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【脚本】踊る楽語シリーズより。 『傾けると吉』
【踊る『楽語』】とは。
オリジナル落語風脚本を熊谷が執筆、上演。
脚本の『熊谷』の部分を座布団に座って演じ、物語の登場人物の台詞はそここら立ち上がり一人芝居踊りをする。
座布団と一人芝居踊りの行き来もまるで『踊り』のように見えるオリジナルジャンルである。
-あらすじ-
健康食品会社に勤める進藤まさるが、小料理屋居酒屋の若女将坂下はなこと交際を始めてから2年。
地元の友人達と酒をのみ、互いの近況を語り合うちに、進藤の些細な嫉妬が生んだ言葉がこの集まりの後味を苦いものにした夜。
1人店に残り飲み続けた進藤の話を聞き続けたたのが、女将の坂下はなこだった。
会社の同僚との人間関係、開発に携わっている新製品の話、はなこは進藤のどんな話しにも、あの日と変わらぬ表情で耳を傾けた。
そんなはなこの存在は進藤の、体の大部分を常に占めていた嫉妬や不安が外で溢れ出る事を寸前で防いでいたのだった。
しかし、しだいに進藤の発する空気が、はなこの表情を2年前とは違うものにゆっくりと変貌させてしまっていく。
自分の存在が、大切なものの在り方を変えていってしまう事に気付き始めた進藤は、それでもやはり耳を傾けるはなこに、不思議な怒りを覚えるようになってしまうのであった。
身勝手男と、一途な女将の、熊谷的恋愛成長劇である。
『傾けると吉』
熊谷『中野駅午後6時、まだまだ多種多様な生き方をしている人々の声と熱気が溢れかえり、自分では見当もつかない生き方をする人間がいるんだということを、目の前に広がる光景から感じながら、進藤まさるはそれから徐々に遠ざかり、中野サンモールを少し外れた路地に入った約束の店を探してい歩いていました。
突然現れた映画のセットのような袋小路をするっと抜けた所に現れる、小料理居酒屋【坂下】という暖簾に、進藤は無造作に頭を突っ込み、少しカタカタ音が鳴る引き戸を開けました。カラカラカラカラ。』
進藤※引き戸を開けながら
『ほほほほほ、久しぶりー。ごめん、若干迷ったわ。
(※女将からおしぼりを受け取りながら)生ください。 元気だった?今日は?仕事?そかそかそか。』
熊谷『この日進藤は、仕事を終えると、高校時代のいわゆる親友、本多太一と約1年ぶりに酒を飲むことになっておりまして、普段はなかなか入らない路地を入り、この店にやってきたわけであります。』
進藤※グラスを持って『おつかれ!』※一気にビールを飲み『ふーーーーー。』
本多『忙しそうだな。』
進藤『部署を移ったばっかりでなかなか落ち着かなくてな。。。久しぶりにこの時間から飲むなー』
本多『このさ、まだまだ青い空の下、こんな小料理屋でさ。。大人になったなおれら。。。。とっくに。。』
進藤『とっくに。。。上司といるとさまだまだ若いつもりだけど、31ってのはなかなかの大人だよ。20、2,3の子達とちゃんと話せてるつもりでも、あ!今おやじっぽかったか。。。。っておもうとビクビクするよな。。』
本多『わかる。おれなんてこの前さ、本多先輩、本多先輩って慕ってくれるやつらと飲んでてさ、みんなすげー熱心におれの話し聞いてくれるから、なんか気持ちよくて、 2次会まで行ってさ、でも流石にそろそろ疲れたなって思って先に帰ったんだよ。 でもタクシー乗る前に、店に携帯忘れたの思い出して店に戻ったらさ。。。。。
あいつらその日一番の盛り上がりみせてたわ。。。。
なんか申し訳ないことしたなーと思って。。。。
それ以来こわくて誘えない。』
進藤『はははは。まぁー、あるよな、そおいうことは、この年になると。』
熊谷『久々に仕事の話を離れ、気がしれた同学年の男同士、話が盛り上がらない訳はありません、しかし残念なことに2時間もすると仕事以外の話ではこれ以上話すことがなくなり、結局は互の仕事の話になってしまうは、このての集まりではよくあることでございまして、やはりこの、進藤と本多の場合も例外に漏れずなわけであります。
健康食品会社の開発部に務める進藤と、半年前に埼玉に2店舗目の洋風居酒屋をオープンさせたばかりの経営者本多。
最初は互の仕事の内容に興味を持ち、ふんふんほんほん、なるほど、なるほど、こちらは、これこれこーだの、なんだの話していた2人ですが、酒も入りそれぞれのストレスや、不満や、皮肉が混じり始め、会の雲行きがあやしくなってまいります。』
進藤『本多はさ、結局おまえさ、やりたかったモデル。。?だっけ?の仕事をしてみてさ、なんだか飽きたからって、今度は飲食店の経営を始めた訳だよね。。。
だったら今また色々、不満やら不安やらあんなら、また違うこと始めたらいいじゃんよ。』
本多『流石に、今はそーゆー訳にいかないだろうよ。。進藤だってさ、今の仕事に
熱いのは、会社のためか?顧客のためか?おまえのためか?おまえのためじゃないのか?おまえが納得して今の会社で働くためじゃないのか?
それを、俺ばっかりが客を無視して、自分の利益のためみたいな言い方してさ、よっぽどお客様のことを考えてますよ!利益ったてさ、従業員をさ預かってんだよこっちはさ。責任があんだよ!』
進藤『ほーーー。雇われの身の俺にはわからんな。経営者様の悩みはさ、レベルが違いすぎてな。』
本多『そういう言い方なんだよ!それ』
進藤『おまえだってさ、わかんないだろ?自分の方針じゃない方針に、時間も、体力も、熱意も、注いでさ、ぼろぼろだよこっちは!』
本多『お前だけがぼろぼろみたい言い方すんじゃねーよ!』
進藤『ぼろぼろ度合いが違うんだって言ってんだよ?まともに使われたことないくせによ、モデル?なんだそりゃ?え!!!!』
本多『わかりもしないでバカにすんなよ!モデルが楽なんか?経営者が楽なんか?!』
進藤『すぐそーやって、おまえにはわかんないってさ!ばかにすんじゃねーってんだよ!』
本多『おまえが、自分が一番大変だ、みたいな言い方するからだろ』
進藤『大変だよ!。。。。。おれが今世の中で一番大変だ!!!』
本多『勝手にしろよ!』※財布から金を出し、テーブルに置き立ち去る。
本多『ごちそうさまでした。』
熊谷『1人残された進藤は、もやもやを吐き出す相手もいなくなり、一人店のカウンターで、抜けない不健康なガスが充満したような顔で、すぐに帰るのも店に気まずく、まったく味のわからなくなってしまった焼酎をちびちび飲んでおりました。
10分ほどたったころ、カウンターに穴が開くのではないかと思われるほど、一点を見つめている進藤の狭い視界に、
程よくくたびれた白い手がすっと、グラスを運んで現れました。。。。
若女将、坂下はなこでございます。』
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