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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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#しゃかせん

『生活保護vsワーキングプア 若者に広がる貧困』

『生活保護vsワーキングプア 若者に広がる貧困』

生活保護。

その目的は「生活保障」ではなく、「自立支援」ではなければならない。現行では、あげたらあげっ放しで、死ぬまで放し。

ただ、線引が難しいのが、「自己責任」と断じられてしまう場合と「自助努力の認定範囲」

例えばギャンブル依存症を病気と捉え、その自立支援に税金である生活保護を当て、自立支援をさせるのか。いや、ギャンブル依存症なんてのは個人の嗜好の怠慢で、生活保護なんてまかりならん、となる

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車椅子の殺し屋『抹殺』

車椅子の殺し屋『抹殺』

人々よ。

特別養護老人ホームの施設長と難病にかかり10年後には寝たきりになる車椅子の殺し屋。

東作品のハードボイルド殺し屋ものにしては異色な感があるな。

ただ、榊原シリーズなんかに比べるとやや物足りない。

銀座四丁目交差点の空から軍服を着た老人が落ちて来る。『北京原人の日』

銀座四丁目交差点の空から軍服を着た老人が落ちて来る。『北京原人の日』

人々よ。

ある日、唐突に銀座四丁目交差点の空から軍服を着た老人が落ちて来る。

北京原人の化石をポケットに忍ばせて。

鯨氏らしい史実を巧みに絡ませた歴史ミステリ。

昭和16年の開戦前夜、忽然と姿を消した北京原人の化石、下山事件、太平洋戦争、真珠湾攻撃、そして、第二次世界大戦の真の目的。

どれもこれも、完全に否定しきれない要素が、もしやとも思わせながらも、いやいやまさかとも。

読者を飽きさ

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西の歌舞伎町と呼ばれた町田。『まほろ駅前番外地』

西の歌舞伎町と呼ばれた町田。『まほろ駅前番外地』

人々よ。

前作『まほろ駅前多田便利軒』のスピンオフもの。

六つの短編集。

西東京最大の歓楽街まほろ町。ま、言わずもがな町田ね。

前作では、主人公の多田の目線を通して語られたが、本短編集では前作の脇役達の目線で紡がれる。

中でも、曽根田のばあちゃん編は中々良い。

町田にまだ、原町田駅があって、今の仲見世商店街が戦後の地元の最新のアーケードだった頃が描かれ、ばあちゃんの一代恋愛記が語られる

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『ザ・ロング・アンド・ワインディングロード 東京バンドワゴン』

