2021年も人間ドラマが凝縮されるレース界
毎年1月の楽しみと言えば、その年のモータースポーツ新体制の発表。例年インフルエンザにビビりながら、東京オートサロンに行き、HONDAブースで体制発表を見届けることが楽しみでした。しかし今年はコロナの影響でオンラインでの体制発表に。ですが、無事に今年のドライバーラインナップが発表されましたので、それについて思ったことを残しておきます。
ここで一言。
今年も私は牧野任祐選手を全力で推す!
TEAM KUNIMITSU
2020年シーズンと変わらず、今年も山本尚貴選手、牧野任祐選手で戦うTEAM KUNIMITSU。今シーズンはディフェンディングチャンピオンとして2連覇を目指す。
このお2人は2020年からペアを組んでいる。とても真面目で、もはや「レースのために生きているのか!?」と思うほどレース一筋の山本選手と、勝ち気でやんちゃな牧野選手。この2人が噛み合うのか…?と当初は心配していたが、昨年1年間で素晴らしいチームワークを築いていた。レースの全てを知り尽くし、攻めの姿勢でレースコントロールをする山本選手。2020年シーズンはSUPER GT・SUPER FORMULA共に優勝を収め、日本のレース界の王者としての地位を確固たるものにした。「やっぱり山本選手は強い」そう実感した。そして、とにかく速い牧野選手。練習走行ができなくても、タイムを出すべきところでちゃんと速さを見せる。この点は2020年でさらに磨きがかかったように思う。メンタルの強さやドライビング技術の向上等、いろんな要素あると思うが、速さ・攻めの姿勢は牧野選手の最大の武器だ。だからこそこの2人がタッグ組むことで生まれる相乗効果は計り知れない。昨年、牧野選手が体調を崩されたことから、SUPER GT優勝後、2人が一緒に受けているインタビュー等が無かったため、お互いに2020年をどう感じたかということを知れる機会が少なかったのが残念である。だが、先日発売された『auto sports』で初めて2人揃ったインタビューを読むことができた。山本選手は牧野選手の速さに刺激をもらっていることはもちろん、初めて歳下の選手とタッグを組んだことで、その存在によって、先輩として頼もしく成長したように見える。また牧野選手はHONDAのエースカーでHONDAのトップドライバーである山本選手から、これまでの四輪でのスキルや経験に刺激をもらい、学んでいる。今年はチャンピオンの称号を背負い、守りながら戦う1年。お互いにリスペクトし、助け合いながら、失敗と勝利によって生まれる信頼関係を構築してきた2人なら、きっと2021年も必ず強くなる。牧野選手にとっては初めての経験。きっとまた大きく成長するだろう。全力で応援したい。
そして今年も総監督は高橋国光総監督、監督は小島一浩監督が率いる。チーフエンジニアは伊予木エンジニアから星エンジニアにチェンジ。マシンの作り方も変わるのか、楽しみである。ドライバーを支える、ドライバーの戦いの舞台を作り上げる面々も頼もしい限り。そして2020年はRAYBRIGのラストランであり、2021年はメインスポンサーがどこになるのか?とドキドキしていたが、変わらずスタンレー電気がサポートを。STANLEY NSX-GTとして走る。私自身スタンレー電気に思い入れがあり、メインスポンサーであってほしいと思っていたので、なんだか嬉しい。2021年のTEAM KUNIMITSUにも注目していきたい。
DOCOMO TEAM DANDELION RACING
今年の体制発表でいちばんの衝撃はこの発表だった。SUPER GT同様、ドライバーに変更はないと思っていたが、そんなことはなかった。まさかの2020年シリーズチャンピオンである山本選手と牧野選手がスイッチ。山本選手がNAKAJIMA RACING、牧野選手がDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに。そもそも山本選手は2013年と2018年にTEAM MUGENで優勝し、その称号を持ちながら、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGに移籍、そして2020年にDOCOMO TEAM DANDELION RACINGで優勝した。そして2021年は再び優勝の称号を持って、NAKAJIMA RACINGに移籍するのだ。まさしくHONDAの優勝請負人。今日本のレース界でトップを走る山本選手にしかできないことだ。
今回DOCOMO TEAM DANDELION RACINGは3年目となる福住仁嶺選手と、移籍1年目となる牧野任祐選手というラインナップになった。この2人は子どもの時から一緒に走っており、F2に参戦する際も一緒に海を渡った親友であり、戦友である。この2人が同じチームでありながら、ライバルになるというのは注目したい。福住選手も牧野選手もSUPER FORMULAには2019年から参戦しており、速さはあるものの、いまだ優勝には恵まれていない。ただ2020年には2人とも表彰台に立つという結果残している。今年こそ、牧野選手の優勝が見たい。チームが変わり、マシンも変わり、ペアを組むエンジニアも変わる。アジャストが難しい面もあるかと思うが、頑張ってほしい。
この体制発表があった時、山本選手と牧野選手が入れ替わることで、「勝っていない牧野をチームに持ってこられても…」というような声をいくつか目にしたのがショックだった。まだ優勝はないが、優勝する可能性を十分に秘めた選手であることは間違いない。戦いが始まる前からそういったことを言うのはやめてほしい。ドライバーにも好みや相性があるはず。もちろんどんな環境であっても、力を発揮するのがプロの仕事ではあるが、きっと牧野選手とDOCOMO TEAM DANDELION RACINGも良い相乗効果を生み出すだろう。牧野選手は一緒に組むペアも大事なので福住選手にも期待したい。(福住選手、彼女とお幸せに!)
