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SHAKILAMO!忘備録⑥

万能戦士!シュン・ペイペイ到来

突然だが初期メンバー、ギターOが脱退した。

まぁ何となく察してはいた。家庭の事情だ。親の介護や、身内のコロナに対する恐怖心など、わりと早い段階からそういった都合でスタジオや予定していた日に来れずにいた。が、報告はあまりにも突然だ、なんせライブの1週間前。このバンドは人が突然辞めていくな。でもOの場合はマジでしょうがない理由でやむ無くって感じだった。それにどのみち県外に拠点を移すという話になれば、そうした事情で脱退の話になってたと思う。遅かれ早かれだった。ただ、しゅーちょーの中では違った。Oは、しゅーちょーと同じ町内でメッチャ地元の先輩だ。遠征からの帰り道も、O所有の機材車で俺とベースSを送迎した後、2人で帰路に着くのが常だった。しかもそれは前身バンドの時から。なんとなく2人の間で地元ノリ的な、他とは違うグルーヴがあった。Oから脱退の相談を受けた夜、すぐにしゅーちょーを呼び出し、寒空の中、俺のオンボロ軽自動車の中で話した。

わい「……って感じで、Oが辞めるって」
しゅーちょー「うわ…マジかよぉ…」
わい「ツアーも誘ってもらえて、名古屋でチャンスもできたばっかで…ギターなし、コロナも大変って感じやん…お前どうする?続けたい?」
しゅーちょー「……ちょっと1人にさせてもらっていいっすか?考えたくて…」
わい「…かまんで。オレ外出とくな」
しゅーちょー「すんません…」

…オレの車なのに?

オレが寒空の外???

「この場合はお前が外に出るのが普通では」というツッコミを押し殺した。珍しくしゅーちょーが神妙な面構えだったので、うっかり自ら寒空の下に送り出されてしまった。俺はとりあえずタバコに火を付け、返事を待った。ぼちぼち2本目に火をつけようか迷った頃、しゅーちょーが出てきた。わりと早くて助かった。彼のテンション的に、明け方まで寒空の中待ちぼうけを覚悟していた。彼の答えは「やるしかない」だった。よかった…しゅーちょーさえ気持ちが固まればあとは問題ない。続けてベースSに連絡した。

S「まぁOさん抜けてもやる事は変わらないですからねぇ」

だそうだ。ちょっとは変わってくれ。俺の仕事やってくれ。まぁいい、Sはそう言うと思っていた。改めて全員腹を括り直し、Oの脱退処理はつつがなく行われた。

俺らは当面サポートギターを立てての活動となる。コロナ禍で?香川県で?サポート??見つかるか????そんな事言ってても仕方ない。県外勢からのオファー、maimaiの協力、やっと掴んだチャンスをここで逃すわけにいかない。早速サポートメンバー探しを始めた。しかし、思いつく限り当たってみたが、日程や技術的に難しい人が多く、またコロナ禍という事もあり続々断られた。まあ分かっていた事だ。俺はめげずに連絡しまくった。とある後輩アーティストに相談を持ちかける

後輩「ギターっすか…あ、今多分しゅんぺーさんヒマしてますよ」
わい「え?しゅんぺー?あいつ音楽やめて実家継いでるやろ?」
後輩「いや、あの人結構前に仕事辞めて、今フリーでエンジニアしようと動いてますよ…多分。」

は?願ったり叶ったりなんだが????

そんな奇跡あるか?しゅんぺーに慌てて連絡した。

わい「お疲れ!」
しゅんぺー「お疲れ〜久しぶり」
わい「しゅんぺー、いま仕事辞めてフリーなん?!」
しゅんぺー「おぉ、そうやけど。どした?」
わい「マジかよ!待たせたな!!お前の席あるぞ!!!

まずは"しゅんぺー"と俺の話をしよう。彼はかつて、ギターボーカル兼リーダーで、ゴリゴリのロキノン系バンドをやっていた。ざっくり言うと、バンプとかラッドみたいなヤツ。

かつてのしゅんぺーバンド

俺は当時、バンドの右も左も分からないまま、誘われた流れとバイブスのみで前身バンドのキーボードをやっていた。

かつてのわい。バイブスだけにもほどある。

彼との出会いは新鮮だった。技術も乏しく、とにかく勢いだけで演奏する雑な俺と裏腹に、小難しくも繊細な音楽を作るイケボ(イケてるボーカル)な彼を見て「カッケぇーー!!!」と思っていた。しかも同い年と知り、更に感動した「タメなん?!スゲー!!」また彼も鍵盤が弾ける俺に興味を示し、一見正反対な2人はすぐに意気投合し、対バンしたり、飯食いに行ったり、俺は音楽を通して初めてできた貴重な友人として、親交を深めていた。時が経ち彼のバンドは一身上の都合により解散する。フリーになった彼は、ギタリストとして俺が所属していた前身バンドに加入する。

