マガジンのカバー画像

書籍紹介

310
蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
運営しているクリエイター

#人情

『まるまるの毬』

『まるまるの毬』

人情もの。

お江戸の時は、徳川家斉の頃。

お上の御落胤が理由あって、長屋暮らしの町人、菓子屋の親父に。

秘されたいちもつを腹に抱え、ある一家の出戻り女房になった娘、お武家に嫁ぐことになったが波乱の末出戻りになった孫娘。

一家三人が紡ぐ家族物語。

誰よりも思う気持ちはあるが、口下手で思う苦難葛藤を自分の中だけで抱え込む故、伝わらず。

誰よりも愛情はあるのに、すれ違う。と思いきや、実は通じ

もっとみる
一寸の虫にも五分の魂。悪人にも五分の優しさ

一寸の虫にも五分の魂。悪人にも五分の優しさ

人々よ。

お江戸は日本橋。

通称、善人長屋。

その実、掏摸に騙りに美人局。

長屋唯一の善人加助以外は、全員裏稼業を持つ悪人長屋。

一寸の虫にも五分の魂。悪人にも五分の優しさ。

良いねー、義理と人情。

家族、義兄弟、縺れた家族の行方を丹念に描く人情時代小説。

コンプライアンスだの何だの、形ばかりの堅苦しい昨今に、人の温かさを感じる一冊でした。

西條氏の人情ものは実に気持ち良い。

良き上司に巡り合えた幸せ

良き上司に巡り合えた幸せ

人々よ。

東北は湯長谷藩。

お上より五日以内に江戸へ参勤せよとの命がくだる。叛けばお家取り潰しは必定。

しかしながら、小藩である湯長谷藩には財政難で費用も、大名行列を組む人もいない。

藩主、内藤政醇は知恵物の家老と共にいざ江戸へ。

なんとも胸を空く一冊でした。

人情ものには目頭が熱くなる。

地方と中央という構図も、現在に通づるものがあるか。

こういう藩主に仕えることができた家臣団や

もっとみる
もって瞑すべし

もって瞑すべし

人々よ。

シリーズ14作目。

15年前のシリーズ開始一作目の登場人物相関図が11人から本作では46人に。

これだけ登場人物が増えると、とっ散らかってキャラがぼやけそうなものだが、そこは小路氏の筆力なんでしょうな。

すんなりと頭に入ってくるし、それぞれの個性が存分に表れている。

家族ものとして、非常に心温まる作品。
登場人物も皆、成長し、人間らしい営みがまま見える。生きていれば、当然死にゆ

もっとみる
百軒長屋 貧乏神の絵師が福の神に

百軒長屋 貧乏神の絵師が福の神に

人々よ。

所は天下の台所、大坂は福島羅漢まえ。

四軒長屋、八軒長屋どころか計画なしのやたらめったら増築し過ぎた百軒長屋。

「日暮らし長屋」と呼ばれるボロ家に棲まう絵師は貧乏神と呼ばれ、大名家のお抱え絵師であったが、今は筆作りの内職で糊口を凌ぐ日々を送る。

そんな長屋に一枚の絵がある。

付喪神となった疫病神が絵の封印から飛び出し、不思議な日々が巻き起こる。

長屋の長男たちのすったもんだの

もっとみる
花のお江戸は日本橋 苦悩と悲哀を乗り越えて

花のお江戸は日本橋 苦悩と悲哀を乗り越えて

人々よ。

お江戸日本橋を舞台に、葬具屋、花屋、奉行所同心、夜逃げ呉服屋などそこに生きる市井の民の悲喜交々の人情ご描かれる6編の短編集。

歴史小説、時代小説に魅せられるのは、そこに描かれる喜びとの出会い方や、苦悩や悲哀に遭遇した時にそれを乗り越えるきっかけや、周囲の人間が温かく優しい人情が見えるからだと思う。

時に死や、お家取り潰しもあるが、そこに一抹の救いが必ず描かれる。