【#知床サス旅】一番魅力的なのは世界でも自然でも遺産でもなく“人”だった。
涙が溢れそうになるのを我慢しながら旅した1週間。
こんな旅は人生で初めてだった。
この旅に参加した理由
私は今年4月から鹿児島県の屋久島に移住し、地域おこし協力隊として活動している。応募時に提出した企画書の内容「里の魅力発掘・発信」が私の主なミッションだ。
屋久島は言わずも知れた世界自然遺産の島であり、屋久島と聞けば多くの人が「縄文杉」や「もののけの森」をイメージするだろう。
しかし、イメージばかりが先行し、スタンプラリー的に縄文杉を目指し、それだけを見て帰ってしまう人も少なくない。世界自然遺産エリアでだけ「自然を守らなきゃ」という格好をして、里に降りてきたら平気で道にゴミを捨てて帰る、なんて人もいるらしい。
それはきっと、その人たちにとって屋久島での時間が〈非日常〉であり、自分の暮らしとはかけ離れたもの、別のものとして認識されているからではないかと私は思う。
でももし、そこに住む〈人〉や〈暮らし〉、その土地の〈日常〉にまで触れることができれば、学びや喜びや感動や愛着なんかが芽生えたりして、住んでいる人も旅人もハッピー増し増しになるんじゃないかな~と思ったりする。
私自身そういう旅を求めているし、屋久島でもそういう旅を提案できるようになりたくて日々活動している。
そんなとき、同じ世界自然遺産の北海道・知床で〈世界自然遺産の日常〉をテーマにしたツアーが開催されることを知った。
まさしく私が求めていた旅。
さらに、現地に住む人(ローカルフレンド)と友達になって一緒に旅ができるという点に惹かれて、すぐに参加することを決めた。
クマには会わない。そう思えるまで
旅のはじまりは、メイン企画のひとつ「クマ活」だった。
最初ホームページで「クマ活」という文字を見た時は、クマに会いに行くプログラムだと思った。
でも実際は、クマに遭わないためにする活動で、私たちは地元の方々と一緒に笹薮の刈り取りをした。
▼詳しい内容や当日の様子はぜひこちらの記事を!
前日に事前レクチャーがあり、なぜクマ活が必要なのか、人とクマの共存にどんな課題があるのか、草刈りは何のためにするのかなどを学び、クマ活の意義を感じた。
みんなで汗を流しながら活動するのはとても楽しくて、心も身体も気持ちのいい時間だった。学びから、行動・実践して、より理解が深まったように感じていた。
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しかし私は翌日早朝、数人の参加者と共に、クマに遭遇できることを期待してドライブへ出かけた。朝方の車の通りが少ない時間帯の方が遭遇できる可能性があると聞いたからだ。
あんなに有意義な時間を過ごしたというのに、それでもまだ、「一目だけでも見てみたい」「車の中からチラッとだけでも会えたらな」という気持ちがあった。
結果的に遭遇しなかったので良かったけど、こんな行動をしてしまっていたことが今は本当に恥ずかしい。レクチャーを受けても、一緒に活動をしても、私にとってはまだ〈非日常〉で、頭では理解したつもりになっていたけど、自分の気持ちが「クマには会わないほうがいい」と思えていなかった。
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その夜、クマと人との関係や知床の観光について語り合うトークイベントが開催された。
話の中で、ひとりのローカルフレンドが、組織や団体としてではなく、いち個人として「私は訪れた人たちにクマに会ってほしくないと思っている。知床にクマに会いに来ないで。」と本音を語ってくれた。
私はこの言葉を聞いて、クマを見たいと出掛けてしまったことを心底後悔した。
知床に暮らす一人の友人の想いをここまで直接的に聞くことでやっと、やっとわたしは「クマに会ってはダメなんだ」と自分の心で思うことができた。
自然保護やサスティナブルや…やっぱり教科書の中、議論の中、だけになりがちで、自分の生活に、日常に落とし込むのって本当に難しいことだ。
実際に現場に訪れて、学んで、実践して、語り合って…
財団の想い、住民の想い、観光を生業としている人たちの想い…いろんな人たちの想いに触れたからこそ、わたしは自分事にできたし、共に知床のことを考える一人になれたと思う。
これはまだ知床に滞在して3日目の話。
濃すぎる知床サス旅ーーー!!笑
クマ活、シャチ活、鮭活、森活、サ活…
知床半島は中心に知床連山と呼ばれる峠があり、それを境に西側の斜里町(ウトロ)と東側の羅臼町に分かれている。
1週間もいたのでウトロと羅臼を行ったり来たりしながら、様々な「活」で知床を遊び、学び、旅し尽くした。すべてを書ききることはできないけれど、ざっくりと振り返ってみる。
すべての「活」に楽しいだけじゃない、学びや感動があり、知床をどんどん好きになっていった。
女満別空港からだとウトロの方が近く、ホテルや飲食店も揃っているためウトロだけで帰ってしまう観光客もいるらしいのだが、知床を訪れた際にはぜひ羅臼まで足を延ばしてみてほしい。
プランにはなかった「語り合う時間」
この旅のプロデューサーRYOさんも書いていたけど、やっぱりこの旅のハイライトは毎晩毎晩語り合ったあの時間だ。
日が変わる時間まで…というか明るくなるまで話していた日もあった。相当な体力と精神力を消耗していたのは事実だけど、それ以上に得るものがたくさんあって、ずっとみんなと話していたくて。
最終日にしていたのは、あえて書いちゃうけど「心の肛門」の話(笑)。ふざけているようだけどこれを大真面目に語っていた。ふだんは見せるのが恥ずかしかったり、なかなか話せない心の内を、この仲間たちになら見せられる。
私も最終日だしと思って、これまで堪えてて話せなかった想いを聞いてもらって、泣きながら「心の肛門」って言ったらみんな笑っていた。本当にいい夜だったなぁ。
気づいたら延泊して最後の夜がもう1日増えた。私は運動が苦手なので正直あまり乗り気ではなかった卓球。一人では弱っちだったが、なんとダブルスで優勝した。
もともとのプランにはなかったこれらの時間があったからこそ、唯一無二の忘れられない旅になったのだ。
世界自然遺産の〈日常〉を生きる人たち
知床には、ここでしか食べられない美味しいものがたくさんあった。
知床には、ここでしか見られない心奪われるほどの美しい景色があった。
だけど知床の本当の魅力、一番の魅力
それは知床に暮らす〈人〉だ。
毎晩お酒を交わしながら熱く語ってくれたローカルフレンドたち。誰も「これが正しい!これが絶対だ!」なんてことは言わず、むしろ「正解はない」ことが大前提。
知床の大自然の厳しさと共に暮らしていて、人間も自然の一部であることが実感としてある人たちだからこそ持っている謙虚さなのだと思う。
何が正しいかなんて誰にもわからない。
自然保護と観光、ウトロと羅臼、現場と報道、原住民と移住者、鹿のいる世界といない世界…
世界自然遺産の〈日常〉にも、いろんな対立や矛盾があって、それでも自分がこうあってほしいと思う世界を描いて、信念を持って活動している人たちがいる。
そんな人達の想いに触れ、その人たちのエネルギーを受け取る度、私は涙が溢れそうになった。TRAPOLの代表、キングが言う「人が放つエネルギー」は本当にこれからの未来を変えていくのだと思う。
私もこれから屋久島で、みんなのような強くて明るいエネルギーを放てるように活動していきたい。
知床サス旅で出会ったみんながいつか屋久島に来てくれる日を夢見て。
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