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『踊り』を伝えるムズカシサ。

『踊る』を人に伝える手法は様々ですが、一番僕の中で身近であった手法は、ダンススタジオ等のクラスで所謂インストラクターとして、踊りを習いたいと思ってくれている生徒の皆さんにレッスンをする。
という行為が今もっとも多く行っている踊りを伝えるなのですが。

その時に僕は何を自分の理想にしているかというと、『踊り』の前に、全ての生徒を平等に立たせる。って事をしたいんですね。
これは「みんな平等だぜ!」っというきれいごとではなく、みんなが踊りと自分に矢印をもって欲しいって事なんです。もっと言うと、自分の中に早く『踊り』を取り入れて、自分に矢印を向けて自分と付き合っていて欲しいわけです。

外に矢印が向いているうちは、どうしても「踊っている自分を外はどう見るか?」「踊っている自分は格好がいいのか?」「踊りについて悩んでいる自分は先生にどう映るか?」「あの人は何であんなに踊りの仕事があるのか?」「あの人はなんであんな態度でレッスンにいるのか?」などという、
もったいない思考に陥っておそらく本当の『踊り』の魅力に気が付けないんです。

だから僕は極力、踊りと誰かの間に入りたくない。
しかし、喋る男ですから...
気になるのかもそれませんが、極力『踊る』をいろいろな手法で皆さんに伝える事が役目だと思っているんです。

高校時代、実家の家計が著しく大変だった時にも、母親は親せきに頭を下げて、僕がダンスを習い、ダンスの発表会に出演する事を守ってくれた。
おかげで僕は、沢山『踊り』に力をもらって、誰かと踊った思い出ではなく、踊りと過ごした思い出が、今の僕を守ってくれている。
僕にとって踊りって誰かと行う事ではなく、踊りと過ごす事だったんですね。

今でもそうです。踊っているから出会った人、出会った出来事、考えられた事。

でも踊りでなくともそうですよね。
それぞれの人生で何かを自分で選択するからこそ、そこにワクワク出来るんです。
外に矢印を向けずに、自分の矢印を向けて、判断、決断、ガッカリ、ワクワク。それがたまたま僕は『踊る』判断をしたので、『踊る』と共に生活して、その中でワクワクしているわけなんです。

話がそれましたが、だから僕は皆さんにも純粋に踊りに出会ってほしいのです。
しかしなかなか難しい。
人が集まってレッスンを受けるともちろん色々な事があるでしょう。
好きとか、嫌い、から始まって。色々な感情がうずうずするんでしょう。
僕だって普段はありますよ。
でもやはり、踊りに救われてますから、踊りの前ではしゃんとしてたい。
そういつも思っています。

以前、僕の作品の演出助手をやってくれている久世という男に、「くまちゃんは、普段はめんどくさいひねくれた奴なのに、舞台で踊っているところを観ると、こいつ実は良い奴なんちゃうかな?と思ってしまう。」と言ってましたが、それこそが僕にとっての「踊りと過ごす」なんだと思います。
踊りは僕の15歳から41歳までの人生を全部見ていますから、そこで格好をつけたり、ひねくれたりしていてもどうしようもないわけなんです。

僕が伝えたい『踊る』ってそういう事なんです。
そしてそういう『踊る』しか伝えられないんですね。

なのでなんとかそれを伝えたい。そう思い続けてきたし、最近また一段とその気持ちが強く自分で確認できるんです。
だから難しいのですね。
これは誰が悪いとか、どこが悪いという話でなく、
根本的に人間が「踊る」に向き合う難しさの話なのですが、隣に人がいたら気になるでしょ、前にいる人が気に食わないと気になるでしょ。
でもそれやってたら『踊り』が見えてこないんですよね。
もったいないんです。
ダンススタジオでレッスンをさせてもらっている僕が、こんなこと言うのもなんですが、気になることが多くて、「踊り」と向き合えないのなら、レッスンに行かない。という選択も踊りと向き合うきっかけになると思うんです。

そうして『踊り』と『自分』との間にノイズが入らない状況で向き合って、自分に『踊り』を取り込む事が出来たら、またその自分のを連れてレッスンに行ってみたらいい。
きっとまったく景色が変わるはず。

自分に矢印を向けるということは所謂『自立』と言う事なんでしょうか。
『踊る』ってわりと色々な人たちから依存されやすいように思うんですが、
本当にやめた方がいいですよ。
一つも良い事が起こらない...
そこに付随するマイナスな思考とか、思い出などが、結局自分の『踊る』を濁らせて行くんですね。
そんな悲しい事はさせたくないと思いながら、『踊り』を伝えているわけですが、それはあくまでも僕の個人的な思いなので、そんな事を叫びながらレッスンをするわけにもいきません(笑)

僕がもっと無地になって『踊り』と『みなさん』を繋ぐことが出来たら良いのかな?とも思ったりしますが、これまた難しい(笑)。
41年間も熊谷拓明をやってますから。なかなか難しい。

ただこういう場で、こういう思いを伝える事は出来る。
今までもやってきましたが、これからも。
そしてこれからはもっと。
と言う事なのでしょう。

僕が思う『踊る』って体を動かすことだけじゃないので、いろいろ伝えられるはずなんです。
理屈っぽく聞こえるかもしれませんが、文章を書く事も、踊る事だし、
話をする事だって踊る事なんです。
動詞ではなく、定義ですから今となっては。

去年は色々な事が出来なくなった事で、色々な事を始められました。

文章も書いたし、映像も作り続けた、ラジオみたいな事もした、
それら全てを毎月まとめて、このnoteを使ってさぶすくマガジンも始めた。
そして舞台での公演もやらせて頂けた。

色々なタイミングが、色々な事と出会って今があります。

でもやはりはじめは、『踊る』に出会ったからなんですね。
だからやはりこれからも伝えていくんでしょう。
きっと今に体を動かしたくない人にも『踊る』を伝えられるはず。
そんな事を考える今日この頃。
レッスンで僕が伝えたい『踊り』を伝えるムズカシサはなくならず、
ここと向き合うのか、退くのか、そこは自分の人生を大切にしてみよう。
まだまだ伝えたいは尽きないのだから、きっと大丈夫。

ダンス劇作家/熊谷拓明

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