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防災とBCPの3つの "やらかし事"

今年は、関東大震災から100年経過の年です
例年、この日の前後の期間、国や地方、自治会や会社などで防災訓練や研修などのイベントが行われてきました
今年は更に多くの場所・チャンネルで広報・啓発・情報提供が盛んに行われています

いつ起こる変わらない災害に対して備えておく・構えておくことは、今や当たり前のこととなっています
そして、事業における災害への備え・構えは、防災計画やBCPという形で事前に明確にすべきこととなっています
いざとなってから考えてはじめ・準備して・行動することは、ほとんど無理だから今のうちに策を講じておくわけです

さて、そんな防災計画やBCPのほか、マニュアル類ですが、策定していても使えなかったということがあります
せっかく策定した計画やマニュアル、いくつかの誤り・勘違い・怠りで、容易に無効・無駄となることがあります

そこで今回は、防災計画やBCPの策定と運用の "やらかし事" を3つほど紹介します
各種計画の見直し、備え・構えのあり方を思いめぐらす良い機会ですので、是非とも参考にしてください


■ 防災計画とBCPの3つの "やらかし事"

ここでは、防災計画を総称していますが、災害などの非常事態を想定した対処計画の全てをいいます
また、BCPは業務継続計画や事業継続計画とも呼ばれますが、同じ意味です

そんな事業の非常事態に備えた対策・対処計画ですが、十分に機能しなければなりません
策定・運用するノウハウがない、時間や労力が足りない、複雑で面倒という理由でないがしろにはできません
加えて、策定してあっても、"実質的に使えない代物" であったり、"存在することすら知らない" なんてことがあります

以下は、そんな 各種計画が無効・無駄となる "やらかし事" で、ありがちなこと3つを紹介します

①あいまい

災害等の事態の発生や被害の程度を予測することは、なかなか困難なことです(想像・想定することはできますが)
そのため、事前の対策や事態等発生時の行動基準などを完璧なまでに定めることが難しいのが現実です

そうすると、計画の内容が、どうしても内容が粗くなったり、抽象的な表現になってしまいます
また、書籍やネット上にある "ひな形" を参考に防災計画やBCPを策定した場合、内容の不足や不備な部分があったりします
更に、ひな形の作成例をそのまま使っているようであれば、なおさらです

  • 例1:「大きな地震の発生や洪水警報発令時は、速やかに避難場所に避難する」
        どこに・どの避難場所に逃げるの?
        避難開始の決断は、いつ・誰がやるの?
        そもそも、誰が避難するの?

  • 例2:「断水の長期化を予期し、最低3日分の飲料水を事業施設内に保管する」
        3日分って、具体的に2ℓペットボトル何本分?
        施設内のどこに保管するの?
        日頃、誰が調達して管理するの?

上記を含めて最も不足・抜けがちになるのが "誰が" という主語です
「誰のことを話しているのかは、当然分かっているよね」
なんて感じで、計画を策定した結果、役割分担などが不明確で活動できないということが生じます

"使えない防災計画とBCP" は、誰もが使えるようになっていないこと原因があります


②大事にしすぎ

防災計画やBCPには、事業の運営・経営上の秘密事項が記載されていることがあります
また、従業員や顧客、関係者の連絡先などの情報があれば、保護すべき個人情報となります

それゆえに、紛失・流出・漏洩などを防止するため、厳格に管理する必要があります
ところが、紛失・流出・漏洩などのリスク回避のため、次のような管理をしているところもあります

  • パソコン内に保存し、書面化していない
    → パソコンの故障、停電やバッテリー切れだと使えない
    →パソコンやデータにパスワードが設定されていて、担当者以外がアクセスできない

  • 書面化したものが1部・1冊しかない
    → 複数の従業員・職員、複数の事業施設で同時に使えない
    →損失・焼失・持ち出さなかったために使えない

  • 金庫に保管している
    → 金庫を開けられる事業主や従業員・職員が不在だと取り出せない

重要な書類であることで、"過ぎたる保管・管理" が、いざとなったら使えない原因となります


③誰も知らない

3つ目の "やらかし事" は、防災計画やBCPの存在や内容を誰も知らないということです

約40年前、ファミコンなどの家庭用ゲームが普及し始めたころの話です
いくつもの企業が、当時は高価なパソコンを積極的に導入した時期がありました
海外の企業が、パソコンを導入して業務の効率化・高度化を進め、その成果が絶大だったからです

ところが、パソコンを導入しても業務の効率化・高度化が進まない企業が多くありました
その理由は、使い方を誰も知らなかったからです

その結果、使い慣れたツールで、今までどおりの要領で仕事を継続するようになります
パソコンの存在は、使える人だけの専用ツールと化したそうです
そして、業務の効率化・高度化が、どれほど重要な課題なのかを皆が知るまで相当の時間を要しました

この昔ばなしは、防災計画やBCPなどにも共通しています
事業主や一部の人だけが防災計画やBCPを知っていた・持っていたのでは何の役にも立ちません
知る人が不在となったとき、何も知らない残された従業員・職員だけで何ができるでしょう

原因は、教えられる人・教えるべき人が、教える機会を作らなかったことにあります


■ やらかし防止・解消

平常時は、防災計画やBCPを確認する機会が少ないことと思います
常に必要とするはずの業務手順書やマニュアルでさえ、慣れてしまえば見ることがないでしょう

そんな状態にある防災計画やBCP、各種マニュアルは、定期的に見直す・見返す必要があります
その際、やらかし事3つを防ぎ、解消するため、次のような考え方・やり方で進めるといいでしょう

