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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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2022年10月の記事一覧

ブラック企業 洗脳研修 過労死

人々よ。

音楽専門学校を卒業後、プロになれるわけでもなく、フリーター生活を過ごし、気付けばフラフラと五年の月日が流れる。

そんなある日、ハンバーガーチェーンの正社員になることに。

悲劇の始まりである。

前半は、採用の出会いから、詰め込みマニュアルの洗脳研修、そして店舗実地。

職場での出会い、正社員としての安定した生活への期待と展望。

後半に差し掛かる中盤、店舗での主人公を含めた正社員の

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ヤングソルジャー 国鉄総裁

ヤングソルジャー 国鉄総裁

人々よ。

三井物産に35年間在職し、華々しい業績を上げた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になったヤングソルジャーこと石田禮助の生涯。

明治期から昭和初期この時代って、こういう一線を画す大物が多いですね。

調律師 静謐

調律師 静謐

人々よ。

主人公は高校生の時に偶然、一人の調律師に出会う。

体育館に佇むピアノの傍に。

北海道の中でも、かなりの山村で生まれ育った青年が調律師という稀有な職業を通じての成長過程が描かれる。

後書きにも書かれているが、本書の中に主人公の苗字は出てくれど名は出てこない。

また、その容姿や特徴の描写もない。

起きる事象に対して、彼が語る台詞のみが彼の姿形を描く。

正に静謐な感じの一冊でした

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GHQにより封殺された日本の航空史

GHQにより封殺された日本の航空史

人々よ。

太平洋戦争が勃発する数年前。

1939年、世界一周飛行を果たすニッポン号を物語る一冊。

戦後、GHQにより封殺された日本の航空史を解き明かすヒューマンストーリーだが...

