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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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2022年12月の記事一覧

『生活保護vsワーキングプア 若者に広がる貧困』

『生活保護vsワーキングプア 若者に広がる貧困』

生活保護。

その目的は「生活保障」ではなく、「自立支援」ではなければならない。現行では、あげたらあげっ放しで、死ぬまで放し。

ただ、線引が難しいのが、「自己責任」と断じられてしまう場合と「自助努力の認定範囲」

例えばギャンブル依存症を病気と捉え、その自立支援に税金である生活保護を当て、自立支援をさせるのか。いや、ギャンブル依存症なんてのは個人の嗜好の怠慢で、生活保護なんてまかりならん、となる

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『光』

『光』

『スタンドバイミー』的な。

自転車で行ける範囲が世界の全てだった子供の頃。

近所の兄ちゃん姉ちゃん達とも遊んでいたあの頃。

まだ、公園で元気に遊んでいた頃。

近所に名物の口喧しい爺さん婆さんがいたあの頃。

郷愁を感じる一冊でした。懐かしさを覚える。

今日日は安全の面が過剰な程に考慮され公園の遊具は撤去され、外で遊ばず、家に籠るのが多いようだが、そんな子達が大人になった時、この本のような

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『神のふたつの貌』

『神のふたつの貌』

蛙の四肢を石で潰す。

ひくひくともがく姿を見下ろす12歳の少年。

彼は痛みを感じることのできない障害、無痛症であった。そこで、蛙は痛みを感じるのであろうかと疑問を持つ。

痛みを感じないのであれば、自分は人間ではなく、動物や昆虫と変わらないのではないかと。

蛙を潰し壊し続ける。
無痛症は肉体的な痛覚が欠落しているだけではなく、精神的な痛みも欠落しているのか。

少年の父や祖父もプロテスタント

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『ドS刑事 三つ子の魂百まで殺人事件』

『ドS刑事 三つ子の魂百まで殺人事件』

シリーズ三作目。

死体を見たいから警察官になったに決まってるでしょ!猟奇的なドS刑事マヤの性格を形成した中学生時代が詳らかにされる。

スイーツ食べ過ぎ殺人事件、電気椅子殺人事件、目蓋切除ドライアイ殺人事件。

シリーズ一作目からすると、グロさが大分色濃くなってきた印象だな。

各シリーズ、どれも読みやすいのだが、どうもいまいちインパクトに欠けるかな。

いや、面白いことは面白いんだが、何だろう

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『ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件』

『ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件』

シリーズ二作目。

今回は浜松署の代官山が、ドS刑事マヤの管轄、警視庁へ出向。

新たな新キャラ、ドMのキャリア刑事浜田が登場。

女の嫉妬による殺人、波及伝播する殺意。

構成的には、前作と同じ。

シリーズ化すると、ダレてくるからな。

次作はどうか。

『ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件』

『ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる殺人事件』

『死亡フラグが立ちました』の著者の一作。

中盤辺りまで、なんの変哲もないあまりにもオーソドックスなミステリだと飽き始めていたが、ミッシングリンクものだと気付いてからは中々面白い。

負の連鎖。負の感情のカオス理論。

バタフライエフェクト、つまり風が吹けば桶屋が儲かる理論で殺人事件が繰り広げられる。

ドSでツンデレな猟奇マニアの超美人デカという設定でなければ、かなり暗いハードなミステリだったん

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車椅子の殺し屋『抹殺』

車椅子の殺し屋『抹殺』

人々よ。

特別養護老人ホームの施設長と難病にかかり10年後には寝たきりになる車椅子の殺し屋。

東作品のハードボイルド殺し屋ものにしては異色な感があるな。

ただ、榊原シリーズなんかに比べるとやや物足りない。

銀座四丁目交差点の空から軍服を着た老人が落ちて来る。『北京原人の日』

銀座四丁目交差点の空から軍服を着た老人が落ちて来る。『北京原人の日』

人々よ。

ある日、唐突に銀座四丁目交差点の空から軍服を着た老人が落ちて来る。

北京原人の化石をポケットに忍ばせて。

鯨氏らしい史実を巧みに絡ませた歴史ミステリ。

昭和16年の開戦前夜、忽然と姿を消した北京原人の化石、下山事件、太平洋戦争、真珠湾攻撃、そして、第二次世界大戦の真の目的。

どれもこれも、完全に否定しきれない要素が、もしやとも思わせながらも、いやいやまさかとも。

読者を飽きさ

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西の歌舞伎町と呼ばれた町田。『まほろ駅前番外地』

西の歌舞伎町と呼ばれた町田。『まほろ駅前番外地』

人々よ。

前作『まほろ駅前多田便利軒』のスピンオフもの。

六つの短編集。

西東京最大の歓楽街まほろ町。ま、言わずもがな町田ね。

前作では、主人公の多田の目線を通して語られたが、本短編集では前作の脇役達の目線で紡がれる。

中でも、曽根田のばあちゃん編は中々良い。

町田にまだ、原町田駅があって、今の仲見世商店街が戦後の地元の最新のアーケードだった頃が描かれ、ばあちゃんの一代恋愛記が語られる

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『ザ・ロング・アンド・ワインディングロード 東京バンドワゴン』

『ザ・ロング・アンド・ワインディングロード 東京バンドワゴン』

人々よ。

シリーズ11作目。第1作から12年が経つ。

一作目では小学生達だった曽孫達も、今や受験を控える高校生に。

一作一作で着実に齢を重ねてゆく経過が温かい。

本作では、堀田家、初渡英。

安定のハートウォーミング家族物語。

次作まで、また一年待つのか。

『陽気なギャングの日常と襲撃』

『陽気なギャングの日常と襲撃』

人々よ。

前作『陽気なギャングが地球を回す』の続編。

例の四人の銀行強盗がワチャワチャするやつね。

んー...読みやすいのは間違いない。サクッと読めちゃうしね。伊坂ブーム的なストリームも分かる。

が、個人的に彼の作品がどれも箸休め的な位置になってきたな。

重いものを読んだ時に、息抜きに的な。

個性ですね。有難いとは思う。

本作については、前作を読んでなくても、まあ悪くないだろうけど、

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六本木射殺事件『クズリ』

六本木射殺事件『クズリ』

人々よ。

四半世紀以上前に、この世から消え死んだはずの殺し屋クズリが六本木射殺事件を期に蘇る。

チャイニーズマフィアの東北幇、上海幇、怒羅権、日本のヤクザにロシアマフィア、ウクライナにコロンビア。

銃に刀に、酒と女。

宗教と経済、愛と聖書と、死と虚無と。

ハードボイルド要素満載に、柴田氏の現実社会のジャーナリズムも散りばめて。

渋い。嗚呼、渋い。

記紀神話に登場する神は367柱。『なぜ八幡神社が日本で一番多いのか』

記紀神話に登場する神は367柱。『なぜ八幡神社が日本で一番多いのか』

人々よ。

記紀神話に登場する神は367柱。

その他、神仏習合で出てきたり、廃仏毀釈、神仏分離で勧請したりで、新たに生まれたり、中世から近代になると故人が神に昇華する、と。

乃木神社の乃木希典のような軍神だったり。

寺については、学問が絡むので、書物など歴史を紐解くものが残っているが、神社については、歴史書はとても稀有だ。

しかし、八幡様は元々、韓国の神だったのか。

神様分けたり移したり

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『下山事件 暗殺者たちの夏』

『下山事件 暗殺者たちの夏』

人々よ。

前著『下山事件 最後の証言 完全版』はノンフィクションであったが、ノンフィクション故に書ききれなかった背景をフィクションで埋めてゆく。

昭和史最大の謎、下山定則国鉄総裁暗殺事件。

600ページ一気読み。

久しぶりの☆5。
読み応えが半端ではない。