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バリアをなくす楽器

5才でバイオリンを始めて早30年以上。

音楽専門の高校から芸術大学に進み、23才で始めたアイルランド音楽のフィドル(バイオリン)プレーヤーとしてのキャリアも長くなってきた。


そんな自分が最近始めたのがティンホイッスルという小さな笛だ。

ティンホイッスルはアイルランドでは子供たちが学校で習ったりもするし、アイリッシュフルートやイーリアンパイプス(アイルランドのバグパイプ)と運指が共通することもあり基礎の楽器としてアイルランドでは知られている。


思うところあって昨年12月からこのティンホイッスル の練習を始めた。1,500円で買えるファドーグというメーカーのものだ。

まだ速い曲は吹けないし、音色もコントロール出来ていない。

でも楽しい!新しいことを自分なりに考えながらトライすることは勇気もいるがクリエイティブな作業だと思う。

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先日、クラシックのバイオリンの生徒のお母さん(Mさんとしよう)と話していて「最近、こんな笛(=ティンホイッスルのこと)を練習してるんですよー」とちょっと吹いて聞いてもらったら、彼女の顔色がパッと変わった。

「先生、この笛買うことできますか!」と一言。お話聞いてみると「 アイルランド音楽は聴いていて気持ちいし好きだけど、自分が演奏するということは考えたことがなかった 」とのこと。

そこでこんな動画を見てもらった。

世界中で大人気のフィドル奏者Fegral Scahillが毎日いろんな場所でセッションを繰り広げる動画 でこの日はアイルランドGalway州のLackagh Comhaltas に所属する子供達と、軽快なダンスチューンをセッションする動画だ。Comhatas (キョールタス)というのはアイルランド音楽が学べるサークルのようなもので本部はアイルランドの首都ダブリン、日本にも東京に支部がある▶︎ https://comhaltas.jp/ 

「アイルランド音楽って難しくて手の届かないところにあると思っていたのだけど、この動画は楽しそうですね!私がティンホイッスルを吹けるようになったら娘とセッションも出来ますよね」と言ってMさんはちょっと感動して泣きそうになっていた。

続けて「実は私、むかしからハープを弾いてみたかったんです。夢で終わると思っていたんですがこの動画に出てくるアイリッシュハープはやってみたくなります!子育てがもう少し落ち着いたら資金をためて是非トライしてみたいです。」と強く話してくれた。

Mさんとは10年以上の付き合いがあったがこんなに情熱的にお話ししている彼女は見たことが無かった。僕自身も驚きと感動で泣きそうになった。

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僕が( そんなに上手くもない )ティンホイッスルを彼女の前でたまたま吹いたら起こったのがこの出来事だ。

「たどたどしくも楽しそうに吹いていたから」

「この笛が小さくてシンプルな構造だったから (そしてあまり高そうに見えない) 」

理由は色々あると思うが「アイルランド音楽をやってみたい、けど自分には難しすぎる」と感じていたMさんのバリアをティンホイッスルがフリーにした瞬間を、僕は確かに見た。

それはとても美しい光景だった .

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アイルランドの音楽は人々の生活の中で生まれた音楽だ。

この音楽にひとびとが触れる機会を、これからも創っていきたいと思う。

Ode Inc.という会社の使命がはっきりと見えた一日だった。

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