当時のわいとしゅんぺー

一緒に音楽できる!と喜んでいたのも束の間、今度は俺がその前身バンドを辞める事になる。前記事の、自分がボーカルのバンドをやる為だ。一度袂を分つが、さらに時が経ち、俺は前身バンドにカムバックする。だが今度はしゅんぺーが実家の家業を継ぐことになり、前身バンドを辞めるのだ。要は付き合ったり別れたりするカップルと同じだ。お互いやりたい気持ちはあったが、タイミングブスすぎて叶わずにいた。

あの時の伏線がここに来て大回収できる!!!前述した「お前の席あるぞ」に至ったわけだ。

しゅんぺーに想いを伝えると

しゅんぺー「いやぁ…何ともオレはタイミングよく…持ってるんやなあ…」

なんかうるせえなコイツやっぱ断ろうかな

だが彼には不安もあった

しゅんぺー「状況は大体把握した…でも、長いこと現場に立ってないけん、やれるかどうかマジで不安やで」
わい「大丈夫!!俺がサポートするから!なんとかする!力貸してくれ!あと、エンジニア志望つってたよな?」
しゅんぺー「おお、そやで」
わい「…レコーディングとか、お願いできる??

始まりました、おいでやすの十八番「無茶振り」。だってエンジニア志望なら実績必要やん。じゃあウチの曲やりましたって言えるし、ギターが弾けるならそれも聴かせれるし、ウチの看板で仕事も取りに行けるしで一石二鳥どころか三鳥四鳥すぎん?と、それっぽい御宅を並べ、なんとかしゅんぺーを懐柔した。

しゅんぺー「色々不安やけどヤスくんからせっかく頂いた話やし、何とか形に出来るようにしてみるわ」

っしゃあああああ!!!歌える(イケボ)・曲作れる・RECできる・顔シュッとした同い年入ったぁぁあああああ!!!メッチャレベルアップした!!!デカい!!これはデカいぞ!!!!や、なんかごめんO!!!今までありがとうO!!!!!これからよろしくしゅんぺええええ!!!!!

俺はこの時すでにサポートメンバーに歌わせようとしていた。以前から複数名で歌う構想はあった。オレンジレンジみたいな。だがOもSも歌が上手くなかったので、やむ無くしゅーちょーと俺のツインボーカルだった。甲高いのと低いしゃがれ声。ちょうどいいイケボが欲しい。そうすればポップス曲も出せる。しゅんぺーが正式に入れば、足りないピースがキレーにハマる…。とにかく一度試したい!(クソデカ大声)。

だが一つ懸念があった。しゅんペーはそもそもエンジニア志望だ。あまり表に立ちたくなさそうな雰囲気だった。とは言え俺らには時間も何もない。彼も同じだった。諸々不安要素もあるが、とにかくしゅんぺーと共にステージに上がれる喜びと、レベルアップしたチームの妄想で俺の頭はいっぱいだ。様子見も含め、まずはサポートギターとして彼を迎え入れる事となった。

大改革!新チームSHAKILAMO!

こうして新年早々、新生SHAKILAMO!の誕生である。2021年一発目の作品がこちら

実はしゅんぺーに撮影してもらった。そしてこの楽曲から今まで、ほぼ全てのREC・MIX・マスタリングをしゅんぺーが担当している。メンバーにレコーディングに関する知識を持ってる者がいる事がどれほど貴重か。まずスタジオに行ってレコーディングエンジニアの予定を抑える必要がなくなる。常に連絡を取り合っているので「あ、今日録りたい」みたいな時、システムさえあればいつでもREC出来るようになった。彼が音を作り俺が動画を作る。俺の理想とする「即作って即出す」が、俺としゅんぺータッグで可能となった。

出張簡易型レコーディングシステム

そんなサポートメンバーしゅんぺー改め"シュン・ペイペイ"初登場となるMVがこちら

いかにもペイペイのイケボにマッチした美メロなサビだ。こんなに綺麗なメロディなのに、オレのしゃがれ声からスタートすると途端に台無しになってしまう。かといってしゅーちょーの声だとキャラボイスすぎる。ペイペイ投入により、この手の作品がちょうどよく収まるようになる。

ここから一気に、俺・ペイペイ・しゅーちょーのトリプルボーカルスタイルに舵を切った。行事イベント系の曲やポップスに寄せた曲は、年1で必ずお披露目する事になるので、ペイペイのJ-POPイケボを積極的に起用した。

