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その日暮らしの人類学

昔から、「計画」というのが苦手だった。
夏休みの宿題は最初と最後の1週間ずつしかやらなかったし、月1更新と決めたこのブログも31日の今日、22時を回ってようやく書き始めている。

「将来の夢」みたいな作文を書くのも苦手だった。将来のことなんて全くピンとこない。保育園のころ流行っていた「ポケモンごっこ」では、必ずメタモンの役をやっていた。その瞬間瞬間でいちばんなりたいポケモンにいつでも変身できるからだ。

今月は、文化人類学者の小川先生による、タンザニア人たちの価値観を描いた著書「その日暮らしの人類学」を読んだ。
彼らの生き方について、「living for today」「その日暮らし」という切り口で語られている。

彼らは日本人の我々と違って定職につくということがあまりないという。
知識や技能を累積的に高めて行って長期的なキャリアを形成したり、将来の開業を目指して計画的に資金を貯めるようなことをせず、その代わりに「今可能な行為には何にでも挑戦すること、そのためには常に新たな機会に身を開いておき、好機を捉えて、今この時の自分自身の持っている資源を賭けていく」というのが彼らの哲学だ。

彼らのような「living for today」の究極の例として、ダニエル・L・エヴェレットの著書「ピダハン」の内容も引用されている。
アマゾンの奥地に住むピダハンという民族の人々は、狩猟採集で生活をしており、著者のエヴェレットが農業を教えようとしてもあまり積極的に覚えようとしない。それどころかせっかく買ったクワを川に投げ捨ててしまう。
「食べ物を蓄える」ということもあまりせず、今日食べるご飯が全くない状態なのにも関わらず、その状態で3日3晩踊り続けたりする。

「計画」が苦手な私にとって、彼らのような「living for today」の生き方に共感でき、ある種憧れる部分もあるが、羨ましがってはいられないところもある。WHOの平均寿命ランキングで、タンザニアは194カ国中155番目、61.5歳、ピダハンたちの平均寿命は45歳という。

多くの若者にとって、この生き方に限界がくる「老後」は備えるものではなく、無事に到来することを祈るものである。

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将来のキャリアプランや、老後の生活のことに頭を悩ませられるのは贅沢なことなのかもしれない。

一方で、著者の小川先生は、いくら日本で過ごしていても非正規雇用の拡大や東日本大震災など、将来が予測不能なことに変わりはなく、「人間は皆living for today」であると指摘している。

明日どうなるかわからないといったゾワゾワを封じるために、社会全体で今の延長線上に未来を計画的・合理的に配置し、未来のために現在を生きることがまるで義務であるかのように生きている。

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「未来のため」というのも大事なのは間違いないが、「今この瞬間」にエネルギーを注ぐことを忘れないようにしたい。
有言実行の1歩目として、なんとか日付が変わる前に書き終わったのも褒めてほしい。
嘘。月1程度のブログを計画的に書けない人より計画的書ける人の方が絶対にエラい。

living for todayの世界に引き摺り込まれるハチワンダイバーこと菅田

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