福祉現場の研修に伝統的思想のエッセンスを①『守・破・離』
福祉の世界で人材育成に携わっておられる方々。研修の実施や講座運営に難儀されている方が結構居られるのではないでしょうか?施設などでは、虐待防止、BCP(業務継続計画)、介護事故など、実施すべき項目が決められている部分もあり、テーマ設定自体はスムーズかもしれません。
しかし、厚生労働省から引っ張ってきた資料を読み合わせるだけの内容では、受講者の興味に繋がらない→成長を促せないのではないでしょうか。
私は、これまで社会福祉法人や医療福祉グループ等で施設系職員の研修や講座を多く実施してきました。
「参加してくれた職員に、退屈せずに学びの楽しさを知ってもらいたい!」
という気持ちを強く持っていました。通所などの事業は、利用者が帰った後一斉に時間を取ったり出来ますが、入所系の事業は時間確保が一苦労です。ようやく時間を作って参加した研修が居眠りタイムになることほど、お互いにとって悲しいことはありません・・・。
研修の全体テーマは、当然法人の研修計画や厚生労働省の指導に沿って設定しました。しかし、中身については、広い意味、高い次元で支援者としての成長を促すエッセンスを入れたいと考えていました。そこで取り入れたのが、近代的な社会福祉学や心理学に留まらない、
昔から受け継がれてきた伝統的な哲学や思想、智慧のエッセンスでした。
これまで研修に取り入れてきたテーマを紹介します。
守・破・離
守破離(しゅはり)は、武道や伝統芸能で師弟関係を通じて学び、成長する過程を表す概念で、「基礎を守り(守)、型を破り(破)、独自の道を創る(離)」というステップを指します。これを福祉分野の職員研修に応用してみました。
研修テーマ
守破離を通じた福祉現場でのスキルと姿勢の理解
基本の重要性を理解する(守)。
創意工夫の重要性を考える(破)。
自律的な成長を目指す(離)。
構成:
導入の説明
守破離の意味を簡単に解説。
武道や茶道の例を出しながら、福祉現場にどう応用できるかの概要を話す。
質問:「今の自分の仕事における“型”は何か?」
守 - 基礎を守る
現場の基本的な業務(例: ケアプラン作成、利用者とのコミュニケーション)を振り返る。
小グループで「日常業務で重要な基本とは?」について短いディスカッション。
結論: 基礎が大切な理由は、チームワークと信頼の土台になるから。
破 - 型を破る
実例紹介:「現場で新しい方法を試して成功したケース」を話す。
グループで「自分の業務で工夫できる部分」を一つ考え、共有。
ポイント: 失敗を恐れず挑戦することで成長が生まれる。
離 - 自分のスタイルを創る
守と破を通じて自分なりの「福祉の仕事観」や「対応スタイル」を築くことの重要性を話す。
「今後挑戦したい目標」を1つ書き出し、共有。
まとめ
守破離のサイクルは継続するものであり、成長の道筋であることを強調。
「今日の学びを明日からどう活かすか」を考える時間を促す。
ポイント
グループワークや個人ワークの設定時間によりますが、30分~45分程度の時間があれば十分実施出来る内容です。
一方通行ではなく参加者の考えや経験を引き出す対話形式を重視します。
施設で起こった具体例を盛り込むことで、現場との関連性を強調します。
業務改善や自己成長への意欲を引き出すことが最終目標です。
通所系、入所系、いくつかの事業の研修で守破離を取り入れた研修を実施しましたが、思った以上に反応が良かったです。特に「破」の部分では、部署の中で躊躇したり、苦戦している職員のエピソードが印象的でした。少しは後押しに繋がったのではないか?と感じています。
次回は、別の伝統的な智慧の研修を取り入れた時のお話を記事にしたいと思います。