松井大輔という謎の生き物
人間は様々な面を持っている
とりわけ松井大輔という男は
その面が多い
引き出しの多いトリッキーなプレイスタイルのそのままに
デビュー時はそのプレイスタイルからファンタジスタとしての面が明らかに強調されてきた
どんなインタビューを見ても「魅せる」
そのワードが踊っていた
魅せるが次の魅せるを呼んでいるかのように
がしかし、時代はファンタジスタを必要としなくなっていった
いや、ファンタジスタだけでなく一芸に秀でている選手を必要としなくなったのかもしれない
例えが微妙だが昔のヴェルディは個性集団で良くも悪くも漫画っぽさがあった
守るやつ、走るやつ、パスだすやつ、ドリブルするやつ、決めるやつ
今ではそのタスクを一人で3つ4つこなさないと評価されないのである
いやそもそもスタメンで出るにはそれが前提で、その上で各タスクの質で評価されている
話は大きく逸れたが、実は松井大輔という男は元々魅せるだけではない男なのだ
一生懸命ボールを追うなあー
彼が若い頃からずっとそれが印象に残っていた
なにせこっちは彼の魅せるプレーが見たいのだ
心が踊りたいのだ
だが彼は守備で懸命に走る
おいおい、やめてくれよ、変なところで体力使わないでくれよ
彼が走るたび思っていた
だが彼は止まらなかった(当たり前だが)
それまでの彼と同じようなタイプ(とされていた)中村俊輔、小野伸二はあまり走る印象がなかった
基本は中央に鎮座し、一発の魅せでチームを勝利に導く
松井大輔はその導いた数は二人に劣るが、その分走っていた
次第にその走りが愛おしくなった
いや言葉が違うかもしれないが魅せられたときとは別の感情で僕は揺さぶられたのだ
ちなみに勝利に導いた数は中村俊輔、小野伸二に劣ると書いたが、その分松井大輔はいらないところで魅せていた
僕はそのある種、魅せるに相反する言葉だが「泥臭さ」が好きだったのかもしれない
だが魅せる意外性は二人よりも遥かに勝っていたと個人的には思う
中でも圧巻だったのはU23代表時の韓国戦
長居球技場でのプレーだった
続く
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