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併存的債務引受による抵当権変更登記


「亡くなった人の相続人全員を連帯債務にしたいんです。」
銀行の担当者がそう言った。

私「???…確認してご連絡いたします。」(何を?)
?が頭いっぱいに。。。まだまだ知らないことだらけだな。

 「連帯債務にしたい」とは。

 銀行としては、被相続人の債務全体を相続人の誰に対しても請求できるようにしておきたいのだろう。

ただし、
 抵当権の被担保債権は分割債務である。
 相続人は法定相続分にしたがって当然に債務を承継する。

 このままでは、各相続人が分割された各債務を承継したのみで、連帯債務とはならない。

ここで、今回のケースで考える。

ケース

  1. X所有の不動産に、債務者をXとするY銀行の抵当権が設定されている。

  2. 令和4年8月30日、Xが死亡した。

  3. Xの相続人は、妻A、子B、Cである。

  4. 債務が1000万であるとき、Aが500万、Bが250万、Cが250万の分割された債務を承継することとなる。


 何らかの方法で、Aの500万円の債務をB、Cが引き受け、Bの250万の債務をA、Cが引き受け、Cの250万円の債務をA、Bが引き受ければ、1000万全体を連帯債務の関係にすることができる。


併存的債務引受

(併存的債務引受の要件及び効果)
第470条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
2 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

 
 併存的債務引受契約である。

 各債務について併存的債務引き受けを行えば、債務全体1000万円についてABCが連帯債務者とすることができる。

 
 債権者Y銀行と相続人ABCの間で、併存的債務引受契約をおこなう。

 具体的にみると、
①債権者Y銀行とBCの契約
 Aの債務500万円を、BCが連帯して債務引受をする。
②債権者Y銀行とACの契約
 Bの債務250万円を、ACが連帯して債務引受をする。
③債権者Y銀行とABの契約
 Cの債務250万円を、ABが連帯して債務引受をする。


登記手続き

1.所有者Xにつき相続登記。
2.相続を原因として抵当権の債務者変更登記。
3.併存的債務引受を原因として抵当権の債務者変更登記。


 併存的債務引受の変更登記は、前記①~③の契約ごとに申請する必要があるか。
 この点、①~③の債務引受を一つの申請書で申請することができる。(法務局に照会済み。)

1.相続登記は省略。


2.債務者の相続登記

(1)登記申請書
登記の目的  抵当権変更(順位番号後記のとおり)
登記原因   令和4年8月30日相続
変更後の事項 債務者(被相続人 X)
       住所 A
       住所 B
       住所 C
権利者    住所
       Y銀行
義務者    住所 A
       住所 B
       住所 C
添付情報   登記識別情報
       登記原因証明情報
       代理権限証明情報
       印鑑証明書
       会社法人等番号
--------------------------------------

3.併存的債務引受の変更登記


(1)登記申請書
登記の目的  抵当権変更(順位番号後記のとおり)
登記原因   令和4年10月2日AはB及びCの、BはA及びCの、CはA及び
       Bの債務を併存的債務引受
変更後の事項 連帯債務者
       住所 A
       住所 B
       住所 C

権利者    住所
       Y銀行
義務者    住所 A
       住所 B
       住所 C
添付情報   登記識別情報
       登記原因証明情報
       代理権限証明情報
       印鑑証明書
       会社法人等番号
--------------------------------------

 登記原因が長いので不安になりました・・・
 併存的の場合は、通常「追加する事項」となりますが、今回は追加するというよりも、「債務者」を「連帯債務者」としたいため、「変更する事項」とした。


(2)登記原因証明情報
   -抜粋-
登記の原因となる事実又は法律行為
(1)令和4年10月2日、債権者Y銀行と債務者兼引受人A、B、Cとの間で、本件不動産上の抵当権(平成●●年●●月●●日福岡法務局受付第●●●●号)の被担保債権である平成●●年●●月●●日付金銭消費貸借契約に基づくA、B、CのY銀行に対する各債務について、AはB及びCの、BはA及びCの、CはA及びBの債務をそれぞれ併存的に引き受け、連帯して履行する旨合意した。
(2)よって、同日、本件抵当権の債務者は連帯債務者A、B、Cに変更された。
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無事に登記完了した。ふうー。


お わ り

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