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茶飲みともだち

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男女の友情はある説。友達以上でも以下でもないスナとミイの、10歳からはじまる短くて長い物語。【一話(前・後編)完結形式/不定期更新】
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#小学生時代

1980:最強戦士の休息ココア[前編]

(連作短編「茶飲みともだち」#01)  市役所勤めの父とスーパーでパートをしている母、五歳年下の妹というごくごく平凡な団地住まいの我が家にとって、金髪の若いシングルマザーはかなりのインパクトがあった。 「隣に越してきた渋谷です。栄町の美容院で働いておりますので、お気軽にいらしてください。あと、よろしければこれ、どうぞ」  派手な風貌は美容師だからかと納得した僕の母は、都会でしか手に入らない箱菓子に気を良くし、「砂川です。こちらこそよろしくおねがいしますね」と、手放しで歓迎し

1980:最強戦士の休息ココア[後編]

(連作短編「茶飲みともだち」#02)  朝、なんとなく一緒に登校するようになった。  いつも渋谷トモミが早く、僕が遅く家をでていたのだが、どちらからともなく時間をずらすようになり、やがてお互いの距離が百メートルという僅差にまでなった。そうして、肌寒い日が増えてきたころ、とうとうお互いが並ぶ時間差になった。 「……うす」  無言もおかしいので、なんとなく挨拶をする。 「うす」  渋谷トモミはにこりともせず、ミントの香りを漂わせるガムを噛みながら言った。  へんなやつだ。辛くて