うめ
私は時々、ひとりで植物園に行く。
今日は晴れていて暖かかったから、
絶好のお散歩日和だ と思った。
用事も早く済んだし、と
運動不足で怠けた身体を奮い立たせて
植物園へ向かった
舗装された道を
からっぽな気持ちで歩いて
陽の光を浴びていたら
すごく心地良くって
そのまま木々の隙間を入っていって
土や落ち葉の感触を足の裏で確かめていたら
その先に
赤ちゃんとお母さんが遊んでいるのが見えた
…… 一瞬、迷ったけれど、
近づいて こんにちは、と声をかけてみた
お母さんがこんにちは、と返してくれたから
そこへしゃがむと、
赤ちゃんが握りしめていた落ち葉を
私にくれた。
それがとってもかわいらしくて、
お礼に私も落ち葉を拾ってあげた。
それを何度も何度も繰り返して、
その度に赤ちゃんが楽しそうに笑っている
お母さんが、
この子が産まれた時にはもう
中々お出かけもできない状況になっていて、
こうして外で人と触れ合うこともなかったから
今すごく喜んでいるんだと思います
と話してくれた。
その後もしばらく落ち葉で遊んでいたら、
ふと、お母さんが
花が咲いた一本の木をみつけて
近づいてみると、それは梅だった。
咲き始めの梅の花の匂いを嗅いで、
そこに一本だけぽつんと植えられた、
けれどもとても立派に咲いている梅の花を
眺めていたら
ちょうど西に傾き始めた光に
花脈が透けてとても綺麗だった。
赤ちゃんは、初めての梅の香りに
キャッキャッと笑っていた
きっと一瞬一瞬でたくさんの発見をして
もの凄いスピードで吸収しているんだろうな
と思うと、涙が出そうになった
またすこしお話をして、
赤ちゃんとお母さんにさようならをしたら、
今日はもう帰ろうと思った。
帰り道、ちょうど梅園の横を通ったから
すこし入ってみたけれど、
あの一本の梅の美しさには叶わなかった
元気を分けてくれた赤ちゃんとお母さんの
未来が明るくありますように
2021.2.5 はれ
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