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運営指導(実地指導)で何が確認される

障害福祉サービス事業所等に対して行われる運営指導(旧実地指導)が今年度も行われます
事業所等ごとに概ね3年に1度の頻度で行われますが、ここ数年は、新型コロナ感染症まん延が影響で、まともに行われてきませんでした

それでも、感染防止に配慮しつつ、やれることはやるということで、、事業所等に行政の職員が出向くことなく、オンラインや書類送付によって行われていました

【補足です】
オンラインの活用などで実地でなくても確認・指導ができるようになったので、令和4年度から 実地指導の名称は "運営指導" に変わりました
(現在は、両方の名称が混在使用されてます)

昨年5月に新型コロナ感染症が5類に移行され、生活態様も変化しました
また、今年度は報酬改定が行われ、それに伴う各種規定も変わりました
そうなると、今後の運営指導は、より本格的に行われることが考えられます

そこで、運営指導を受けるに当たり、参考となる(ちょっとした)ポイントをお話したいと思います


運営指導は何のために行われるのか

利用者さんの日常生活や社会生活を支援するため、事業所等が提供するサービスの質の確保と自立支援給付の適正化を図ることにあります
(厚生労働省の指定障害福祉サービス事業者等指導指針より抜粋)

上記の目的は、事業者等(事業主、管理者、全従業者)が責任をもって達成させなければなりません
でも、自分らの視点や活動だけは、法令等に沿った適正・適切な状態なのかを客観視できづらいことがあります

そこで、行政職員による現場や書類の確認、従業者等との面談を通じて、事業所等の現状を把握し、必要な指導や支援を行うのが運営指導です


ちなみに "監査" というものもありますが、これは、行政側が以下のような状況を確認した場合に実施されます

  • 著しい違反が確認され、利用者等の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあると判断した場合

  • 給付に係る費用の請求に誤りが確認され、その内容が、著しく不正な請求と認められる場合

監査は、これらの状況や原因(温床)を改めて確認し、ほぼ強制的に是正させるために行われます
そして、厳格な確認と是正の指示、その後の是正確認があり、是正されない場合は、事業所等の指定取り消しなどの処分を受けることがあります


ということで、運営指導を簡単に言えば、概ね3年に1回の事業所等の定期健康診断・車検といった感じです
よって、やみくもに厳しく・あら捜しに来るのではなく、利用者と事業所等のために行政が手助けしてくれる制度と考えてください


運営指導で何が確認される

過去に運営指導(実地指導)を行けた方々はお分かりだとは思いますが
ここ数年内に事業を開設された方々にとっては、ドキドキものでしょう

そこで、運営指導で何が確認されるのかを簡単に説明します

既述のとおり、サービスの質の確保と給付の適正化の観点から、大きく次のようなことが確認されます

  • 設備の状況の確認

  • 書類や掲示物などの存在と内容の確認

  • 管理者や従業者からの聴取による現状の確認

この中で、書類などの確認について、以下に説明します

事業所等の内情をよく知らない行政職員にとっては、書類から現状を読み取ろうとします
特に、ほとんどの書類は、作成と管理が法令等で定まっていますので、その存在と内容が確認されます

なお、自治体ごとに確認する書類の種類が異なります
また、事前提出が求められる書類もあります
自治体からの連絡やホームページ等で確認して準備・対応するようにします

確認される主だった書類は、以下のとおりです


事前提出書類(一例)

行政職員が事業所等に出向く前に、事業所等の全体像・概要をつかみ、当日は何を・どのように確認するかの予定を組むなどのために使われます
なお、提出は、郵送や直接手交のほか、メール送付可とされています

  • 事前調書や事前提出資料、自主点検表など
    所定の様式に人員・運営・給付に関する概要を記入して提出します
    自治体によって名称や求められる内容、添付書類が異なります

  • 勤務形態一覧
    所定の様式に直近3カ月の状況を記入して提出します
    自治体によって、事前提出の有無が異なります

  • 運営規程、重要事項説明書、契約書
    写し(コピー)を提出します
    自治体によって、事前提出の有無が異なります


当日に確認される書類(一例)

当日は、概ね以下の主だった書類が確認されます
自治体、事業所等の種類(サービス)によって、確認対象となる書類が異なります

なお、当日までに準備する書類の中で該当する書類がない場合は、運営指導を受けるためだけに新たに作成する必要はないとされています
また、当日は、書類を一か所にまとめておく必要はありませんが、行政職員の都度の求めに対して速やかに提示できるように準備しておきます

  1. 人員に関する書類

    • 勤務実績表や出勤簿、タイムカード

    • 従業者の資格証や研修修了証

    • 職員勤務表や勤務体制一覧表

    • 雇用関係を証する書類

    • 就業規則

    • 利用者が分かる資料(利用者名簿など)

  2. 設備に関する書類

    • 平面図

    • 設備・備品一覧

  3. 運営に関する書類

    • 運営規程

    • 重要事項説明書

    • 利用契約書

    • 受給者証の写し

    • アセスメント記録やモニタリング記録、ケース記録

    • 個別支援計画

    • サービス提供証明書の写し

    • サービス担当者会議や個別支援会議の記録

    • サービス提供実施記録

    • 入退所・入退居が分かる書類

    • 送迎記録(送迎を行っている場合)

    • 預かり金の管理書類(預かり金を管理している場合)

    • 生産活動・実習・就労に係る書類(それらが行われている場合)

  4. 秘密保持等関連

    • 従業者及び管理者の秘密保持誓約書

    • 個人情報使用同意書や利用者情報提供についての本人等の同意書

  5. 苦情対応関連

    • 苦情対応マニュアル

    • 苦情受付と苦情対応の記録(苦情があった場合)