ペイペイがサポート加入して以来、チームの音楽的なシステムが大きく変わっていった。同期システムもその一つだ。 

同期システム

同期システムとは、ライブで演奏する楽器の音以外をPCからカラオケ音源として流すものだ。だが結成当初は、機械に詳しい奴が誰一人おらず、しゅーちょーがオススメされて買って来た謎のバカデカいメカみたいなもので流そうとして、初の遠征ライブですぐ壊れた。それ以降、同期を使うのは諦めていた(諦めるな)。めっちゃアナログな原始人SHAKILAMO!に、ペイペイという文明の利器が入って来た。

しかし、そんな彼も良い面ばかりじゃない。後にじわじわと分かって来た事だが、彼はそもそも人のスペックがバンドマンとして向いていない(ドーン)。先にフォローするが、あくまで「バンドマン」としてだ。音楽家としては、作品に対する情熱も知識もある。バンドマンはタフさも要求される。彼は家業を離れ、約1年ほど隠居生活を満喫していたらしく、著しく体力が低下していた。色々と保たない。そして彼はチームプレーが大の苦手だ。一度遠征で宿泊の際に、大部屋で全員で寝る事があったが、全員のいびきがうるさすぎてしゅんぺーは玄関で寝ていた。倒れて死んでんのかと思って叫んだ。まあ俺らのいびきも大概なのだが、それくらい人と一緒に寝れない。ペースを崩されると機嫌を悪くする彼に、しゅーちょーは序盤キレてた。彼は彼で鬼マイペースなので人のこと言えないけど。体力もないのでライブ月3本が限界と言ってたと思う。「ナメるな」と言いたい所だが、コロナ禍で実際そんなに大してライブ出来てなかったので「OKOK★」と当時はテキトーに返事してたはず。状況に慣れれば変わるだろうし、あまり大事に捉えてなかった。まあでも、別に悪い奴じゃないし、彼は欠点を上回る以上のスペックの持ち主だ、大した問題ではない。何よりこんなところで彼の才能を腐らせるわけにいかない。またしても俺は訳のわかない使命感に燃えていた。コイツの才能を枯らすわけにいかん。俺がしゅんぺーを救うんや(キラーン)

とは言え、もう1人の強力な助っ人により、しゅんぺーの不安は序盤で現実となる。

四肢炸裂!怒涛のライブラッシュ!

1月に「お正月のうた」をアップしたにも関わらず、コロナは依然猛威を振るう。年明けすぐに、政府は緊急事態宣言を発令した。

この時すでに、maimaiとアルバムの構想やリリース日の日程、今後のツアーをどう打ち出すかなど、年次のスケジュールを組み立てていた。無論、今後もこのように、コロナでタイミングを無下にされる可能性があるので、色んなパターンを想定して準備を進めた。彼女の土壇場の対応力で何とか止まる事なくコロナ禍を走り切れたが、それがなかったらと思うとゾッとする…。

我々は、前述した通りmiamaiの指定するライブに全て出演した。まずはライブハウスを中心に活動する、いわゆる”ロック系アイドル”のイベントに出て名前を知ってもらっていく。

初めて界隈にお目見えとなったイベント
マジでコロナ禍なん?っていう光景に驚いてた

突然だがヲタクは良い
ヲタクは超楽しい

知らない曲やアーティストでも、楽しいと思えば乗ってくれるし、一緒に歌ったり踊ったり、とにかく現場を盛り上げてくれる。一方コチラも生粋のお祭りバンドだ。ヲタクのパワーは俺らのパフォーマンスを増長し、相乗効果で熱を帯び面白さは増す。彼らの中にはバンドファンも多く「おもろいバンドが出て来てくれて嬉しい!」と、俺らを嬉々として受け入れてくれた。あと彼らはプロレスも上手い。俺が「お前らの推しは俺のもの!!」など軽口を叩いても「うるせえぞおいでやす!」とすぐさまガヤを飛ばしてくる。「黙れボケ共が!!」などと返し一連の口喧嘩をエンタメとして昇華してくれる。MCではメンバー同士でイジり合うのが本筋だが、なんせ当時のメンバーは俺以外が人畜無害なのであまり表立って発言しない。ペイペイも当時はサポート、悪態つけるのはしゅーちょーくらいだが、彼は俺の背後にいるので演奏の都合上なかなか手が出しにくい。俺はイジられる方が輝くのに、身内からイジってもらえずやきもきしていたので、ヲタクとの掛け合いは心地よかった。一緒にエンタメを作ってる気分だ。「シャキラモって言うアツくておもろいバンドがおる」アイドルヲタク達の力によりSHAKILAMO!の名前は、界隈にすぐさま拡散された。

