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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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#戦争

戦争における正義、責任、国による文化的差異、教育の脅威、その示唆は実に富む

戦争における正義、責任、国による文化的差異、教育の脅威、その示唆は実に富む

人々よ。

舞台は巣鴨プリズン。

戦犯達を裁くための拘置所。

現在池袋サンシャインの旧跡だ。

戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた私立探偵。

調査交換条件に、囚人貴島の記憶を取り戻す任務を命じられる。

貴島なる囚人は恐ろしく頭脳明晰だが、戦争中の記憶が失われており...

拘置所内で立て続く服毒殺人事件の果てに...

一冊のミステリとして面白いことは間違いないが

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戦前、戦中、戦後と生き抜いたおばあちゃんの回顧録

戦前、戦中、戦後と生き抜いたおばあちゃんの回顧録

人々よ。

戦前、戦中、戦後と生き抜いたおばあちゃんの回顧録。

昭和初期、山形の奥地から女中奉公にでた少女タキは赤い屋根のモダンな家と若く美しい奥様を心から慕う。

昭和初期というと、戦争に塗り潰された暗い時代と単一のイメージで語られがちだが、当時の東京における家庭や日常風景が描かれる。

当時の雑誌の場面が出てくるが、『戦死軍人の妻の涙の手記』とか、事変が始まったばかりの時には『未亡人読本』な

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天皇批判の小説

天皇批判の小説

人々よ。

天皇制を批判した小説は極めて少ない。
昭和2年生まれの著者、城山氏のほぼ実体験に基づくもの。

戦争体験を持つ語り部が段々と少なくなりつつあるが、そういった意味でも、読まれ継がれたい一冊。

天皇制。
・主権としての天皇制、終戦前の絶対的な政治権力としての天皇制。
・国民の象徴としての天皇制。
・天皇ヒロヒト個人を「天皇制」と取り違える考え方。
これを十把一絡げに語ると、出口は見えなく

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八紘一宇

八紘一宇

人々よ。

国家の行為に関して、国家の機関であったがゆえに個人が個人責任をおうという法理は、古今東西に例をみないという弁護団の主張。

検事側が侵略思想とみなす「八紘一宇」は、太平洋戦争前の日米諒解案で「ユニバーサル・ブラザーフッド」(世界同胞主義)と訳され、同じく「皇道」は「治者と被治者が一心になること」、つまりは「皇道とデモクラシーと、二つの思想の間に本質的な差」はない。

清瀬弁護人の論が真

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軍隊の忠誠をつなぎとめるものが兵站

人々よ。

桶狭間の戦いから遡り、参謀本部の歴史をたどり、今次対戦の敗戦を探る一冊。

日本には封建武士軍隊と近代大衆軍隊の間に傭兵軍隊時代の歴史がない。

軍隊の忠誠をつなぎとめるものが兵站だという歴史経験がなかった。

参謀本部が一方では兵站を軽視し、他方では軍事情報のみならず、本来は政略に属する分野の謀略や情報政治にまで手を出すことになった。

戦略の欠如を政略でカバーする傾向が生まれた。

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