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子供向けの作品

『ヒックとドラゴン』を観返す度に、居ても立っても居られないぐらい感動する。好きな映画はたくさんあるけど、好きな映画にだって嫌いなポイントや煮え切らない箇所はあるはずで、でも『ヒックとドラゴン』にはそれが完全にない。
 ドリームワークスロゴの始まりからラストショット後のタイトルインまで、嫌いなところや不完全燃焼になるところが全くない。展開、テンポ、映像スタイル、全てが完璧。酔っ払いながら観ると常時胸が苦しくて、感動で指先が少し震える。プロフェッショナルの仕事とはこういうことだと心から思う。

 ところで『推しの子』が好きです、みたいな話をする人がいたとしても
「へえ、そんな面白いんだ。自分も観てみようかな」みたいな流れになるのに『ヒックとドラゴン』が好きです、みたいな話をしても大抵の人は「子供向けアニメが好きなのね」みたいな反応をしてくるのは何なんだろう。同じアニメなのに。

 ドリームワークスやピクサーのアニメーションは何より脚本が芸術的なほどの完成度を誇るものが多いし、その辺のよくできたエンターテインメントの何倍も精密に"エンターテインメント"をやっている。ストーリーを作る、表現する人なら絶対に参考にすべきものだと思う。なのになんで連中は「ディズニーアニメは子供向け」的な価値観にいつまでも縛られているのだろう。

 彼らは子供のためにアニメーションを作っているのではない。人生とは何か、エンターテインメントとは、感情とは何か、そういったことをアメリカトップの芸術大学の成績トップ者だけが集った天才集団が考えに考え抜いた果てにあるのが「子供っぽい悪戯」のように見えるところはあるかもしれない。

 そんな子供心を「子供向けだよな」と片付けて「私は大人ですよ」みたいな顔をして作られたような「大人向けの作品」を観て「自分は大人だなあ」と気持ちよくなっているような大人にだけはなりたくないね。

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