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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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2022年11月の記事一覧

家族という単位の家制度が消滅し、人類の繁栄のみを目的とする。『消滅世界』

家族という単位の家制度が消滅し、人類の繁栄のみを目的とする。『消滅世界』

人々よ。

衝撃的過ぎる。狂気の沙汰だ。

「楽園」と称する実験都市。そこでは、夫婦間の性交渉は近親相姦として禁忌とされる。

科学医療技術の進歩に伴い、男性も子供を産めるようになる。

家族という単位の家制度が消滅し、人類の繁栄のみを目的とする。

人口の増減もコントールでき、男も女も人工子宮により人工授精で子供を産む。

生まれた子供には名前も戸籍もなく、キャベツ畑のように工場に並べられ出荷さ

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遺言代行業を通し描かれる便利屋的な家族。『ザ藤川家族カンパニー』

遺言代行業を通し描かれる便利屋的な家族。『ザ藤川家族カンパニー』

人々よ。

男五人女一人、中学生から三十路までの六人兄弟が暮らす藤川家。

異母兄弟に新たな家族が一人加わる。

長兄が営む遺言代行業を通し描かれる便利屋的な家族もの。

この手の家族ものは小路幸也氏の方が遥かに上手いな。

面白くもなくつまらなくもなく、可もなく不可もなくといったところか。

平成の鼠小僧的な怪盗。『怪盗探偵山猫』

平成の鼠小僧的な怪盗。『怪盗探偵山猫』

人々よ。

山猫と呼ばれる窃盗犯。

いわく付きの企業からしか金は盗まない、平成の鼠小僧的な怪盗だ。

しかし、探偵的な要素はないな。

荒削りではあるが、もう少し緩急がつけばより良い一冊になるだろう。

ダークヒーローものにしては平凡な感は否めなかったな。

科学技術で人工的にゲリラ豪雨を降らせる中国人『さらば雑司ヶ谷』

科学技術で人工的にゲリラ豪雨を降らせる中国人『さらば雑司ヶ谷』

人々よ。

初めて呼んだ著者だが、中々面白い一冊でした。

石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』シリーズと伊坂幸太郎の『グラスホッパー』シリーズを足して二で割ったような感じかな。

何処と無く『TOKYOトライブ』を彷彿させる。

舞台は東京、雑司ヶ谷。

町を支配する巨大宗教団体の跡目の主人公、男色の中国マフィア、手で耳を引きちぎられるチンピラ、科学技術で人工的にゲリラ豪雨を降らせる中国人。

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言論の自由万歳。『雑司ヶ谷R.I.P』

言論の自由万歳。『雑司ヶ谷R.I.P』

人々よ。

シリーズ一作目を遥かに凌ぐパクりっぷり。

言論の自由万歳って感じだな。

前作同様、巻末に影響を受けたリストを掲げているが、オマージュです、いやパクってますとちゃんと明記されている。

しかし、作中に出てくる宗教教派のモデルは天理教と創価学会か。

いくら、フィクションとはいえ、作者の身は大丈夫なのだろうか。

このシリーズは侮れないな。

作者後書が実に気持ち良い。

小説家だけで

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自殺。傍観していただけの加害者。今、何を思う。風化し記憶の底に埋没してゆくのだろうか。『十字架』

自殺。傍観していただけの加害者。今、何を思う。風化し記憶の底に埋没してゆくのだろうか。『十字架』

人々よ。

いじめを苦に自殺したあいつの遺書には、自分の名前が書かれていた。

あいつは僕のことを「親友」と呼んでくれた。

でも僕は、クラスのいじめをただ黙って見ていただけだった。

親友と呼ばれる程、遊んだことも関わったこともないのに、遺書に記された名前。

中学2年で、その十字架を背負い、やがて自らが子を持つ大人になる34歳までの描写が描かれる。

この手の話だと、贖罪に重きが置かれるが、本

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「文明開化」とは、商いを捨て、帰農して開拓生産に志すこと。『幕末維新の民衆世界』

「文明開化」とは、商いを捨て、帰農して開拓生産に志すこと。『幕末維新の民衆世界』

人々よ。

幕末動乱期と言えば、新撰組やら白虎隊やら、坂本龍馬、西郷隆盛などなど維新志士がとりだたされるが、そんな時、市井の人々、庶民つまりパンピー達は何を思って何をしていたのか。

