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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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2022年9月の記事一覧

お茶の間という言葉が死語になった現代。

お茶の間という言葉が死語になった現代。

人々よ。

シリーズ第12段。

東京バンドワゴンシリーズ開始から14年。

早いものです。

フリークとしては、スピンオフものは嬉しい限り。

シリーズ開始から大家族がますます増え、また、登場人物がちゃんと歳をとってゆく。

今回は今まで語られてこなかった、亡き妻のお話。
お茶の間という言葉が死語になった現代。

まだ、テレビが華やかかりし時代のお話。

孤児、実母が実父を刺す。捨てられる。

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継父の子供虐待、シングルマザーの覚醒剤、信仰宗教、億単位の集団詐欺

継父の子供虐待、シングルマザーの覚醒剤、信仰宗教、億単位の集団詐欺

人々よ。

シリーズ13作目。
もう20年になりますね。

今回は、継父の子供虐待、シングルマザーの覚醒剤、信仰宗教、億単位の集団詐欺。

常にリアルタイムの社会ネタを扱ってきたIWGPシリーズ。

数の力か。大統領選挙もPPAPもフォロワー数、いいね数、数が金になる。

日本も先進国から外れれば、ゆっくりした良い時代になるのでしょうか。

『PRIDE』で一旦シリーズが終わってから、新シリーズで

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マネーロンダリング 脱税指南 真似しないように

マネーロンダリング 脱税指南 真似しないように

人々よ。

香港在住もぐりのコンサルタント工藤をある日、美しい女、麗子が訪ねる。

5億の金を日本から海外に送金し、損金として処理してほしい。彼女の要求は、脱税の指南だった。

四ヶ月後、麗子は消えた。5億ではなくて50億の金とともに。

読み終えたくない一冊にはそうそう出会えない。

著者の『タックスヘイブン』の時もそうだったが、税制、金融に関する豊富な知識に裏打ちされた精緻な記述が素晴らしい。

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経済機構のからくり

経済機構のからくり

人々よ。

戦中、戦後直後の日本企業の社会小説7編。

総会屋、貿易業、サルベージ会社、描かれる資本主義の実態、経済機構のからくり、組織と人間。

昨今のコンプライアンス云々のブラック企業とは比べ物にならない。命の重さは紙よりも軽い。

心に戦争の被害を残す戦中派世代の特異な精神構造がありありと感じられる。

当時の息吹を感じられる一冊でした。

昭和2年生まれの著者、城山三郎氏は海軍特別幹部練習

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ミスターダンディズム 白洲次郎

ミスターダンディズム 白洲次郎

人々よ。

日本のミスターダンディズムと呼ばれる男。
風の男、占領を背負った男。

ケンブリッジを卒業後、新聞記者を経て商社へ勤務するも日本の敗戦を見越し、鶴川村で百姓へ。
その後、吉田茂に請われ衆参連絡中央事務局参与になり、日本国憲法成立などに関与。

歯に絹着せぬ物言いが気持ち良い。
言葉のどれもこれもが、激しく頷けるものばかり。

小難しくなく、実に分かりやすい。

しかし、この当時から言っ

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国家機密と共に脱北

人々よ。

北朝鮮の工作員だった女は国家機密と共に脱北する。

国家機密を巡り、北朝鮮、中国、韓国、アメリカ各国の諜報機関が暗躍する。

国際政治ものは、どうしても現実が先になるので、古くなりがちだが、そこはさすが柴田氏。

時の総理、鳩山政権の時の阿呆さを思い出しました。

やはり、柴田氏はこれくらいの長編が読み応えがあって良い。

ハラスメント 同権だが平等ではない

ハラスメント 同権だが平等ではない

人々よ。

心に傷を持ち、フリースクールにやってきた17歳の少女と、大学生でボランティアをしにやってきた主人公との青春小説。

甘酸っぱいには違いないが、随分と薄い内容だったな。

ただ、フリースクールの校長の言葉「最近は、らしさというものが嫌厭されるから、色々なバランスが崩れてきている」があったが、実に頷ける。

男らしさ、女らしさ、こんな言葉を使うとセクハラだと言われる昨今、教師らしさ、生徒ら

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パワハラ セクハラ モラハラ それらを凌駕する不条理の嵐

