放浪記 8/12
長すぎる坂を登って降った先には、リフォームで継ぎ足されて長くなりすぎた茶階段。老人ホームから帰ってきた祖母を、家にあげようとする。
また、その先には、ガラスドームで保護された、どこにも行かないエスカレーターがあるが、もしかするとあれは最も遠いところに繋がっているのかもしれない。なんたってそこは国道に囲まれた街で、リュウゼツランが一つ葉を伸ばしているらしい。
国道で囲まれた街が嫌になっても、少しの団地をオアシスとして、億劫な坂も、遊び疲れて自転車で降る頃には好きになっている。
海でも、山でもない アシナガバチが揺蕩うあの風。
このまちの学校がどこにあるのか、大人達は知らない。
大きな道の終わりはここにあるし、小さな道の始まりもそこにあって、垣根で遮られてカーブの先が見えないから、学校がどこにあるのか、わからない。
ただ、あのコンクリート塀に行手を阻まれていたのだなと、知らない街の角を遠くから見つめる。小さな人生だ。
丘を模して、山を模して、海を模して、そして六つのトンネルに挟まれている、画材屋はしっとりとしているのだ。
並ぶ全てが輝かしく見えるだろうから、お金ももういらないくらい。
夢のような、小さな人生
その隅