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自殺。傍観していただけの加害者。今、何を思う。風化し記憶の底に埋没してゆくのだろうか。『十字架』

人々よ。

いじめを苦に自殺したあいつの遺書には、自分の名前が書かれていた。

あいつは僕のことを「親友」と呼んでくれた。

でも僕は、クラスのいじめをただ黙って見ていただけだった。

親友と呼ばれる程、遊んだことも関わったこともないのに、遺書に記された名前。

中学2年で、その十字架を背負い、やがて自らが子を持つ大人になる34歳までの描写が描かれる。

この手の話だと、贖罪に重きが置かれるが、本作は違う。

なんとも暗い気持ちになる。

が、しかし、実際、未成年の自殺は後を絶たないし、そこにいた加害者も傍観していただけの者もいる。

彼らは今何を思っているのだろうか。

風化し記憶の底に埋没してゆくのだろうか。

内容と装丁が合致した良い一冊でした。

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