juno個展『風のたより』銀河ツバメのワークショップ 2021.5.29@手紙社Work Studio
刺繍、やったことありますか?
僕はありません。
でも好きなんです、junoさんの作品が。倒置法で言うと。
junoさんを知ったのはTwitterに流れてきたある日のツイートです。
およ?ブランキーやん。『COME ON』やん。
僕はサン=テグジュペリの『星の王子さま』を愛する人と、Blankey Jet Cityを愛する人は、無条件で信用します。同じ人種だと思っています。
そしてこのキツネの凛とした佇まいはどうでしょう。そこからjunoさんについて調べてみると、すいません、僕の表現のボキャブラリーを振り切った圧倒的な造形。温かさとともにある、気高く澄んだ無頼な感覚。素晴らしい作品の数々がありました。
知らない人は是非junoさんのInstagramを御覧ください。
作品集も出ています。
サインもらいました。いいでしょ。
さて、5月19日から30日にかけて手紙舎2nd STORYで開催される個展『風のたより』。
それに合わせて、何とjunoさんの代表作として知られる「銀河ツバメ」が作れるワークショップが開催されるということです。
これは行くしかないっしょ。
ふむふむ、開催は5月22日と29日の2回で、定員は各回8名と。
わずか16名!?これはプラチナチケットっしょ。
5月5日12時、受付開始と同時に目押しで予約、成功。せざるを得ないガッツポーズ。これは選ばれし者っしょ。ジェダイっしょ。さっきからヤンキーみたいになっとるけど。
「持ち物」と書いてある「刺繍枠」と「糸切りバサミ」をAmazonで購入します。形から入るタイプ。「糸通し(必要な方)」は要らないな。俺、そこまで耄碌してねえから。
感じがいい。これで必ずできる。俺はできる子や。
不安がないわけではない。僕は高校の「家庭」の時間、裁縫テストで40人のクラスでたった3人不合格になったうちの1人だ。
別にいいんです。自分がヘタクソな分には。針が指に刺さりまくって血だらけになっても。血判状でも書けば。「みんなで曹操を倒そう」とか言って。
そうじゃなくて、「だっ、大丈夫ですかっ?」とか気を使われるのが申し訳ないんです。
悩む。悩むけど、行くよ、一人でも。だって、シシュトモもいないし。刺繍友達。
5月29日土曜日、13時。いざ会場の手紙舎2nd STORYに到着。
やっぱいないよね、男。しかも42歳の中年。「紅一点」の逆バージョンてあるのかな。「泥一点」みたいな。
受付を済ませると、4階に案内されます。
冒頭、junoさんのオリエンテーション。
まず3分間、呼吸を整える時間を取ります。
窓の外から京王線の音が聴こえる。
飛行機が飛んでいるような気もする。調布飛行場だろうか。
つつじヶ丘の町の生活音。
窓から涼しい風が入ってきた。
いや、これクーラーの風かもしれない。
僕、こういう時まったく集中できません。
junoさんからお話。
「人間はやっぱり前に進みたい生き物だと思うんです。その点、刺繍はやれば必ず進むんです。確実に積み上げることができる。刺繍という小さな世界で、私は安心することができるんです」
そういった感じのことを言われていました。エエ話や。なんまんだぶなんまんだぶ。あとは「サテンステッチが」とかいろいろ言われてたけど理解不能でした。
ワークショップはブックカバーを作るもので、あらかじめjunoさんが縫ってあるツバメに参加者が軌跡などを足していく形式です。
正直、僕が余計なものを足さずに、このまま持ち帰った方がいいな、と思いました。
でも、そういうわけにはいきません。固まってうつむいてると、Oh!とんだシャイガイだと思われて優しいオネエサンたちに話しかけられてしまいます。やるしかありません。
しかし、糸を作る際の3つ編みから既にできません。だって俺、人生で3つ編みなんてしたことないよ?天然パーマだし。
対面の優しいオネエサンにやってもらいました。マジですいません。
そこから針に糸を通すのに10分ほど浪費。糸通しも買えばよかったな…。
さて、始めよう。
ツバメの後に軌跡を描こうとします。浮揚するような線にしたいな、と思い波縫いレベルの単線を縫っていたら、あの、ちょっと、何と言うか、ウ○コみたいになってきました。
これはもっとアクティブに線を足さなくてはいけない、と焦ったら糸が絡まって塊ができてしまいました。これはいけない。
それならば、この塊を荷物にしてみてはどうだろう?小包みたいな。エエんちゃう?ロマンチック。よし、そういう設定に変更や。
四角く形を作ろうとしていると、おや、これは鳥にも見えないだろうか、と気付きます。
そうだ。もう一羽一緒にいるというのはどうだろう。それで行こう。ハイセンス。俺はセンスの塊。
あっという間に予定の15時が来ました。
うむ、惨憺たる出来だ。
(念のため、左のツバメはjunoさんが事前に縫ったものです。)
ツバメなのか、違う鳥なのか。親子なのか、どうだろう。少なくとも僕の世界では、誰かにいてほしい、と思っていることは間違いないようだ。
この通り、出来は酷いものですが、鳥の形が作れてきた時に、
と思いました。今日の最初のjunoさんの言葉と通じるものがありますね。
大人になるということは、社会の中で生きるということであり、多くの人がわかる言葉を使うということです。
多くの人がわかる言葉を、他人の言葉を、どれだけ巧みに使えるかということにとらわれがちになり、勢い、自分の言葉を失います。
でも、人は自分の言葉で自分の人生を積み上げることができるのです。
最後にjunoさんの講評を受けます。
「これは…今までにない感じですね」
そう、僕は「仕事が速いですね」と言われることはあっても、「仕事ができますね」と言われることがありません。
カラオケで「声、高いね」と言われることはあっても、「うまいね」と言われることがありません。
実に…僕らしい作品になったと言えるでしょう。エエんや。紡ぐんや。ワシはワシの人生を紡ぐんや。
ありがとうございました。