photographer Michio Hoshino, considered one of the most accomplished nature photographers of his era and specialized in photographing Alaskan wildlife, left a memorable piece on the summer solstice. I read it at a time when I had not yet considered moving to Hokkaido; it was merely a place I longed for.

The summer solstice is upon us. The arc of the sun soars higher and higher, nearly ceasing to set at all. Yet, the solstice represents a turning point in the hearts of those who live here. The real summer is only just beginning, but the daylight hours will start to shorten tomorrow. Somewhere in the distance, the presence of winter can already be felt. Perhaps the people of Alaska are always living while verifying the existence of the sun.

"On a Long Journey," Michio Hoshino<translated by Ryoji Iwasaki>

While it's not quite Alaska, I've settled in a place far enough north that it wouldn't hesitate to be called a northern country. Somehow, I've come to greet the summer solstice with particular sentiment. The feeling that this day marks the countdown to winter may be something shared by many who live in the north.

The real summer is only just beginning.

What Hoshino wrote was truly heartfelt. Just being able to empathize with that makes me want to affirm my decision to live in this harsh winter land.

Today, June 21st, is the summer solstice of 2023. Therefore, I would like to line up photos of the Taushubetsu River Bridge around the summer solstice for the past ten years. The water level of Lake Nukabira varies greatly from year to year, even at the same time, which should indicate that the view of the bridge also changes.


いただいたサポートは、引き続きタウシュベツ川橋梁を記録していくために活用させていただきます。