①5W1Hで整理する

記載されている内容を確認する際は、何か欠落・足りていないかを確認するようにします
このとき、5W1H式に整理することで、あいまいさを防止・解消しやすくなります

  • いつ(When)
    ・特定の条件や時期(~したとき・~な場合 など)
    ・目標・継続の時期(~まで・〇〇時間内に~・〇〇日間は~ など)

  • 誰が(Who)・誰に対し(Whom)
    ・責任者・決心権者(代表理事・社長・所長・指定された代行者・代決者など)
    ・実施者(従業員全員・管理責任のある職員・特定技能を持つ職員など)
    ・対象者(責任者・従業員・顧客・サービス利用者など)
    ・関係者(納品業者・業務委託業者・行政機関・周辺住民など)

  • どこで・どこに(Where)
    ・特定の事業施設や施設内の部屋など
    ・自治体指定の避難場所などの特定の場所
    ・職員各自が所在する場所(自宅や外出先など)
    ・顧客・サービス利用者が所在する場所など

  • 何で・どうして(Why)
    ・どのような目的や目標があるのか
    ・どのような効果や結果を期待しているのか

  • どのように(How)
    ・使用する・活用する手段
    ・基準とする手順や業務処理の要領
    ・基本的な行動基準など

5W1Hを基本に記載内容が整理されていれば、予測しきれなかった事態・事象に対しても臨機に対応しやすくなります
また、計画書やマニュアル類は、事業主や担当者だけでなく、従業員・職員(努めて全員)にも回覧して意見を聴くようにします
策定中であれば、原案を回し読みしてもらうことで、色々な意見が出てくることでしょう

②使えるように厳格に管理する

情報の紛失・流出等を防ぎつつ、いざという時に確認・利用ができる態勢を構築することが重要です
また、日頃の業務にも支障が出ないようにしなければなりません

態勢の構築は、物理的な整備手順の確立関係者全員への周知の3点で行います

  • 計画書本体とは別に、秘密事項や個人情報だけを記した別冊を作成する
    ・本体は、いつでも確認・利用できるように管理し、別冊を厳格に管理する
    ・本体は、複数作成しておく

  • パソコンなどへのデータ保存は、あくまでもバックアップ目的
    ・計画書は書面化・製本化する
    ・計画書の元データは、クラウドや複数のパソコン等にバックアップしておく

  • 職員だけが利用できる保管場所
    ・金庫とは別に、職員しか開けられない保管場所に保管する
    ・鍵の定位置やダイヤル番号は職員にだけ周知しておく

  • 使用・持出の要領を決めて周知する
    ・必要ないときは、常に定位置で保管されているような手順の取り決めと周知
    ・定期的な点検(日々点検)の要領と担当を取り決めて行う
    ・非常時の持出要領を決めて、全員に周知しておく

秘密事項や個人情報を大切にするあまり、いざという時に使えなければ無用な存在となります
いざという時には使えるが、通常は容易に取り出せない・取り扱えないような態勢づくりが必要です
また、点検による紛失・流出等の防止を継続することが重要です

③知る・知ってもらう機会を作る

防災計画やBCPは、策定して終わりではありません
従業員・職員の全員が、その存在を知っており、それらを使って行動できるところまで周知します
そのためには、教えて知ってもらい、やってみて理解してもらうことしかありません

その手段が "研修" と "訓練" です

  • 研修は、従業員・職員の全員が共通した知識と意識を待たせるようにする活動です
    事業主・経営陣の想いや考え、非常事態発生時の行動基準など、各種計画の内容を普及します

  • 訓練は、会得した知識を活用して実際に行動することで、能力を向上させる活動です
    頭と体を同時に使うことで、会得した知識を深め、いざという時に行動ができるようにします

事態対処のプロ集団である警察・消防・海上保安・自衛隊などの機関では、研修と訓練が日常的に行われています
それが仕事でもありますが、最大の目的は、どんな状況下でも適正・的確に行動できるようにするためです
また、よく知らない同僚同士が集まっても組織的に行動できるよう、行動基準 や手順、装備などが標準化されています
大規模災害では、多くの自衛隊員が全国から集まりますが、組織的に動けるのも日常の研修・訓練と手順等の標準化があるからです

このことから、研修と訓練を行わなければ、いざという時に各種計画があるだけでは何にもなりません
研修と訓練は、少なくとも年間数回、定期的に行うべきでしょう
9月1日の防災の日、3月11日の東日本大震災が発生した日が実施するいい機会となります
(ちょうど半年ごとの実施となります)


■ まとめ

防災計画・BCPにある3つの "やらかし事" を紹介しました
これら3つは、いざとなったら、個人と事業に致命傷となり得ることです

  1. あいまい   ▶ 5W1Hで整理する

  2. 大事にしすぎ ▶ 使えるように厳格に管理する

  3. 誰も知らない ▶ 知る・知ってもらう機会を作る

日頃の業務で忙しくても、煩わしい作業であっても、機会を作って是非とも取り組んでください

また、以上のような取り組みで、日頃は感じていない隠れた "やらかし事" が見つかるかもしれません
なぜなら、隠れた "やらかし事" は、どこにでも存在しているからです
たとえば、この記事を読んでいる方で違和感を感じた方がおられることでしょう

  • この記事は、誰に向けて発信しているのかお分かりでしたか?
    主語・主体が誰なのか明確でしたか?

  • この記事の中で、わざわざ "ひらがな表記" している部分がありました
    "漢字で書いた方が読みやすい" と感じませんでしたか?

こう言われると、隠れた "やらかし事" が何となく見えてきませんか?


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