山本尚貴選手の存在
山本選手はここまで話してきた通り、SUPER GTでは2020年に続き、TEAM KUNIMITSUで、SUPER FORMULAではNAKAJIMA RACINGに移籍となる。今のレース界でチームを勝利に導く力をいちばん持っていると言っても過言ではない。巷で囁かれている「優勝請負人」という言葉もぴったりだ。もちろん勝利に導くというのもさることながら、2019年〜2021年と後輩育成のような役割も担っているように思う。2019年よりSUPER FORMULAで福住選手、2020年はSUPER GTでは牧野選手、そして2021年はSUPER FORMULAで大湯選手。HONDAで速さがありながらも、レース経験が少ない若手を山本選手の豊富なレース経験でうまく導いているような気がする。そういうポジションは引退した選手がやることが多いのかもしれないが、きっと現役で一緒に戦う選手から学ぶ方がより説得力があるのかも?と素人目には映る。
年々頼もしくなる山本選手が日本のレース界をどう盛り上げてくれるのか、ということはもちろん、底上げの役割にも期待したい。
番外編 #37 KeePer TOM’S GR Supra
私はずっとHONDAを応援しているが、ここからは少し番外編。他メーカーで気になるポイントを挙げていこうと思う。
他メーカーだけど応援したくなるチーム。そう言われて真っ先に頭に浮かぶのが、SUPER GTのKeePer TOM’S GR Supra。平川亮選手だ。2020年SUPER GTのシリーズチャンピオンはこの37号車が獲ると思っていたが、衝撃的な結末を迎えた。平川選手の想い、悔しさといったら計り知れない。昨年はニック・キャシディ選手とペアを組んでいたが、今年はニック選手がFORMULA Eに出場することからSUPER GT を卒業。2021年、平川選手の相棒に選ばれたのはサッシャ・フェネストラズ選手だ。サッシャ選手は昨年36号車をドライブし、ルーキーとは思えない速さを魅せた。攻めの走りも得意で、ニック選手の後継者と呼ばれていることにも納得がいく。Redbull athleteである2人のパフォーマンスにも注目したい。優勝はもちろん1号車STANLEY NSX-GTであることを願うが、是非いちばんのライバルとして熱いバトルを見せてほしい。
番外編 #12 TEAM IMPUL
今年の全体の体制発表でいちばんの衝撃だったのは、TEAM IMPULに松下信治選手が加入したことだろう。松下選手はこれまでずっとHONDAのサポートを受けてレースを戦っていた。しかし2021年シーズンはHONDAから日産に移籍した。ここ数年、トヨタとHONDAに対して苦戦を強いられている日産陣営にとっては起爆剤のような役割を担ってほしいと期待しているのだろう。TEAM IMPULといえば、闘将・星野一義監督が率いており、松下選手の相棒は平峰一貴選手だ。平峰選手といえば、昨年の福住選手とのバトルでも見せた強気すぎる走り、攻めと速さが凝縮されたような選手だ。勝利に対する想いが強烈な2人の中で松下選手がどのような走りを見せるのか、楽しみである反面、少し怖かったりもする。脅威になること間違いなしだ。
体制発表はいろいろある。歓喜、安堵、不安、落胆…だが、それはすべてドライバー自身の選択だ。ファンとしてはそれを受け止め、しっかりと応援していきたい。
どうかいろんな感情があるのはわかるが、今年、#24 KONDO RACINGで走る佐々木大樹選手のこの言葉を忘れずに。
牧野選手への想い
昨年、参戦2年目にして、SUPER GTシリーズチャンピオンという偉業を成し遂げた牧野選手。自ら望んだ厳しい環境に飛び込み、結果を出して、強くなった牧野選手は今年も素晴らしい走りを見せてくれると信じている。今は髄膜炎の療養から復帰したばかりで、身体の調子も万全ではないと思う。(1ヶ月近く、ずっと寝ていたようで、随分と痩せてしまった印象。心配。。)ゆっくりと無理はせずに、身体を取り戻して、活躍することを心から願っている。
まだコロナが落ち着く見通しが立っていないことから、今年もイレギュラーなシーズンになるかもしれない。きっとピットウォークもないだろう。
いつか牧野選手と直接言葉を交わせる時が来たら、「まだまだこれから、まだまだ牧野選手は強くなる」と伝えたい。
おけい