『ザ・ロング・アンド・ワインディングロード 東京バンドワゴン』

人々よ。

シリーズ11作目。第1作から12年が経つ。

一作目では小学生達だった曽孫達も、今や受験を控える高校生に。

一作一作で着実に齢を重ねてゆく経過が温かい。

本作では、堀田家、初渡英。

安定のハートウォーミング家族物語。

次作まで、また一年待つのか。

『陽気なギャングの日常と襲撃』

『陽気なギャングの日常と襲撃』

人々よ。

前作『陽気なギャングが地球を回す』の続編。

例の四人の銀行強盗がワチャワチャするやつね。

んー...読みやすいのは間違いない。サクッと読めちゃうしね。伊坂ブーム的なストリームも分かる。

が、個人的に彼の作品がどれも箸休め的な位置になってきたな。

重いものを読んだ時に、息抜きに的な。

個性ですね。有難いとは思う。

本作については、前作を読んでなくても、まあ悪くないだろうけど、

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六本木射殺事件『クズリ』

六本木射殺事件『クズリ』

人々よ。

四半世紀以上前に、この世から消え死んだはずの殺し屋クズリが六本木射殺事件を期に蘇る。

チャイニーズマフィアの東北幇、上海幇、怒羅権、日本のヤクザにロシアマフィア、ウクライナにコロンビア。

銃に刀に、酒と女。

宗教と経済、愛と聖書と、死と虚無と。

ハードボイルド要素満載に、柴田氏の現実社会のジャーナリズムも散りばめて。

渋い。嗚呼、渋い。

記紀神話に登場する神は367柱。『なぜ八幡神社が日本で一番多いのか』

記紀神話に登場する神は367柱。『なぜ八幡神社が日本で一番多いのか』

人々よ。

記紀神話に登場する神は367柱。

その他、神仏習合で出てきたり、廃仏毀釈、神仏分離で勧請したりで、新たに生まれたり、中世から近代になると故人が神に昇華する、と。

乃木神社の乃木希典のような軍神だったり。

寺については、学問が絡むので、書物など歴史を紐解くものが残っているが、神社については、歴史書はとても稀有だ。

しかし、八幡様は元々、韓国の神だったのか。

神様分けたり移したり

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『下山事件 暗殺者たちの夏』

『下山事件 暗殺者たちの夏』

人々よ。

前著『下山事件 最後の証言 完全版』はノンフィクションであったが、ノンフィクション故に書ききれなかった背景をフィクションで埋めてゆく。

昭和史最大の謎、下山定則国鉄総裁暗殺事件。

600ページ一気読み。

久しぶりの☆5。
読み応えが半端ではない。

他人なのに俺。俺なのに他人。『俺俺』

他人なのに俺。俺なのに他人。『俺俺』

人々よ。

なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまう俺。

気付くと別の俺に。

上司も俺、母親も俺、俺ではない俺、俺俺。見渡す限り、俺だらけに。

ある日、家に帰ると知らない人間、いや俺がいた。

どう見ても俺にしか見えない。

他人なのに俺だ。いや、俺なんだが他人だ。

そして、母もそれに気づいていない。

右も左も俺だらけ。

やがて、俺が俺同士を削除し合う。

肉体を切り刻み、俺同士がその人肉を

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描かれる動物の姿は。『MAMONO』

描かれる動物の姿は。『MAMONO』

人々よ。

柴田作品では数少ない短編集。

柴田氏のらしさが、それぞれに凝縮されているので、これをとっかかりにすると良いかもしれません。

個人的には、柴田氏の作品は短編集よりも長編の方が断然好みではあるが。

各話を通じて動物が描かれるが...

あの時、ああしていれば、こうしていれば。父と息子。『流星ワゴン』

人々よ。

親父と倅の物語。

後悔、悔恨の情。

あの時、ああしていれば、こうしていれば。

数々の選択肢を経て、人は今に至る。

もし、今の自分の歳と同じ歳の父親に会ったら友達になれるか。

父親像がとてもよく描写されている。

交通事故で死亡した親子が運転する車オデッセイ。

親父が読んだら、どんな感想を持つんだろ。

良い一冊でした。

陰陽五行の式神『鴨川ホルモー』

陰陽五行の式神『鴨川ホルモー』

人々よ。

戦に敗れたその瞬間。

自らの意識とは別に、口から叫ばされる言葉。

力の限り咆哮する「ホルモーーーーッッ!!」
陰陽五行の式神による災いか。

記紀や歴史書に載らぬ、その土地土地の語り部の口伝によってのみ言い伝えられる文化、儀式。

もしや、あるのかもと思わせるそれ。

また、呪術的な謎の言葉。

万城目学節が全開な一冊でした。

家族という単位の家制度が消滅し、人類の繁栄のみを目的とする。『消滅世界』

家族という単位の家制度が消滅し、人類の繁栄のみを目的とする。『消滅世界』

人々よ。

衝撃的過ぎる。狂気の沙汰だ。

「楽園」と称する実験都市。そこでは、夫婦間の性交渉は近親相姦として禁忌とされる。

科学医療技術の進歩に伴い、男性も子供を産めるようになる。

家族という単位の家制度が消滅し、人類の繁栄のみを目的とする。

人口の増減もコントールでき、男も女も人工子宮により人工授精で子供を産む。

生まれた子供には名前も戸籍もなく、キャベツ畑のように工場に並べられ出荷さ

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