大人になれない若者たちへ
20歳を過ぎたのに、夢見がち。
私はやりたいことをやって生きるんだ。
やりたくないことを仕事にしたくはない。
未来が思い描けない。
…etc.
一言でいうと大人になれない若者たちだ。
もしかすると、ドキッとした読者もいるかもしれない。
ここでいう若者は一般的に知られている、モラトリアムとは若干異なる。
モラトリアムは青年期; 13〜18歳だが、ここでいう若者は成人期;18〜25歳になっている。ここでいう年齢区分は心理学の専門用語に基づくので一般的な感覚とは異なるかもしれない。
彼らは大人たちから
何時になったらキミ大人になるんだ?とか、
自分のアイデンティティを探求するんじゃなくて、社会に何が貢献できる考えろよとか、
夢じゃなく現実をみろよとかプレッシャーにも晒されている。
同時に好きなことやって生きろよとか、自由にしたらと放任もされている。
平易にいうと要は貶されてる訳だが、そんな若者たちに、
君たちは素晴らしい人達だとラブレターを送った心理学者がいる。
Jeffry Jensen Arnett; ジェフリー=イェンセン=アーネットだ。
彼は「成人期がいづる」という意味で、大人になれない若者たちを
Emerging Adulthoodと命名し、新しい発達段階として理論化した。
この意味を尊重して日本語訳は「成人形成期」とされている。
かつては青年期が終わると就職と家からの独立、結婚、出産とモデルとされるライフスタイルが当たり前に履行でき、社会人・夫婦・父母と順調に社会的な役割を獲得してきた。1950年代頃のアメリカが心理学ではそれが現実に起きていた時代として語られる。余談だが、現代の心理学の最先端と中心地はアメリカとされている。
しかし、社会が成熟するにつれてそのとおりにしなくてもよくなってきた。例えばすぐに就職せずにバックパッカーをしたり、大学院に進学して社会に出ることを先延ばしするゆとりが生まれた。つまり文学的に表現するならば青年期と成人期の間にある狭間が大きくなったのだ。
こうして次のような心の傾向を持った若者たちが生まれることになる。
①アイデンティティの探求
②否定・不安定性
③自己焦点化
④大人と子どもの狭間にいる感覚
⑤可能性と楽観
こうした若者達は、資本主義社会で成熟した社会では普遍的にみられるとされている。
5つの特徴についての詳細は、次回綴ろうと思う。
引用文献
Arnett, J. J. (2000). Emerging adulthood: A theory of development from late teens through the twenties. American Psychologist, 55, 469-480.