この時期にありがちな怖い話part1

最初に断言するが、自分は霊的なものを一切信じていない。
自分自身に起こり得る不可思議な出来事は白昼夢の類だと思っている
だが他人が感じたものまでは否定するつもりはない、その人の世界ではそれは心霊現象なのだから

これから3つの話をしようと思う
心霊スポット巡りが 好きだった 友人が実際に体験した話
地元の人にはそこそこ有名なので自分もその場所は知っている
心霊スポットとされている場所は、立ち入ると罪に問われる場合もあるので
この話はよくできたフィクションだと思って欲しい


『とある町の家』
心霊スポットといえば、そこで誰かが亡くなったりだとか事件事故が起こった場所と相場が決まっているが、ここは直接は関係のないちょっと変わった所だった

出発したのは午前1時、友人たち四人が乗った車は走り出す
所要時間は一時間半ほど
時間も時間だが、目的地に近付くほどに街灯の数が減り民家も減り
あと五分で到着という距離で道中全ての明かりがなくなった。
夜道を照らすのはヘッドライトのみ
廃れた町と暗闇、そして浮かび上がる一軒の家
今から他人の家に侵入しようと言うのだ、通報されないように一度家の前を通り過ぎ少し離れたところで停めて置ける場所を探す
探索が二人、家の前での見張りが一人、一人が車を動かせるように車内で待機
じゃんけんの結果、友人は探索側になったそうだ
この時、車内待機になった人が独りは怖すぎて嫌だとかなり抗議したらしいがそこは公平なじゃんけんだ、従うほかない
明かりのない午前2時半
望遠鏡を担いで踏切へ行くにも少し遅い時間だ、エンジンも止めた真っ暗な車内で待つ恐怖は想像に難くない

三人は足取りを共にして家へと向かう
スマートフォンのライトだけでは自分達の足元を照らすのが精一杯で、次は懐中電灯を持って来ようと決意した

暗闇というのは恐怖心を駆り立てるのか、家の前に立っているだけで異様な雰囲気に飲み込まれそうになる
見張りを一人残し、此方からどうぞと言わんばかりに割られている窓から二人は家に入った
部屋を見渡すと異様な光景で、空き巣が入ったというよりも玩具箱をひっくり返したように様々な物が散乱していた
足の折れたテーブル、引き裂かれたソファ、穴の空いた壁
自分達と同じく遊び半分でここに来た人が壊したと思われるが
怨念とはまた別の、人々の嘲笑や悪意がこもっている空間に思えた

各部屋で写真を数枚撮り、一階は何事もなく探索を終えたので階段で上階へと向かう
一歩進むごとに軋む階段が恐怖を倍増させる
二階の部屋は二つあり片方ずつ見て行こうと声を掛け合う
最初の部屋も一階と同様に家具等が荒らされていたがそれぐらいで特に何かを感じることもなかった

残る部屋は一つ
そちらは部屋に入る前から少し異質であった
部屋の手前、ガムを踏んだような少し粘り気のある足元と独特の臭い

ドアノブに手をかけて、ゆっくり、ゆっくりと扉を開いた


その瞬間

バタバタバタバタバタバタッ
と羽音のようなものが聞こえ黒い物体が眼前を飛び交う
キィキィキィとも小さく聞こえる

一気にパニックになり身体が硬直した
思わず呼吸が止まるが、そのおかげで脳は冷静を取り戻す
目の前のソレがコウモリだと気付いた
近くにあった棒切れを軽く振りあしらう

大半が窓から飛び去り部屋に平穏が戻った頃
「あっ…」という小さな声と共に視界からもう一人が消えた



よくギャグ漫画で見たことがあるのではないだろうか
壁や床にめり込む人の姿を

誰も住んでいない家、老朽化は進んでいる上に
遊び半分で侵入した人たちに様々な場所を壊される
床も穴が空いて当然だ

床下の土台の部分になっている梁にちょうど股が引っ掛かり、なんとか一階までは落ちずに済んだが
本人は急に床がなくなった感覚と股間に響く鈍痛で声を鳴らない声を上げていた

痛みが落ち着いた頃、手を貸し穴から引き上げると
顔を見合わせて無言で頷いた後、二人で家を出た

車の方へと戻り、窓を何回かノックする
車内に残っていた人はそのノック音で驚き、身体が飛び跳ね
手が当たってしまったのかあたりに「プーッ」と短くクラクションが響いた

その頃には空も白み出していて
車内で驚かされたのを根に持つ男
見張りだけでつまらないと文句を言う男
コウモリの糞で服が汚れ股間を強打したことで終始無言だった男
穴に落ちた先輩を動画に収めてご満悦だった男

様々な思いを乗せた車は帰路へと着いた


to be continued…


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