【コラム】真似る先に
2011年にアメリカから帰国してすぐに始めた作品作り。
それは脳裏に焼き付いている映画、舞台、映像、人物を僻みながら真似る日々だった。
大きな舞台に立ち続けたシルク・ドゥ・ソレイユな日々から戻った僕は、日本で自分が思う舞台表現を発表しようと意気込み作品を作り出した。
さぁ、何をやろうか。となると頭のなかに出てくるのはYouTubeなどで見ていたピナバウシュやピーピングトム の作品の中の光景だった。
その光景を僕の身体が再現しようとすると、もちろんそうはならなかったり、近かったり、お!だったりするのだが、昔からダンスの先生の踊る通りに踊る事が出来なかった僕は(もちろん同じように、踊りたいので努力したが)、
このような感覚に慣れていたので、がっかりしたり、落ち込んだりはしないのだ。
そうして出来た作品は非常に薄味で、面白そう。。。
ワクワクしそう。。。なものだったはず。
それでも僕は頭の中の光景や人物を羨んで真似て作品を作る事が好きで、ワクワクしていた。
そんな事を繰り返し、自分の作品でお客様の前に立っていると色々な自分の好みに気が付いて来て、それが必ずしもYouTubeで見かけた光景ではない事が出てくる。
おそらく作者としての自我みたいなものが出てくる時期なのだろう。作者青年期である。
作品作りは常に自我を恥じたり、誇らしく感じたりしながら形を変えてうねっていくし、出会う人によりこのうねりが迫力を増したりする。
今もまだまだうねっているのだ。
作品を多くの人に観て欲しいと思うと、広報活動をしたくなり。あんなインタビュー受けないなとか、あんな告知映像素敵だな。とやはり羨みと妬みが出てくるのです。
作品を作り小さな規模でも公演を行うようになると、他の公演の様子が気になるもので。
それが同じような年代の方々が作っているものでも、先輩達のものでも、もちろん自分より若い人達のものでも、作品そのものの前に、外からその公演がどう見えているか、どう扱われているか、まさに「様子」が気になった。
◯◯公演を演出する◯◯さんのインタビュー記事を見つけると、どうやったらここにインタビュー記事が載るんだろうと考える。僕の場合最初に思い付いたのは、自分でインタビュー記事を作る事だった。それっぽく自分をみせる作戦だ。
当時の共演者と居酒屋に行き作品について語ってもらい、
その様子を制作を手伝ってくれていたスタッフに写真を撮ってもらい、その後その内容を録音したテープを聴いて文字に起こして、共演者に校正してもらい記事を書いた。
居酒屋で語らってる写真と共に、つい最近まで使っていた自作のWebサイトに掲載してSNSでシェアしたらなんだかそれっぽくなるのだ。
相当な手間はかかるがそれがなんだか楽しかったし、ここで得られた「嬉しい」はインタビューを受けてどこかのサイトや雑誌に載る事の「嬉しい」とはあきらかに違うものだったが、「嬉しい」にはかわりなく。しかも文字お越しをするという経験値まで手に入れたのだった。
そんな事をしているといつしか、公演の情報を掲載してもらうためにはプレスリリースという方法があるらしいという情報を入手して、これまた自分で自分の作品の「売り」をまとめて情報サイトの担当の方に送るのだ。
そうして最初に公演情報を掲載してもらえた時はまたまた「嬉しい」のだ。そして今でも嬉しい。
その後、自作自演の対談記事を読んだ方が実際に取材してくださる事があったりと、随分遠回りした気はするがその分増す「嬉しい」と共に活動は続く。
真似た作品も、真似た広報活動も、それらはいつしか自分のやり方になり。そこに正しいやり方や作り方は存在しなくなる。
作品を作り続けていくと自分の中で少しずつ変化が訪れ、
前までは何処かの作品で見た光景しか描けなかったのが、
普段の生活で見た光景が作品に反映されるようになり。
身の回りで起こる出来事を自分の好みの納得のしかたで、自分なりに解決するようになっていた。
これはオリジナルになったというよりは、上手に真似出来なかった事達をなんだか許しているうちに、それらが生き生きとしだした印象がある。生き生きとしだしたパーツ達が自信をもってうねりだすと、外から見るとなにかを真似たようには見えなくなり、しかし僕の中では好きだった誰かの光景への愛もあり、そんなうねりの中でみる普段の光景もこれまた次へのパーツになっていくという現象なんだと思う。
そうして出来上がった作品にはやはり愛着が沸きますから、
誰かに見つけてもらうまで待ちましょう。なんてことは出来ず、やはり自ら騒ぐのだ。少しずつ他の方の話題に取り上げて頂く事が出て来たが、あの日文字お越しして記事を作った楽しさがまだまだ忘れられなく、過去の作品の上映会を企画したり、飲食店との共同企画を企てたりしていると、
さっさと創作に集中しなさいと言われるかもしれないが、それら全部に集中することが今の僕の「創作」になっいる自覚のもと、続いている。
このように、作品を作り、皆さん観てください!と先頭をきって叫んでまわるスタイルは、誰かと比べると遠回りで滑稽かもしれないが、この遠回りこそが「独自の道を行く」とまわりが格好よく表現してくれるポイントであり、僕にとっては憧れて妬いて追いかける道であってもそれが自分の歩く道なのでしょう。
ダンス劇作家
熊谷拓明
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