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戦争における正義、責任、国による文化的差異、教育の脅威、その示唆は実に富む

人々よ。

舞台は巣鴨プリズン。

戦犯達を裁くための拘置所。

現在池袋サンシャインの旧跡だ。

戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた私立探偵。

調査交換条件に、囚人貴島の記憶を取り戻す任務を命じられる。

貴島なる囚人は恐ろしく頭脳明晰だが、戦争中の記憶が失われており...

拘置所内で立て続く服毒殺人事件の果てに...

一冊のミステリとして面白いことは間違いないが、戦争における正義、責任、国による文化的差異、教育の脅威、その示唆は実に富む。

本書の一節に、戦時中の日本における当時の国民性が実に端的に表されている。

女:「誰?誰が私の子供を殺したの!」

亡者達が女の周りに集まり、犯人探しが始まった。

「豚を選んだのはこいつだ」
亡者達が一人の男を指差した。

「俺は選んだだけだ。こいつが豚に紐を結んだんだ」別の男を指差した。

「俺は紐を結んだだけだ。こいつが紐を引っ張ってきた」別の男を指差した。

「俺は引っ張ってきただけだ。こいつが豚を押さえていた」別の男を指差した。

「俺は尻を押さえただけだ。こいつが豚の頭を押さえていた」別の男を指差した。

「俺は頭を押さえただけだ。こいつが豚の喉を切った」別の男を指差した。

「いいや、俺は豚の喉を切らなかった」最後に指さされた若い兵士が首を振った。

「のどを切ったのは、この斧だ」
-そうだ、この斧が豚を殺したんだ!

正に御真影を仰ぐ天皇制が、敗戦直後の日本が、実によく表したものだ。

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