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「推しの皺をのばす」開始。

先日、芥川賞受賞作『推し、燃ゆ』を読んだ感想をアップした。

ここに書いた通り、私はこれまで推しに対して解釈をしていたことにこの小説を読んで気付いた。推しへの解釈が自分の内面の投影だったのかもしれないとか、好きな姿に勝手に解釈して作り出していたのかもしれないとか、そんな不安にも気付かされたけど、でも気付いたならもうとことん解釈してやろう、と思った。
そこで新しいマガジンをスタートすることにした。それがこの「推しの皺をのばす」。


毎年私は夏になると薄手のシャツを持ち歩く。寒がりでエアコンの寒さにしょっちゅうやられてしまう。ずっとオフィスでシャツを着て、外回りのために外に出る。エアコンの寒さ対策で着ていた薄手のシャツを暑さで脱ぎ、ぐちゃぐちゃ、と丸めてバッグに突っ込む。家に帰って、そのシャツの皺をのばすために広げ、洗濯するのだから…、なんて思いながらも、ひとまず手で皺をのばす。

その作業をしながら、このシャツを脱いだ時、「丸めたら皺になるよな」と頭をよぎったのにもに関わらず、丸めた自分の気持ち。改めてそれを振り返りながらのばすのである。

私にとって推しを推すこと、すなわち解釈することはこの皺のばしの作業に似ている。推しの姿を見た時、声を聞いた時、何かの情報に触れた時、その瞬間に生まれた感情はとりあえず吸収し、ぐちゃぐちゃに丸めて、心のポケットに押し込む。そしてふとその時の感情が必要になった時、改めてその丸めたものを広げて、皺をのばす。

推しはどう思っていたんだろう?

なんで私はこう感じたんだろう?

私たちは何を共有したんだろう?

そんなことを考えながら、一つ一つの皺の線をたどり、思いを巡らす。残しておきたい、と思う皺も時にはあるけれど、ちゃんと時間をかけて、消化して、きれいにしていく。皺がなくなって初めて、起こったこと・感じたことを理解して、吸収して、昇華できる。そうしないと前に進めなかったりする。皺の取れない服を着ることができないように。


この皺伸ばしの作業はすごくすごく大切なものだ。今の私にとって、誰かを推すことは「哲学を学ぶこと」、そう感じている。推しは一人の人間であり、誰かの生き様であり、それを推すことは人生に加担することだと思う。だから責任を持って推したい。誠実に向き合って、相手を知って、応援したい。“相手を知りたい”と思わない限り、思えない限り、私は推せないから。

昔はこんな難しいことを考えず、シンプルに「顔が好き」「異性として好き」という気持ちを抱いていたが、自分自身が歳を重ねるごとに変わっていった。今振り返れば、思春期の貴重な気持ちだったように思う。今抱いている「推しから学びたい」という気持ちの根底にあるのはもちろん愛情もあるが、強いのはリスペクトだ。

大人になって、自分の自我や価値観を構築した後に築く人間関係は難しい。ただ自我や価値観が確立されたからこそ、抱くようになったのが、リスペクトだった。社会に出るようになってから推し始めた人たちには、リスペクトや羨望のような感情がよく似合う。

今の時代、“推される人”もすごくバラエティに富んでいる。昔は推される人はテレビの中の人だけだったが、今はSNSやYouTube、ファンの中のトップオタなど、推し文化の浸透により、日常の中に推しがたくさんいる。

私が推している人たちはジャンルは様々だが、全員に共通していることがある。それは「自分の好きな物を貫き、結果を出し、生きている」ということだ。簡単に言えば「夢を持ち、叶えている」のだ。

自分に置き換えてみて思うことは、そもそも夢を持つこと自体が難しい。明確にやりたいことを持つこと、見つけることが難しい。でも推したちはその夢をちゃんと見つけている。そしてその夢を叶えるために行動し続ける中で、絶対に苦しい局面にぶつかることもある。いいことばかりでは絶対にない。どんなに苦しいことがあっても、乗り越えてきている。乗り越える強さを持っている。だから表舞台で活躍できる人材になっている。どんなに売れなくても、評価されなくても、信念を持って演じ続けることで売れた俳優や、売れない中でもファンを大切にし続け、グループの中での自分の役割を確立させ、評価されるようになったアイドル、自分の実力を得るために日々努力を重ね、プロに進むスポーツ選手。世の中でたくさんの人から評価を受け、愛されるトップの人たちは必ず苦悩を乗り越え、成功を収めている。

それが私にとっては羨ましく、素晴らしいと賞賛したくなることなのだ。憧れにも近い。だからこそ私にとって、推しは学びの対象なのだ。

「どうすればやりたいことを見つけ、そのやりたいことを貫き、成功られるのか?」それを教えてくれる。「応援しながら、哲学を学ぶ」、そのための作業こそが皺のばしなのだ。このマガジンはそんな推しからの学びでいっぱいにしたいと思う。



おけい

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