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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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#読書

『突撃ビューティフル』

『突撃ビューティフル』

美を追求することに憑かれた女性達の短編集。

幼き頃は、幼稚園や小学生の低学年から。

祖母や母、年の離れた姉や従姉妹が使う口紅に魅せられ、色も然り、口紅のスティックの形状、メイク後の変貌。

そこから、メイク、ファッション、エステ、整形。
そう。美容整形。

顔の一部が気に食わない、この一部が直れば100%になれる。

そう思い込み、修正後しばらくすると、あちらが気になり、こちらが気になり。

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『まるまるの毬』

『まるまるの毬』

人情もの。

お江戸の時は、徳川家斉の頃。

お上の御落胤が理由あって、長屋暮らしの町人、菓子屋の親父に。

秘されたいちもつを腹に抱え、ある一家の出戻り女房になった娘、お武家に嫁ぐことになったが波乱の末出戻りになった孫娘。

一家三人が紡ぐ家族物語。

誰よりも思う気持ちはあるが、口下手で思う苦難葛藤を自分の中だけで抱え込む故、伝わらず。

誰よりも愛情はあるのに、すれ違う。と思いきや、実は通じ

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『もし、日本が中国に勝っていたら』

『もし、日本が中国に勝っていたら』

歴史にもしもはないと言われるが、戦後数十年を経た現在、改めてもしもあの時、こうしていたら、戦争は避けられたのではないか、被害をもっと抑えることが出来たのではないかと次代に向けて鑑みることは重要ですね。

本作を日本人がこのタイトルで書いたなら、全く違う結論になっていただろうか。

本書終盤の、日本のような中国、中国のような日本という国があったなら、あの時欧米列強は座視しただろうかという一節、実に感

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『疾風ガール』

『疾風ガール』

10代最後のバンドの物語。

アマの中では抜きん出たバンドのボーカルが、ある日突然の自殺。

真相を求め、自殺したボーカルの背景を知る旅へ。

なぜなら、そのボーカルは偽名でメンバーも素性は一切しらなかったからだ。

誉田氏の作品は警察ものしか読んだことなかったけど、こういう青春ものも良いね。『武士道シリーズ』は未読だが。

自殺に追いやったのが誰だとかではなく、残された者が、それに折合う理由を求

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『立ち向かう者たち』

『立ち向かう者たち』

短篇集。

全編通して、幼少期の体験が良くも悪くも多分にその後の人生に影響を及ぼすことが表されている。

その振れ具合が極端ではあるけども。

男の愚かさとしょうもなさを素敵に綴った一冊でした。

とは言え、一篇それぞれの凝縮具合は非常に濃厚だ。

読んでて、耳が痛くなるというか。痛切。

ジュブナイル的なラストの一話が、東氏らしくなくて新鮮だったな。

『あの頃日本は強かった 日露戦争100年』

『あの頃日本は強かった 日露戦争100年』

いつの世も、先を見通すことの出来る将と、精神論を振りかざして多大な犠牲を生む将がいるな。

思えば『踊る大捜査線』の名台詞「事件は会議室で起きてんじゃない、現場で起こってんだ!」はどの時代にも当てはまる。

児玉源太郎、大山巌、開戦前から終戦後の処理も考える者がいれば乃木希典の様な者もいるわけだ。

本書は随分と中国、ロシアのこき下ろし方が随分な印象が否めないが...

軍事郵便の章は中々に興味深

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『史上最強の大臣』

『史上最強の大臣』

前作『史上最強の内閣』の続編。

前作は安倍政権、麻生政権のパロディだったが、本作は菅、鳩山、野田と。

もちろん、政治エンタメの一作ではあるが、小説の形式を借りた教育論的が展開される。

作中の「子供を通して未来を託す」「次の誰かのために」という一節には胸を打たれる。

ゆとり教育だとか、戦後教育、受験戦争、道徳教育、食育、その他諸々。

世代によって実に価値観は様々だ。

ご存命の戦中派もいれ

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『東京難民 上』

『東京難民 上』

東京郊外にある私立大学生の主人公。

ある日、突如、大学から除籍されたことを知らされる。親が学費を支払わず滞納していたと。

両親に真意を聞こうとするが、連絡が取れず行方不明。九州の実家に帰省してみるも、家の中はもぬけの殻。

手持ちの金もなく、自身の家賃も滞納。また、ゼロゼロ物件の為、賃貸借契約ではないので、追い出される羽目に。

そこから、ネカフェ難民生活へ。

バイトを転々とするが続かず、よ

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『東京難民 下』

『東京難民 下』

上巻のホストから転落し、客の売掛が焦げ付き、チャイニーズマフィアに売られ、タコ部屋へ。

主人公に全く感情移入は出来ないが、現代の貧困層の若者を克明に描かれているのだろうか。

なんだか、あまりにも言い訳がましく、その場しのぎの刹那的で楽観的で、最後は社会のせいってのがどうにも...

社会制度の仕組みにも難ありだとは思うが。

ただ、現実社会にも20代でホームレスってのが結構いるんだもんな。

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『ドS刑事 三つ子の魂百まで殺人事件』

『ドS刑事 三つ子の魂百まで殺人事件』

シリーズ三作目。

死体を見たいから警察官になったに決まってるでしょ!猟奇的なドS刑事マヤの性格を形成した中学生時代が詳らかにされる。

スイーツ食べ過ぎ殺人事件、電気椅子殺人事件、目蓋切除ドライアイ殺人事件。

シリーズ一作目からすると、グロさが大分色濃くなってきた印象だな。

各シリーズ、どれも読みやすいのだが、どうもいまいちインパクトに欠けるかな。

いや、面白いことは面白いんだが、何だろう

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『ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件』

『ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件』

シリーズ二作目。

今回は浜松署の代官山が、ドS刑事マヤの管轄、警視庁へ出向。

新たな新キャラ、ドMのキャリア刑事浜田が登場。

女の嫉妬による殺人、波及伝播する殺意。

構成的には、前作と同じ。

シリーズ化すると、ダレてくるからな。

次作はどうか。

『ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件』

『ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件』

『死亡フラグが立ちました』の著者の一作。

中盤辺りまで、なんの変哲もないあまりにもオーソドックスなミステリだと飽き始めていたが、ミッシングリンクものだと気付いてからは中々面白い。

負の連鎖。負の感情のカオス理論。

バタフライエフェクト、つまり風が吹けば桶屋が儲かる理論で殺人事件が繰り広げられる。

ドSでツンデレな猟奇マニアの超美人デカという設定でなければ、かなり暗いハードなミステリだったん

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人は何故、小説を読むのか

人は何故、小説を読むのか

人々よ。

人は何故、小説を読むのか。

一見、哲学的にも見える素朴な疑問。

これを追い求めて行く物語。

結論としては、孤独に耐える練習だそうです、つまり人付き合いのためだと。

これだけだと、疑問符が浮くかもしれないが、ご興味ある方は本編をご一読ください。

孤独に耐えるってのは、言い得て妙だな。

小説。
音もなければ映像も無い、あるのはただ文字だけ。

読み始めると、物語の中に埋没して行

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滝沢馬琴のオマージュ作品

滝沢馬琴のオマージュ作品

人々よ。

滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』のオマージュ。

作中作で『南総里見八犬伝』と『贋作・里見八犬伝』が交わる。

本家の伏姫とは大分、性格が異なるが、物語が進むにつれ、贋作の味が滲み出る。

実に多角的な一冊でした。

八犬伝ものの作品は割とあるけど、現代に通じるものを非常によく感じさせられる作品。

現代の若人はこういう心持ちで生きているのやもしれん。