エンタメであれ、ディスると言うことはディスられる覚悟がいる。分かっていたが当初は結構緊張した。突然違う畑から無名のバンドが意気揚々と自分達の土地で好き勝手やるわけだ。それなりに嫌われる覚悟を持って発言した。俺は尖ってるくせに人に嫌われたくない、なんとも厄介な性格だ。「いつも通りで大丈夫だから」とmaimaiに言われたが、いつも通りでいれるわけない。当時、俺の無礼な言動を快く受け入れ、一緒におもしろがってくれたヲタクら、マジ感謝。

ここからアイドルとのツーマンライブシリーズに移行する。俺たちは年間通して色んなアイドルちゃんやガールズバンドと対バンし、ただライブするだけでなく、彼女らの曲を積極的にカバーしコラボした。

いずれ愛成来来に振り回されるとは、この時まだ誰も知らない。

後にMVに出てもらったり、楽曲提供のお仕事に繋がったり、イケてない田舎者集団だった俺たちの世界を大きく変えてくれた。アイドルちゃんにマジ感謝。

もちろんガールズ系のイベントに限らず、バンドイベントにも積極的に顔を出した。まずは名古屋の界隈に知ってもらう。アイドルだろうとバンドだろうと、どの現場でも俺達は叩き上げのエンタメバンドである事を、色んな現場でアピールした。

maimai「今後私の企画だけじゃなく、オファーされるイベントも考えると、ライブ本数がここからどんどん増えると思うんですけど…体調とか金銭面とか、大丈夫ですか?」
わい「大丈夫です!増えるのマジ嬉しいです!楽しみヒャっフウ!!」

こちとら何年も人知れず苦渋を飲んできた。コロナ禍でどこに行っても客足はなく、誰にもハマらず、肩落とし地元に帰れば「お前らのやり方が嫌いだ」とディスられた事もある。「本当にこのやり方で合ってるのか?」自問自答を続け、今にも折れそうな所で掴んだ一筋の光。絶対1ミリたりともムダにしたくない。俺は必死だった。

まぁ、口で言うのは簡単だがこれがマジで大変だった。ライブの演出をイベント内容によって考え、事前に小道具など用意したり、アイドルの楽曲を必要に応じてアレンジしながら覚え、ダンスも踊ったり。アイドルイベントを体験した事もなかったので、彼女達を取り巻くシーンを躍起に勉強した。もちろんアイドルに限らずバンド界隈も同じく手を抜かない。前述したトレンドリサーチや新曲制作も欠かさず行った。しゅんぺーは月3本のライブ目標を早々に諦めた。

ペイペイ「ヤスがやるって言うたらやるんやけん…やるしかないでないか(クソデカため息)」

さすが我が友、話が早い(雑)。現場に行けば自分達の本番まで、maimaiが色んな人を紹介してくれる。顔を広げる活動はライブだけじゃない。イベンターや運営に限らず、他バンドを見に来たエンジニアやDJ、飲食店の人達など、多種多様な人を一気に紹介される。一度のイベントで何回挨拶したか分からない。「大変だけどお客さんの名前も覚えてくださいね。分ってると思うけど、今来てくれる人を大事に出来ないとどれだけ名前が上がっても売れませんから」分ってはいるが、残念ながら俺は物忘れが激しい。家族の誕生日すらろくに覚えてない。すでに頭の中がモンタージュみたいになってる。出会ったみんなの顔と名前を必死で覚えた。

モンタージュ。当時のわいの頭の中

コロナ対策・新たな環境への対応・楽曲、動画制作。これら全てを同時並行で行わなければならない。息つく暇もなかった。置いてかれないよう必死に食らい付いた。なんだか、一瞬でも気を抜けば濁流に飲まれて死んでしまうような、時速20kmで流れるプールを逆走し爆泳ぎする、範馬勇次郎の気持ちだった。誰が分かんねん。

範馬刃牙の父、勇次郎

激動のライブラッシュ、日に日に変わるコロナ禍、目まぐるしく変わる状況の中、とにかく目の前の事を一生懸命こなし、ピンチをチャンスに!の気持ちで猛進している中、maimaiから悪い知らせが来る

実は私、ライブハウス辞めるんです

我々は絶句した。


今日はここまで!新たな仲間"シュン・ペイペイ"と"maimai"の協力により、いきなりパワーアップしたと思ったら、突然maimaiからライブハウス辞職を告げられてしまう…。

一体どうする!?どうなるシャキラモチーム!
次回お楽しみに!

次回予告
裏ボス!新メンバー加入秘話!
苛烈!怒涛のライブラッシュPart.2
祝継続!運命の4年目へ

予告ほぼネタバレで草

ほなまたっ!!

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