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香港・manningusの絆創膏

私にはクッと顎を持ち上げたところにうっすら傷跡があります。

この傷跡はメイドイン香港。

たまに鏡でこの傷を見る度、香港で触れた優しさと自分のダサさを思い出す。

ここから先、どうか若さ故の愚かさを反面教師にお読みいただけたら…。

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2019年5月、私は社員旅行で香港を訪れた。

初めての海外旅行・初めての社員旅行。

1日目に地元バーテンダーさんとドラマチック?な出会いがあったこともあり、なんて楽しいんだ!香港!と静かに興奮していた。

事件は2日目の夜に起こる。

会社の代表や先輩と九龍(カオルーン)の繁華街・尖沙咀(チムサーチョイ)にて北京ダックコースを楽しんだ。

丸々一羽のダックが運ばれては歓喜し、次から次へと注がれるお茶に歓喜し、大満足なディナーだった。

お開き後も何となくそのままホテルに戻るのはもったいない、と余韻を抱えながらルーフトップバー「アイバー」へと流れ込んだ。

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アイバーはビル30Fにあった。

店内は照明が落とされてムーディーな雰囲気。

まずはテーブルについてカクテルを楽しみ(ここでもしっかり歓喜)、じゃあいよいよ…とルーフトップエリアへ。

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ビル灯りやチカチカ瞬く電飾の数々が一気に飛び込んでくる。

時刻は21時、夜こそが香港といった風情を見せつけられた。

やっぱりここでも皆、歓喜。

先輩は熱心にスマホカメラで連写していた。

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夜風もちょうど良い心地で吹き抜け、周りから聞こえる中国語や英語の会話。日本では見られないカラフルな煌めき。

この異国感たるや!私の静かな興奮もMAXになったその時だった。

ピシ

攣った。脇の下あたりを攣った。ああーこれ痛いやつー。

歓喜している代表や先輩に心配をかけまいと、ポーカーフェイスで通す。が、どうにも痛い。

これはお手洗いついでにちょっと休憩して痛みを癒そう。そっと席を立った。

先程のカラフルさとは対照的に白いお手洗いによろよろ到着。

初海外で気付かぬ疲れも手伝ってか、私はフラ〜っとコケた。

正確に言うと一瞬、貧血で気を失って床に崩れ落ちたらしい。顔から。

(お酒にはめっぽう強いので疲れのせいだと思いたい)

気がつくと「キャー」だか「ヒャアー」だかの悲鳴と共に、香港っ子と思しき女性に介抱されていた。

そこからはさぁ大変。

お店のスタッフさんも代表も先輩も巻き込んで、今すぐ病院に行ったほうが良いvsいいや明日で大丈夫です(私)と押し問答に。

…このnoteを書いていて本当に自分のダサさに恥ずかしくなるばかりです。。

スタッフさんが呼んでくれたのか、どこからか担架を担いだ救急隊まで到着。

火事場の馬鹿力とはこのことか。
私は拙い英語で「I'll go to hospital, tomorrow!」とか「Please, don't worry. 無問題!」「My blood is stopping.(血は止まったよと言いたかった)」などと繰り返していた。

救急隊も意外とこいつ元気やな…と呆れ顔。

埒が明かない状況にスタッフさんがノリ良く「You looks fine & you can sing〜♪」と助け舟。

「Yes, yes, so I'm fine. I can dance !」とか言ってスタッフさんと一緒にズンズン踊った。EZ DO DANCE。なんたるカオス。

潮時だった。誰もが、私までもが自分に構ってられんな…と思った。

そうして救急隊は空の担架を担いで戻られた。本当にごめんなさい。

そっとおいとまタイミングを見計らっていると、救急隊と入れ替わりかのように、今度は騒ぎを聞きつけたアイバーの支配人さんという男性まで出てきてしまった。

支配人さんは私たちの宿泊先を聞き出し、宿泊先オーナーに電話で事情を説明。明日、近くの病院を伝えてやってほしいと申し送りまでしてくれたそうだ。

ただただ恐れ入る私と代表と先輩。

またしても旅先で人のご厚意に甘えさせていただくこととなった。

帰りしな、甘えたついでに「Thank you so much. I wanna visit this bar again.」とか伝えたが、お店からしたらもう日本人出禁くらいの勢いだろう…。

それでもにこやかにお見送りをしてくれた(ように見えた)ので、本当に優しい人々だった(のかもしれない)。本当にごめんなさい。

バーを出てエレベーターを待っていると、お手洗いで介抱してくれた女性が心配そうに近づいてきた。

彼女には目の前で人が気を失って転倒するという衝撃的な場面を見せてしまい、こちらもまた本当にごめんなさいだ。

そんなことを思っていると、彼女はそっと3枚ほど絆創膏をくれた。

manings(マニングス)–香港にある有名な薬局チェーンのものだった。

私の聞き間違いでなければ「だいじょうぶだいじょうぶ」と拙いながらの日本語で声をかけてくれながら、ハグして背中までさすさすしてくれた。

もうどうしてこうも見ず知らずの厄介者に優しくしてくれるのだろう。

本当にごめんなさい。そしてありがとう。

manningsの絆創膏はこれまでに使ったどの絆創膏よりも肌へのフィット感が優しく、しかし強力な素晴らしい代物で、そのことがまた傷にも心にも沁み入った。

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【後日談】
翌朝、先輩の付き添いの元(本当に優しい会社だったのです)、病院へ。
現地の医師は私のぱっくりと割れた顎下を見るなり「Oh ! Stitch!」。
結果、5針しっかりと縫合してもらいました。

ついでに転倒の衝撃で顎関節症になり、咀嚼する度にコリコリ音を鳴らしながらも旅は続行。
(帰国後、口腔外科に通って現在は完治)

あの夜、助けてくれた女性・アイバーのスタッフさん支配人さん、救助隊、そして最後まで支えてくれた代表と先輩。
受け取った沢山の優しさを今後、私は誰かに渡して行けますように。
そんなことを思いながら顎下5針分の傷跡をさすっています。



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