組織のリーダーが知っておきたい「ミラーリング」
「ミラーリング」
「ミラーニューロン」
これらは、対人援助職の方なら一度は聞いたことがある言葉かもしれません。ミラーリングとは、他者の行動や感情を受け入れ、自分自身の行動や感情をそれに似せていくことです。ミラーリングの根拠となっているのが、ミラーニューロンです。ミラーニューロンは他者の行動を観察するだけで、あたかも自分がその行動をしているかのように活性化する特殊なニューロン(神経細胞)です。共感細胞、物まね細胞などと呼ばれたりもします。
生まれた赤ちゃんは、父や母など周囲の大人をミラーしながら、人間らしい振る舞いや感情表現を学んでいきます。赤ちゃんやこどもが発達する上では欠かせないものです。又、他の動物よりも不完全な状態で生まれてくる人間
の赤ちゃんにとって、周囲の大人に好かれることは生存という観点から非常に重要です。ミラーリングすることで集団内で安全な居場所を獲得することにつながります。
さらに、このミラーリングは大人になったら終わるというものではありません。大人になり社会で一人前だと言われるようになっても続きます。自分が他者をミラーすることもあれば、他者にミラーされることもあるでしょう。
ミラーリングについては、以下の書籍がとても詳しく分かりやすいと思いますのでご紹介します。
実はミラーリングは、私たちの職場で起こっている様々な問題やトラブルと密接に関わっています。
ロールモデル
職場の上司やエース社員、ベテラン社員などは、その職場内においてロールモデル(良い意味でも悪い意味でも)になり得ます。ミラーリングは大人にとっても組織内で安全を確保する機能であるため、本能的にロールモデルを模倣することでその役割を果たそうとします。
【良いロールモデル】
・丁寧な言葉遣いの上司のもとではその丁寧な言葉遣いを模倣する。
・笑顔が素敵なベテラン社員と接していると自然と自身の笑顔も増えてくる。等々・・・。
【悪いロールモデル】
・毎日イライラしている先輩の隣りの席になり、以前は穏やかだった自分も段々イライラに染まってきている。
・挨拶をしない社員が多い職場に入社し、自分の挨拶の声が以前より小さくなった。
※以前の職場では大きな声で挨拶していたが、この職場では浮いてしまいそうで遠慮してしまう・・・。
「大人なのだから、他人に影響されず自分というものをしっかり持って頑張れ!!」
と思う方のいるでしょう。しかし、多くの職場では上記のような現象が当たり前に起こっています。人は生存本能として、集団から排除されることを恐れているのです。
良いロールモデルの上司にミラーした部下は、良い影響を受けて成長し活躍します。=職場全体が良くなります。その反対は言うまでもないでしょう。
普段から幹部を怒鳴り散らしている経営者→幹部が部下にパワハラを行い職場環境が悪化し大半が離職してしまう→人員不足で経営悪化し、経営者の首を絞める・・・。悪いロールモデルとミラーリングは組織を滅ぼす恐れがあります。
ミラーリング以外の視点からも、無礼な上司のもとで部下が悪い影響を受けることの社会的損害について研究している学者もいます。
この書籍は「礼節の科学」という視点から職場も問題点を指摘しています。
私の大昔の上司。部下に対して自分からは挨拶しないことを信念にしている社員がいましたが論外です(笑)。
組織のリーダーが出来ること
・リーダーは、ミラーリングや人の生存本能を過少評価しない。
→ミラーリングを、人に親近感を抱かせるための心理テクニック程度に捉えている人もいます。ミラーリングを矮小化することで本質を見失うことがあります。
・自分の姿が常にみられている、ロールモデルであることを認識する。
→良いロールモデルになれるのか、悪いロールモデルになれるのか、リーダー次第です。経営者であれば、マネジメントを任せている役員や管理職は良いロールモデルか?成績は良いがハラスメントを行うエース社員がいたらどうするか?リーダーの決断や振る舞いは重要です。
良いロールモデルが増えれば、お互いがミラーリングによって影響しあい、さらに高みを目指す機運が生まれます。是非一度自分の組織や職場とミラーリングについて考える機会を持ってみてはいかがでしょうか。