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BCPの策定と運用に組織(チーム)が必要か

BCPの策定はネットなどで公開されているひな形を活用すれば、必要最低限のBCPであれば事業主一人で策定可能かと思います
 参考サイト:中小企業庁BCP策定運用指針(入門コース)

しかし、介護事業や障害福祉事業、医療事業などは社会ニーズが極めて高く、利用者の生命や生活に大きく影響する事業であるため、BCPの必要最低限の範囲は広く・多くなります
また、策定だけでなく、その後の運用(教育研修、訓練、資器材の管理、BCPの見直しなど)も継続しなければならないことを考えると、事業主一人だけで策定・運用することは、ほぼ不可能です

それでは、従業員を集めて組織的に行えばいいかというと、誰が適任なのか、何人くらい必要なのかなど悩ましい問題が発生します
すでに経営陣などの複数名体制で事業が展開されていれば、その方たちが適任でしょうが、BCPに関しては、新規プロジェクトを立ち上げて特別チームのような組織体制を作る必要があるのでしょうか

この記事では、BCPの策定と運用を推進する組織(チーム)の必要性などについて解説します


■ 必要に応じて選ばいい

組織(チーム)が必要かどうかの答えは ”必要に応じて選ばいい” が結論になります

”ちょっと待ってよ~” と言われそうですが、結論としてはそのとおりです

ある程度の規模の事業であれば、すでに経営陣などの運営組織が存在しているしょうし、必要ならプロジェクト化して現在の運営組織を母体に部内外の人材を加えて新しい組織(チーム)を立ち上げればいいでしょう

一方、従業員数が数名程度で運営組織などの概念はなく、事業主が一人でリードしているならば、必要とする知識や情報、意見を持つ部内外の人をどんどん引き込んで進めればいいでしょう

つまり、BCPの策定と運用には ”組織(チーム)” が必要なのではなく、経験や知識、意見を持つ ”人” が必要でなのです
そのような方々に声がけして集めたら、いつの間にか組織(チーム)化していたということになります

結果として、必要に応じて集めた人々で策定と運用を進めればいいのですが、そこには十分に考慮・配慮しなければならないことがあります


■ ミッション・インポッシブルに見る組織(チーム)化の欠点

映画の ”ミッション・ポッシブル” をご覧になったことはありますか
私は昭和生まれなので、TVドラマの ”スパイ大作戦” をよく観ていましたので、そちらの方の印象が強いです

主人公のリーダーが当局と呼ばれるIMFから無理難題な指令を受け、それをコンプリートするために仲間の工作員を集めて活動するという話です
そのリーダーが指令の内容に応じて作戦を立て、作戦に適した工作員を選ぶというシーンがあります
ほとんどの場合、その工作員らはそれぞれの特技を生かして活躍し、ミッション・コンプリートします

ところが毎回、予想もしてなかった展開や障害があり、なかなか苦労するわけですが、そこはプロの工作員なので高度な知識と技術で乗り切ります
時には、工作員が途中で欠けてみたり、ギミックなツールを失ったりと、観る側を飽きさせません

実は、この映画・ドラマから得られる教訓的なことがあります

それは、 ”組織・チームの欠点は、その道のプロが欠けるとピンチに陥る” ということです

何かを成し遂げるために色々な特性や特技を持つ人を集めることは、事業においても共通することです
介護事業や障害福祉事業などであれば、特定の資格保有者の配置義務や配置人数の規定などの法令の定めもあります

事業主は、事業の必要性から職員などに役割を当て、時々の必要に応じて全員または特定の人を選んで作業指示を出したり、事業主自ら一緒になって日ごろの業務を行っているはずです
そこには自然と組織(チーム)化された職場が作られています

ところが、ある特定の業務において、その業務に欠かせない職員が何かの事情で欠けると他の職員で補おうとしますが、知識も技術もなく突然の欠員に対応できないと業務が停滞し、もしも、その業務が事業全体に大きな影響を与えるものなら、事業に致命傷を与えるかもしれません

