2020年5月 都内某病院

前回の更新から、だいぶ間があいてしまった。

ゴールデンウィーク明けに数日入院した。

このnoteを始めた時には、まさかこんなことになるとは思わなかった。地元で集団感染が続発していたので、コロナにかかるかもしれないとは思っていたが、コロナとは別の病気で自分が入院することになるとは夢にも思わなかった。命に関わる病気では(たぶん)ないが、これからの人生に大きく影響するであろう病気で、まずはすぐに処置をした方が良い可能性が高かった。私にとっては緊急事態だった。

ゴールデンウィーク中に開いているクリニックで紹介状を書いてもらった私は(そこは設備がそろっておらず治療が十分にできなかったのは残念だったが、医師は真摯に対応してくださり、今できる信ぴょう性の高い治療法を教えてくれた)、休み明けになると入院する気満々で、ある程度の荷物をもって、とある中規模の病院に行った。そこはクリニックの先生が指定した病院で、コロナの患者さんを(おそらく)受け入れていなかった。とはいえ、このご時世だ。入院することはなかなかハードルの高いことのようだった。よく、突然やってきた私に、すぐに入院治療をしてくれたと思う(熱や咳などの症状はなかったが、血液検査、レントゲンだけでなくCTまでとった。ここ数か月海外には行ってないおらず、2か月ほど買い物以外は同居家族としか顔を合わせていない。なんだか言い訳をしているようだが)。病院の皆さまには心から感謝している。

数日間、大部屋に入院した。といっても、部屋の人数は制限しているようで(推測だが)、満室ではなかった。しかし、トイレや洗面台、また冷蔵庫など、共用のものも多く、どんなに気をつけていても、もし感染症患者が紛れ込めば、院内感染はありえるな、と素人ながら思った。また、それは病院のせいとは軽々しく言えないな、とも思った。衛生を気にかけぬ者は、私が見る限り誰もいなかった。ピーシーアール検査が入院前にできたら、と個人的には思うが、それは制度によるところも大きい。(追記:現状、必要だけど検査できないのか、そもそも必要ないと判断されてるのか、私にはよくわからないよ。第二波までに気軽にできるようになったらした方がいい気がするんですけどね…コロナ関連はわからないことが多いから、色々書くのが不安だ…)

もし私が無症状のコロナ患者だったら、と思うと恐ろしく、基本的にベッドのみで過ごしていた。絶対的な確証はどこにもないのだった。

病室は、騒がしい世間とは違い、むしろ落ち着いた時が流れていた。少なくとも私のフロアはそうだった。拍子抜けだった。過去に何度か入院したことがあるが(同じ病院ではないし科も違うから単純な比較はできないけれど)、今までで一番穏やかな入院生活だった。見舞いが中止なので、個人的にはそういう意味でも気が楽だった(寂しい思いや不便な思いをしている患者さんもたくさんいるだろうけれども)。また看護師さんのだれもが丁寧でかつ親切で驚いた。優しすぎてちょっと泣いてしまいそうになるほどだった。つっけんどんになってしまうナースだっているし、こんな時だからそれも覚悟していたのに。

ニュースを見ると医療現場からの悲鳴があちこちに上がっている。治療を受けたくても受けられない人がたくさんいる。正直、最初はこの静けさに肩透かしを食らったような気持ちにもなった。しかし、だんだんと、ここでの静けさにも重みがあるのだと感じるようになった。曖昧な状況のなか、こういった場所があるおかげで、私は治療が受けられた。第二波がもっと大きかった場合、この静けさは保てるのだろうか。

数日の治療を経て無事退院した。

実は退院後の方が、薬の副作用で具合が悪くなった。しかも、それなのに薬の効きはゆっくりで、症状は緩やかにはなったが、いまだに続いている。この病気は対症療法しかなく、しかも治療が必ずしも効くとは限らない。これからどうなるかもわからない。治るかもしれないし、そうでないかもしれない。

これは入院前からわかっていたことだった。
しかし、自分の症状の悪化を黙って見ていることは出来なかった。いつか振り返った時に、後悔したくなかった。

治療を求めて必死だった時、私は圧倒的に利己的だった。利他的に生きることがいかに難しいことかを痛感した。身体や心が弱り、症状の最中にいる時には、自分のことで精一杯だ。利他が求められるなかで、どんなときでも利他を貫くにはどれほどの意志が必要なのだろう。

だが病を治すためには、他者のあれこれは一旦忘れて治療を受け、ゆっくり休み、食事をし、睡眠をとることも大事だ。利己的な自分を完全に捨ててしまえば、回復は進まない。

未熟な私にとっては、利己と利他との間で揺れることでさえ、一定以上の意志を要するだろう。せめて完全に利己に埋もれないように律したいが、それも状況によっては自信がない。

また、今回の入院にあたっては何度もコロナに関する問診アンケートを書いた。診察時だけでなく、検査ごとに何回も同じ質問に答えた。熱、咳などの症状がないか。感染者との濃厚接触はないか、などなど。そういった質問の中に「ここ数か月に海外に行ったか?」というものがあった。もし海外に行っていたら、あのようにスムーズに医療を受けられていただろうか。わからない。これから海外渡航が徐々に解禁されていくであろうが、感染症と共に生きるグローバルな世界では、海外に行くことで感染症以外の医療を受けるのにも遅滞が生まれてしまうリスクがないとは言えないのだな、と思った。局面によっては大きく影響するだろう。病院関係者や、他の患者への感染リスクが、高まってしまう。それは海外へのお出かけが好きな私には、とても重いことなのだった。

緊急事態宣言の期間がひとまず終わったので、自粛中の気紛らわせだったこのnoteもひとまず終わりです。疲れましたね。人それぞれの大変さがそれぞれにあったのだと想像しています。
今回の記事は個人の雑感であることをどうかご理解ください。他の記事も全て個人の雑感ですが…。

皆さま、お身体ご大切に!

今日もお疲れ様でした!




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