当時の庶民達が書き記した庶民日記を元に、紐解く一冊。

黒船が来航した時、庶民達は...政府役人達が大わらわをよそに、街は何やら騒がしいがあれやこれやと御触書が出て商いが出来ず、まいったねこりゃなんて冷めた目でいたよ

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ブラックバイト。『西一番街ブラックバイト』

ブラックバイト。『西一番街ブラックバイト』

人々よ。

シリーズ12作目。

今回のテーマはブラックバイト。

前作の非正規雇用者に引き続き、若者の労働雇用環境について。

ブラック企業も今じゃ当たり前のものに。

政府は労働環境の働き方改善なんて言ってはいるが...
ますます企業の利益を優先され、雇用環境の劣悪さは酷さを増すばかりだ。

ここのところ、労働環境ネタが多いな。

シリーズ初期のがわりと好みではあるが、好きなシリーズに変わりは

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投資事業組合、MSBC、タックスヘイブンの"三種の神器"を駆使して荒稼ぎ。『経済ヤクザ』

投資事業組合、MSBC、タックスヘイブンの"三種の神器"を駆使して荒稼ぎ。『経済ヤクザ』

人々よ。

戦後焼野原の闇市時代から、高度経済成長期、バブル景気、バブル崩壊、ITバブルの隆盛と。

バブル期のあたりの切った張ったの80年代90年代辺りから現在へ、暴対法、暴排法と、闇の住人達はより地下へ潜ることに。

が、しかし、銃撃戦でのドンパチは過去の場面になり、今では合法ビジネスでのM&Aで数百億、数千億の金が転ぶ。

誰が極道で堅気だか、見た目には分かりづらくなっている。

M&Aだの

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日本人の精神的体系、価値観。恩、報、忠、孝、義、恥、徳。『菊と刀』

日本人の精神的体系、価値観。恩、報、忠、孝、義、恥、徳。『菊と刀』

人々よ。

日本文化を再考する上でこの本を読むように勧められたのが、10年以上前の学生時分に当時の教授から。

こんなに月日が経ってしまいました。

学問的価値が高い稀有な良書。

一度も日本の地を踏んだことのないアメリカ文化人類学者による、日本人の行動と考え方の原理とを総合的に、また全構造的に記した一冊。

驚愕です。

恩、報、忠、孝、義、恥、徳。

日本人の精神的体系、価値観は上記で表される

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廃墟寸前の外観、客が廊下で小便。『ロックンロール・ストリップ』

廃墟寸前の外観、客が廊下で小便。『ロックンロール・ストリップ』

人々よ。

木下半太氏の半自伝的小説。

大阪のとある寂れた街の場末のストリップ劇場で、映画監督を目指す売れない劇団「チームKGB」が前座をすることに。

廃墟寸前の外観、客が廊下で小便をするためアンモニア臭が立ち込め、ガラガラの客、年齢不詳の踊り子...

この状況で何をすれば”ウケる”のか?

夢追人の物語。

読了後の爽やかさは間違いない。

テンポよし。

ここのところの木下氏はちょいとシ

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鍼灸って、仁術やヨガに近いのかなと感じた。カウンセラーやメンターに近い存在も兼任するようだ。『鍼と剣』

鍼灸って、仁術やヨガに近いのかなと感じた。カウンセラーやメンターに近い存在も兼任するようだ。『鍼と剣』

人々よ。

さる鍼灸師のエッセイ。

全く存じ上げなかったが、その界では一級の人物だそうで、系譜は第59代宇多天皇に発するとか。

前半は鍋島氏の反省について。

後半からは鍼の効用。

日系移民や戦中戦後にこうした日本人がいたと知る上で前半は面白い。

個人的には、鍼の効用についてもう少し掘って欲しい気もするが、これも知らない分野なので実に興味深い内容でした。

西洋医学との比較ではなく、東洋医

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『義賊伝説』現代のジュリアン・アサンジ辺りはそうなるか?

『義賊伝説』現代のジュリアン・アサンジ辺りはそうなるか?

人々よ。

義賊と言うと想起するのは、鼠小僧だろうか。
本書は、そんな触りから、ロビンフッドを引き合いに出し、ハンガリーの実在した義賊ロージャ・ジャーンドルについての一冊。

義賊。富める者から奪い、貧しき者へ与える。

このようなイメージが強いが、この考え方は18世紀以降の近代的な価値観ようだ。

それ以前の義賊は「権力者の悪を正す」ということがイデオロギーであったとのこと。

日本の初期の任侠

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『ハードボイルド・エッグ』浮気調査二割の迷探偵

『ハードボイルド・エッグ』浮気調査二割の迷探偵

人々よ。

固茹で卵。

フィリップ・マーロウに憧れ、ハードボイルド探偵を気取るも、ウィスキーストレート数杯で胃に穴が開き、ソーダ割にして、あてはおでん、請負う仕事は銃弾飛び交う修羅場とは程遠い、ペット探し八割、浮気調査二割の迷探偵。

助手は、はち切れんばかりの盛り上がった乳房に、山脈に似つかわしくないくびれ切ったウエストのダイナマイトバディ娘、の他人の写真で助手募集に応募してきた満州から引き上

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