組織(チーム)化の欠点とは、ここにあります
BCPの策定と運用に必要な人を集める・集めた後に考慮・配慮しなければならないこととは、この欠点のことです

必要に応じて人を集めて策定と運用を進めればいいのですが、必要だからと言って、特定一人に頼りすぎる体制・体質の組織(チーム)は危険を抱えているということです


■ 組織(チーム)化もBCP策定も同じ

BCPの策定では、災害等で事業が被害を被っても、限られた事業資産で重要事業を存続させることが主たる目的です
また、事業資産が限られても、早期に被害復旧し、重要事業が継続できるようにする対策と戦略を作るのが策定作業です

その策定作業では ”決して失ってはならない事業資産” と ”失っても代わりになる資産と手段” の両方を導き出します
結果的に組織(チーム)ができた場合もこれと同じことを考えなければなりません
つまり、事業主自身や組織(チーム)のメンバーに欠員が出ても残ったメンバーで先に進められる組織体質を作っておくことです

  • 一人のメンバーだけに特定の任務・業務をあてない
    たった一人の専門家を作らないようにし、孤立させないようにしなければなりません
    また、オールマイティで何でもできてしまう器用で希少な人も同じです

  • メンバーに欠員が出ても他のメンバーがカバーできるようにする
    一人の業務を他の誰かでやるのではなく、何人ものメンバーに分散してできるようにします
    欠員の業務を他の一人に割り当てても、その人の業務量が2倍、作業効率が2分の1になってしまいますので、分散させることが大切です

  • 情報と認識を共有する
    皆が知っていれば、協力もできますし、欠員のカバーもやりやすくなります

  • やり方や進め方はプログラミングしておく
    □□さんと□□さんは、この業務を○○して、△△までに完成する・・・などをあらかじめ取り決めておけば、二人で情報等を共有しながら協力して現場判断で業務を進めることができます
    コンピュータのプログラミングと同じ感覚です

映画やドラマでは、工作員であるメンバー全員が集合した時にリーダーから指令内容、作戦とそれぞれの役割、行動上の取り決めなどを綿密に話をしています
また、各メンバーは、話を聞きながら確認したいことは確認し、アイデアや意見があればその場で述べることで全員が同じ使命、情報、認識などを共有しています
また、作戦行動中も途中経過の話をして、次の一手を打合せしています

この様子のことを ”作戦会議” と言いますが、”打合せ会議、ミーティング” とも言いますよね
BCPの策定作業を組織(チーム)で進めるときも、会議やミーティングを何度も行う必要が出てきます
”組織(チーム)の欠点を補う体質づくり” も ”BCPの策定作業を進めること” も全く同じ理屈です


■ まとめ

BCPの策定と運用に組織(チーム)が必要か?

一人でやるよりも複数名でやるのが労力と時間を節約できます
その反面、組織(チーム)を統制する活動が必要となります
その道のプロが必要となることもあるでしょう

  1. 組織(チーム)が必要となるかの答えは、”必要に応じて選べばいい”
    策定と運用に必要とする経験や知識、意見を持つ ”人” を選んで・お願いして先に進めるだけです
    そんな人たちが複数集まると ”組織(チーム)” が自然とできるということです

  2. その道のプロが欠けるとピンチに陥るという組織(チーム)の欠点を補うこと

    • 一人のメンバーだけに特定の任務・業務をあてない

    • メンバーに欠員が出ても他のメンバーがカバーできるようにする

    • 情報と認識を共有する

    • やり方や進め方はプログラミングしておく

  3. 組織(チーム)の欠点を補う体質を作り、BCPの策定作業を先に進めるための会議等
    参加メンバー同士がアイデアや意見をその場で述べることで、全員が同じ使命、情報、認識などを共有する重要な活動です

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