  6. 事故対応関連

    • 事故対応マニュアル

    • ヒヤリハット記録

    • 事故発生時の記録、行政機関への報告書類など(事故があった場合)

  7. 緊急時対応関連

    • 非常災害対策マニュアル(対応計画)

    • 通報・連絡体制

    • 消防用設備点検の記録

    • ケース記録や事故等の対応記録(事案があった場合)

    • 訓練の実施記録

    • 消防署への届出書類

  8. 業務継続計画関連

    • 業務継続計画及び計画の見直しを検討したことが分かる書類

    • 研修及び訓練の実施記録

  9. 衛生管理関連

    • 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針やマニュアル

    • 感染対策委員会の記録

    • 研修及び訓練の実施記録

  10. 身体拘束等関連

    • 身体拘束等の適正化のための指針

    • 適正化のための対策を検討する委員会の記録

    • 研修の実施記録

    • やむを得ず行った際の記録

  11. 虐待防止関連

    • 虐待防止のための指針

    • 虐待防止委員会の記録

    • 研修の実施記録

    • 担当者を設置したことが分かる書類

    • 虐待発生時の記録、行政機関への報告書類など(事案があった場合)

  12. 情報提供等関連

    • パンフレット

    • 事業者のHP画面

  13. 給付費等に関する書類

    • 国保連への請求書・明細書(控)

    • 利用者負担額等が分かる書類(請求書や領収書)

    • 各種加算要件を満たすことが分かる書類

    • 業務管理体制に関する書類(写し)

  14. その他(一例)

    • ハラスメント防止のための指針、研修の実施記録など

    • 地域連携推進会議の構成委員や記録など

    • 運営規程や就業規則などで規定される重要事項、勤務体制や勤務計画、医療機関の連絡先などが記載された掲示物や備付閲覧物

    • 事故等防止のための注意喚起、避難経路などを示す標示物


障害福祉分野の手続負担軽減の施策でどうなる

ちなみに、運営指導の実施に関する手続負担の軽減策が示されました
これは、内閣府規制改革推進会議の指針に基づき、厚労省から出されたものです

参考までに・・・
細部は、他記事【障害福祉分野の手続負担が軽減される】をご参照ください

この軽減策では、運営指導における確認書類の効率的活用が示されています
今後の運営指導時において、各自治体は以下のような対応をするものと思われます

  • 確認する書類等は、原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類等とする(保存期間が定まっている書類の保存期間中は、確認されることがあります)

  • 行政側が既に保有している書類等については、再提出を求めない

  • 資料や文書の提出を求める際、重複して提出を求めない

  • 既提出の書類等(提出済の内容に変更がない書類等)の再提出は不要

  • パソコンなどのICTで書類等を管理している場合は、画面上で書類等を確認する


最後に

私は前職が公務員でした
在職中は、定期・不定期の部内検査や監査を受け、その検査や監査を担当したことが何度もあります

その経験から言えることが2つあります


1.書類は相互にリンクしている

確認する側の人が何かを知りたくて、複数の書類を確認してみると、書類同士でつじつまが合わないことがあります

業務等の経緯や結果が適切・正確に記入されていれば、全ての書類の内容は、どの組み合わせでもつじつまが合う状態=相互リンクの関係にあります

例えば・・・
従業者の勤務に関し、就労規則、運営規則、従業者の出勤簿やタイムカード、勤務体制一覧表、運営指導の事前提出資料などは、相互にリンクしており、つじつまが合っているはずです(合ってなければなりません)

従業者Aさんの実際の勤務時間・日数は、出勤簿などに記録されています
それは、就業規則に基づいて勤務されているはずです
その結果、運営規則の規定を受けて、常勤・非常勤が定まります
常勤・非常勤の人数などは、勤務態勢一覧表や事前提出資料に記載します
以上のどれかに間違いがあると、つじつまが合わなくなります

法令や規則を十分に理解し、日頃からしっかりと記録・記入され、正しく処理されていれば、そんなことは起こらないでしょう
よって、書類が多く、手間がかかっても、やるべきことは正確・確実・地道にやることが大切です
また、関連する書類相互につじつまが合うのかどうかの点検も必要です

更には、書類作成などの業務を少ない人員で効率的に行えるよう、業務手順の見直しやICTの活用などが必要になるかと思います


2.運営指導は絶好の機会

運営指導を受けることは、事業運営にとって絶好の機会となります
何が絶好の機会かというと・・・

  • 知らなかったこと・間違っていたことが分かる

  • 不備や不具合が大きな問題になる前に是正できる

  • 業務の効率化と職場環境の改善に反映できる

例えば、運営指導の準備を進める中で、不備を見つけることがあります
また、運営指導で行政職員から指摘や指導を受ける場合があります
これらは、大きな気づきとなります

気づいた後は、それがどうして生起したのかを分析することになります
この際、"誰がやらかした" ではなく、"なぜそうなったのか" を追求します
・法令などを読み間違っていなかったか
・業務手順に間違いがなかったか・間違うような手順だったか
・なぜ、再確認や是正の仕組みが機能しなかったのか ・・・・など

その分析結果を受けて、次のような活動が展開されます

  • 気づいた不備や指摘事項の是正

  • 手順の見直しや再構築

  • 再発防止策としての業務の効率化や省力化

  • 全従業者に対する普及と浸透  ・・・など

このような流れで物事を進めることができれば、事業運営をより良くすることができます

気づきという始まりがなければ、より良くするという結果はありません
その意味で、運営指導を受けることは、事業運営にとって絶好の機会だと言えます


3.最後の最後に

運営指導を受けることは、怖いものでも、面倒なことでもあります
でも、その結果で得られることは、最終的に利用者さんや自分らのためになります
そのことを考えて、前向きに準備・対応するようにしましょう

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