パワハラ セクハラ モラハラ それらを凌駕する不条理の嵐

人々よ。

パワハラ、セクハラ、モラハラ。

それらを凌駕する著しい不条理の嵐。

ブラック企業に生きる三人の物語。

人間が壊れてゆく様が生々しい。

人間、追い詰められるとこうなるのか。

いやしかし、ゆとり、さとり世代感が漂うのは何故だろう。

最後の呪いの件は中々戦慄が走る。

誰かが死にたいと思った今日は、誰かが必死に生きたいと願った明日

誰かが死にたいと思った今日は、誰かが必死に生きたいと願った明日

人々よ。

30代40代の中年に入る悲哀の物語、三編。

バブル期のダム建設で底に沈んだ故郷を懐かしみ同級生が再会。

長髪のカツラを外し、ハゲを曝け出す高校教師。

自殺され遺書に名前を残されるが冤罪だった高校生。

重松作品は劇的な展開はないけど、そこはかとないというか淡彩で、何でもない誰にでも起こり得るであろう人生を書くのが非常に巧いですね。

生と死。

誰かが死にたいと思った今日は、誰か

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日本海軍における二人のリーダーの光と影を軸に誕生から消滅まで

日本海軍における二人のリーダーの光と影を軸に誕生から消滅まで

人々よ。

戦争について大本営について書かれたものを読むと、陸軍について多かったが、海軍について読むのは気付けば少なかったな。

海の山本、空の山本。

日本海海戦で歴史に残る完全勝利をおさめた山本権兵衛。日本を破滅へと導いた真珠湾奇襲の山本五十六。

ペリー来航以来、日本海軍における二人のリーダーの光と影を軸に誕生から消滅までが書かれた一冊。

華々しいという言葉を使って良いのか微妙だが、海軍の

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やっぱり女にほだされつつ、それでも捨て、でもやっぱり瀕死になり意識がなくなると気付けば、その女の元に

やっぱり女にほだされつつ、それでも捨て、でもやっぱり瀕死になり意識がなくなると気付けば、その女の元に

人々よ。

織田信長から抹殺の限りを尽くした天正伊賀の乱から時は流れ、時の天下は太閤秀吉の時代。

かつて、伊賀甲賀が入り乱れ跳梁跋扈していた時代は百地や上野のヒダリであったが、時代が下るとその子孫に移る。

下柘植次郎左衛門は爺さんになり、その弟子、葛籠重蔵、風間五平が物語の軸に。

後の世に石川五右衛門と呼ばれる男だな。

戦後、忍者が主役となる小説は昭和30年あたりの本作が初であろう。

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沖縄と米軍基地 3K依存経済

沖縄と米軍基地 3K依存経済

人々よ。

普天間基地。

あの密集市街地にイカれてるとしか思えない。

都内なら新宿御苑あたり、ニューヨークならセントラルパークに滑走路を打ち込むようなものだな。

沖縄に横たわる広大な米軍基地は、戦後の一時期を除き、沖縄の経済発展の大きな阻害要因になっている。

沖縄内の基地返還後の経済波及効果は30倍にもなっているところすら存在する。

戦後70年近く経っているが、沖縄は3K依存経済と呼ばれ

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当時、Macは電気屋じゃなくて、画材屋で扱われていた

当時、Macは電気屋じゃなくて、画材屋で扱われていた

人々よ。

平成の御世が終わり、令和になった現在。

戦後、好景気と呼ばれた時代はいくつかあったが、その中でも崩壊とついた好景気はバブル景気だけ。

さて、そんな時代をイラストレーターの二次元から、立体造形の三次元、マルチメディアの四次元を経て、小説家としても活躍するヒキタクニオ氏のドキュメンタリーノベル。

氏の著書の元ネタはこの熱きバブル期の実体験から生まれていたんだと、フリークとしては嬉しい

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倒幕やら勤王だとかは関係なく、一般市民はせっせと色恋なんかもしてたわけだ。

倒幕やら勤王だとかは関係なく、一般市民はせっせと色恋なんかもしてたわけだ。

人々よ。

江戸時代は何も、武士と官僚ばかりではない。

市井の人々、つまり町人、パンピーだって日々を暮らしていたわけです。

何も生類憐れみの令や、ペリー来航で日米修好通商条約やら、五稜郭やら倒幕やら勤王だとかは関係なく、一般市民はせっせと色恋なんかもしてたわけだ。

江戸には恋が溢れている。

小説、音曲、芝居、浄瑠璃、浮世絵、黄表紙、洒落本...好色であることが誉高く、人が粋に通じ、人情に満

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