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書籍紹介

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蔵書です。 個人の所感ですので、悪しからず。
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2022年8月の記事一覧

情念作家の一冊

情念作家の一冊

人々よ。

PMC(民間軍事会社)に限りなく近い人材派遣会社から各案件に送り込まれるスタッフもとい傭兵が活躍する痛快活劇。

著者の『完全自殺マニュアル』、『果てしなき渇き』では度肝を抜かれたが、この情念作家とも呼べる深町氏。月村了衛氏に通じる世界観をお持ちで。

本作は単なる暴力小説ではなく、活劇ですね。ただ、深町氏が描く暴力小説も諸々の意味で衝撃を受けるので好みだが。ヤクザものや、警察もののド

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痛快な一冊

痛快な一冊

人々よ。

シャブ漬の元プロ野球選手の救済、ヤクザ襲撃、悪徳サークル潜入。

シリーズ第二弾。

本作も、まあ死ぬ死ぬ。

痛快。

本来ならば、書評としてなにがしかを書き残したいところですが、あえて語らずご一読くださいませ。

欺瞞と偽善

欺瞞と偽善

人々よ。

シリーズ五作目。スピンオフ。
ガンテツこと勝俣、元刑事の倉田、元部下の葉山。
姫川以外の脇役達にスポットが当たる。

官僚。欺瞞と偽善が蔓延する日本か。
本作はデスノート的な内容でした。

時代小説にアレルギーがある方は、ここから入ると良いかもしれない一冊

時代小説にアレルギーがある方は、ここから入ると良いかもしれない一冊

人々よ。

時は文化文政の江戸。

女性と見紛うばかりの美貌と優れた才を持つ浮世絵師、石蕗蓮十。彼の描く絵には魂が宿り、命が吹き込まれるという。

悪友の歌川国芳と地本問屋の看板娘と共に繰り広げられる人情劇。

江戸の浮世絵師を題材にした作品だと西條奈加氏の『ごんたくれ』が秀逸だったのことを記憶している。円山応挙、伊藤若冲、池大雅、与謝蕪村などなどが登場。

それに比べるとメディアワークス文庫らし

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過疎化の進む商店街

過疎化の進む商店街

人々よ。

シャッターを下ろした寂れた店と爺さん婆さんがゆるりと闊歩する子鹿商店街。

その通り名はバンビロード。

闇金会社からネコババした三千万円を手に、命辛々逃げ、たどり着いたのがこの街。

日本のあちこちで見られる、商店街近郊に大型ショッピングモールが出来て過疎化が進む典型的な地。

ひょんなことから、その元闇金が町おこしを手伝う羽目に。更に、何故か昭和の俠客丸出しの組長の舎弟になることに

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滝沢馬琴のオマージュ作品

滝沢馬琴のオマージュ作品

人々よ。

滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』のオマージュ。

作中作で『南総里見八犬伝』と『贋作・里見八犬伝』が交わる。

本家の伏姫とは大分、性格が異なるが、物語が進むにつれ、贋作の味が滲み出る。

実に多角的な一冊でした。

八犬伝ものの作品は割とあるけど、現代に通じるものを非常によく感じさせられる作品。

現代の若人はこういう心持ちで生きているのやもしれん。

目を背けたくなる一冊

目を背けたくなる一冊

人々よ。

スナッフフィルム。殺人解体ビデオ。

戦争などの有事ではなく、生きたままの人間を解体する。メスで目玉をくり抜き、臓腑を取り出し、ペンチでゆっくりと爪を剥ぎ、チェーンソーで肉片を飛び散らせ、頭蓋骨を掘削する。麻酔なしで。

タイで、日本人女性が次々に失踪する。

旅行に来ていた日本人カップルの彼女が突如姿を消す。彼女を救うべく彼氏は言葉が通じぬ異国の血を東奔西走するが...関わる人間が次

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義侠心 復興

義侠心 復興

人々よ。

花房組組長、本家一成会の若頭補佐白岩は、先代組長の盟友で現在は堅気の成田に頼まれ、震災後の仙台で彼の義理姉とかつての乾分に会う。

すると二人の周辺に高齢者を狙う訪問販売業者や地元暴力団が現れた。

震災後の被災地には、復興を食い物にする政治家や企業が跳梁跋扈する。

きな臭さが蔓延するなか、筋目を通す漢の活躍が胸を空く。

億単位の金がパー

億単位の金がパー

人々よ。

一時流行った仮想通貨。

億単位の金がパーに。
なぜなら、財物に該当しないから、取締も難儀する。

著者自身、警視庁入庁、警備部警備第一課、公安、警備局警備企画課、CIROを経るという経歴を持つ。

その為、組織内の動き方、各所の相方など実に臨場感溢れる。が、リアル過ぎると言うか、物語として読み物としては、もう少々フィクションというか構成が欲しいところ。『ハニートラップ』では、多分に発

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マネーロンダリングの資金先 チャイニーズマフィア

マネーロンダリングの資金先 チャイニーズマフィア

人々よ。

湯布院で一人の大物の九州ヤクザだった。
使用された武器は吹き矢。
そこに用いられた毒物を探られていることを察知した巨大宗教団体。

事件が事件を呼び、捜査一課、二課、三課、ハイテク課、組対四課、科警研、公安が総動員。

舞台は、東京、京都、福岡へ。

チャイニーズマフィアが跋扈し始め、マネロンの資金先は...

その時代時代の事件をネタにしてるんだな。

前作よりもスッキリしている。

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米国ファンドを介しジャパンマネーを政財界へ

米国ファンドを介しジャパンマネーを政財界へ

人々よ。

内閣情報調査室、通称CIRO。米国で言うCIA、ロシアのKGB、英国のMI6。

ある夜、内調のネタ元の情報屋が惨殺される。

郵政民営化がいよいよ施行されるに近づき、ジャパンマネーが米国ファンドを介し、政財界に金が舞い飛ぶ。

捜査一課だけでは収まらず、公安の影がちらつく。

政治色が強い一冊だったが、最後のオチがなー。何とも報われない。

極道の世界も高齢化

極道の世界も高齢化

人々よ。

PO、プロテクションオフィサー身辺警戒員。

警備部警護課のSPが、政府要人などのVIPの警護を行うのに対し、POは暴力団からの嫌がらせや恐喝、命の危険に晒されている可能性のある一般市民や企業幹部の身を守るのが任務となる。

そんな中、連続殺人事件がおこる。

10年前まで極道として生きていたが、足を洗いカタギとして真っ当な日々を送っていた者が次々に。
極道の世界も高齢化が進み...

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厚みの一冊

厚みの一冊

人々よ。

テレビプロデューサーの叔母から、海外からやってきた霊能力者の通訳兼世話役を押し付けられた就職浪人のフリーター娘。

過去にトラウマを抱える為、嫌々ながらもロケ地へ赴く。霊能力者の透視通り、現場へ向かうと、廃ビルからミイラ化した男性の遺体が見つかる。

番組は生放送で放送されるが、そこに殺人犯が...

警察小説、青春小説の雄として著名な誉田氏だが、そのデビューはホラーだったようだ。

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警察組織のあり方

警察組織のあり方

人々よ。

池袋繁華街。

雑居ビル内で全身20箇所近くを骨折した暴力団組長の死体が見つかる。更に半グレ集団OB、不良中国人が同様手口で殺される。

裏社会の住人が次々と殺害されてゆく。
恐怖と想像力が闇の住人達の抑止力になる。

シリーズ六作目。

現在の警察組織のあり方と問題点が、よりリアルに描かれる秀作でした。