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rei92x
自殺。傍観していただけの加害者。今、何を思う。風化し記憶の底に埋没してゆくのだろうか。『十字架』
人々よ。
いじめを苦に自殺したあいつの遺書には、自分の名前が書かれていた。
あいつは僕のことを「親友」と呼んでくれた。
でも僕は、クラスのいじめをただ黙って見ていただけだった。
親友と呼ばれる程、遊んだことも関わったこともないのに、遺書に記された名前。
中学2年で、その十字架を背負い、やがて自らが子を持つ大人になる34歳までの描写が描かれる。
この手の話だと、贖罪に重きが置かれるが、本作は違う。
なんとも暗い気持ちになる。
が、しかし、実際、未成年の自殺は後を絶たないし、そこにいた加害者も傍観していただけの者もいる。
彼らは今何を思っているのだろうか。
風化し記憶の底に埋没してゆくのだろうか。
内容と装丁が合致した良い一冊でした。