史実に基づく素晴らしいテーマなのに、恋愛色を入れ込み過ぎたため、全体像がかなり陳腐化してしまって非常に残念。

もっと、ジャーナリズムに軸を寄せれば、個人的には好ましい作品でした。

ただ、それがこの著者の良い

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教員ではなく教師。教師としての覚悟が凄まじい。

教員ではなく教師。教師としての覚悟が凄まじい。

人々よ。

時は明治。

弱視のアメリカ留学帰りの去場安の元に伊藤博文から書簡が届く。

聾盲唖の三重苦の少女が青森県弘前の名家にいるという。

名家故に、その子を蔵に閉じ込める私宅監置が行われる。

見えず、聞こえず、話せず、その姿はまるで、けもののようだと。

そう、本書はヘレンケラーとアン・サリバンの日本版。

ヘレンケラーの奇跡の人は未読だが、目頭が熱くなってしかたがない。

聾唖盲の人間

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戦地における倫理観

戦地における倫理観

人々よ。

アフリカの東端。

アフリカの角と呼ばれる地域、ソマリア。

その国境付近で活動する陸上自衛隊第1空挺団。

そこに命を狙われる氏族の女が駆け込んできた時、自衛官達の命を賭けた戦闘が始まる。

一人死に、二人殺される、三人屠られ、自衛隊は生きて祖国に帰れるのか。

テロ対策特別措置法が成立し、日米防衛協力のための指針が再改定し、集団的自衛権を前提とする安保関連法案が強行採決される。

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日の丸 君が代

日の丸 君が代

人々よ。

日の丸が国旗として使われてた歴史は意外と古いんだな。戦国の世に存在していたのか。

国歌の歴史は近代に入ってから。

天皇礼式曲がその起こりで、天覧調練に使われ、万葉集の歌詞に非日本人が作曲したと。

黒船来航、明治維新、一次大戦、満州事変、二次大戦。これらの節目が実に密接に関わっているな。

日本は近代国家としては高々数百年だが、建国からの歴史は長い。

文化を国旗国歌法を法制化する

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新宿歌舞伎町交番

新宿歌舞伎町交番

人々よ。

500メートル四方の欲望渦巻く歌舞伎町。

ビール1本10万円のボッタクリバーのカモられる客、援交女子中高生、シャブの売人、中国マフィア...
そんな素敵な街の交番に詰めるおまわりさんのルポタージュ。

とはいえ、これが書かれたのが2003年。

歌舞伎町ものを読むと時代時代で変わるよなー。

勧善懲悪で非常に分かりやすい、水戸黄門な一冊

人々よ。

大森美香脚本「里見八犬伝」を原案に、滝沢馬琴『南総里見八犬伝』を参考に書き下ろされた一冊。

世は戦国。

玉梓に呪われた里見家は窮地に陥り、伏姫は自害する。

だがその胸元からは八つの水晶玉が飛び去った。

八つの玉を求め、八人の犬士を求める旅が始まる。

そう。正にドラゴンボールな一冊。

頑張れ!坊さん!!掴め水晶玉!

八人目が最後数頁で登場。

やっぱりね的な。

勧善懲悪で

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タックスヘイブン、租税回避地

タックスヘイブン、租税回避地

人々よ。

日本、韓国、北朝鮮、シンガポール、マレーシア、タイ、カンボジア。

東南アジアを舞台に数千億円が飛び交う国際金融小説。

マネーロンダリング、ODA、原発輸出、仕手株集団、政治家、殺し屋と。

タックスヘイブン、つまり租税回避地。

法人税、所得税、資産税がないか、実効税率が著しく低い国や地域。

税の楽園とされたシンガポールに世界の富裕層が殺到する。

経済小説は数多いが、かなりの読

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なんとか刑務所に服役成功!

なんとか刑務所に服役成功!

人々よ。

『探偵はバーにいる』で一躍有名になった著者。
ハードボイルド作家は考えた。

フリーライターとして、一度は刑務所に入所してみたいものだ、と。

かくして、小説家の彼が珍しいルポタージュ。

いかにして、留置所ではなく刑務所に服役するか。

殺人、強盗、放火...そんなことをしては服役期間が長過ぎて体験記を書くことができない。

そこで、そこそこ数泊で出所できる方法を考えた。

交通違反

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猟奇シーンの描写がこんなにもエグかっただろうか。

猟奇シーンの描写がこんなにもエグかっただろうか。

人々よ。

姫川シリーズ第一作。

誉田作品は久し振りに読んだけど、猟奇シーンの描写がこんなにもエグかっただろうか。

『歌舞伎町セブン』なんかの時はもっとハードボイルド色が強かったか印象だったが。

何にせよ、刑事物としては良いスピード感でした。

歌舞伎町路地裏の診療所

歌舞伎町路地裏の診療所

人々よ。

歌舞伎町路地裏の診療所。

凶弾を喰らい担ぎ込まれたチャイニーズマフィア。

輸血し中国マフィアの義兄弟になる医師。

中国マフィアに弾丸を放つ四課マル暴刑事。

マル暴刑事に親父を殺された元極道。

元極道に仇を託された堅気の医師。

小学生の息子を中国マフィアに託す医師。

歌舞伎町から最後の数ページ。

舞台はグアムへ。

全くの堅気の医師が手にした武器はSIGザウァー9ミリオー

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組織はしがみつくものでも、よじ登るものでもない。それぞれが地に足をつけて、踏ん張って、支えるもの

組織はしがみつくものでも、よじ登るものでもない。それぞれが地に足をつけて、踏ん張って、支えるもの

人々よ。

姫川玲子シリーズ四作目。

ついに、姫川、極道に恋に落ちたか。

四作目は構成が、前作より視点切り替えが頻繁になったな。

疾走感はかなり増したのは間違いないが、ラスト近くの感動的な場面で、明かされた事実がホモの横恋慕、ってのは...

いや、同性愛を悪く言うつもりはないんだけどさ。

とは言え、本文中の「…組織はしがみつくものでも、よじ登るものでもない。それぞれが地に足をつけて、踏ん

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