見出し画像

任天堂を見習おう

 さっき、何となく『ルイージマンション2』の3DS版を買って、30分ほどプレイしてみた。ルイージマンションと言えば、小学生の頃に友達の家でゲームキューブの初代を少しだけプレイさせてもらって、やたら難しかった記憶だけがある。
 ところで当方、自主制作で3D映画を作るほどの重度の3D信者なわけだけれども、どうやらゲームキューブというゲームハードは開発当時は立体視に対応する予定だったということを最近知った。

 3Dモニターを作って売るのに採算が合わなくて見送っただけで、世に出たゲームキューブの内部には立体視対応システムが生き残っているっぽい。なんて夢のある話なんだと感動した。だから初代『ルイージマンション』は完全に"立体視前提"のゲームだったわけだ。(その初代『ルイージマンション』も10年以上の時を経て立体視ゲームとして3DSに移植されている。執念だ)

 ということは理屈上、ゲームキューブと3Dプロジェクター、あるいはヘッドマウントディスプレイ等を接続して(実際のやり方はわからないけど)なんらかうまい具合に回路を繋げれば立体視ハードとして使えたりするんだろうか。レトロゲームブームに乗っかって誰か機械に強い人、やってください。

 3DS版の『ルイージマンション2』の話に戻る。さっき少しプレイすると、チュートリアルを教えてくれる博士的な人がルイージに通信機を渡してくれるところから始まるんだけど、その通信機がまんま初代のDSだった。
 DSを持って冒険するルイージを操作する、3DSを持ってプレイする自分。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でゼルダが持ってる通信機的なやつがWiiUのゲームパッドにガン似しているのと同じ体験ギミック。任天堂の、こういう肉体を通した感覚を利用した没入感みたいなの、本当に「ゲームとは何ぞや」を誠実に考えた決着という感じがして好きだ。ジェームズ・キャメロンが3D映画製作に行き着いた流れと通じるものがあると思う。

『アバター』における主人公が乗っている車椅子というのは、観客が座っている映画館の椅子のことだ。そんでもってネイティリが主人公にアイラブユーの代わりに言う「I see you(あなたが見える、わかる)」というのは「あなたが(立体に)見える」ということだから。

 ただ映画が好きだから映画を撮りました、ゲームが好きだからゲームを作ります、じゃない。映画で語るのに最も適したストーリーとは何ぞや。携帯型ゲーム機ですべきゲームとは何ぞや。ソフトとハードの連動と相乗効果の先にのみ"新しい表現"があるとしみじみと思う。

 ちなみにSwitchの『ルイージマンション3』でルイージが渡される通信機はまんまバーチャルボーイで「立体視ゲーム」の歴史だったルイージマンションを2Dで発売しなくてはならない時流への微かな抵抗というか、自虐じみたものを感じる。こういう、誰にわからなくてもいいクリエイターの葛藤とかプライベートな後ろ暗い怨念を、一流のエンターテインメントの中に忍ばせている作品もまた好きだ。マシュ―・ヴォーンの映画とか。

 任天堂という企業は今や完全無欠の優等生のような扱いを受けつつあるけど、3DSの立体視にしろ、Wiiのモーションセンサーにしろ、ずっと誠実に変なことをやってきているんだよな、と最近よくゲームをしていて振り返りながら考えている。ゲームオタク界隈の皆さんからしたら「昔からずっとそうだよ」という話かもしれないけど。
 SONYのプレステシリーズのように、ずっと血眼になってスペックをガンガン積んでいく、その姿勢も本当に好きだ。一流のエンターテインメントに一流のテクノロジーは必要不可欠だから。芸術と科学は二人三脚であって、技術向上なしに新しい芸術などありえないから。アン・リーも言っていました。
 でも任天堂はそこに執着しない。「自分たちが作ったゲームを、人はどのようなタイミングで、誰と、どこで、どういう姿勢で遊ぶんだろう?」を重視して、Switchは生まれたんだと思う。
 ひとりで孤独にやる時も、みんなでワイワイやる時も、社員旅行でそんなに仲良くない会社仲間とやる時も、どんな瞬間もSwitchは受け入れてくれる。ジョイコンを外したり、ドッグから外したり。2024年にもなって何を言っているんだという感じかもしれないが、こういう感覚が自分の映画作りに少し欠けていたところかもしれない。

 3Dで映画を作ったところで3Dは今のところ観客に多くを求めすぎる(配信不可、専用眼鏡装着必須)し、4Kで撮ってもほとんどの人は4KとフルHDの違いはわからない。なんなら4KとHDだってわからないだろう。
 それを「感度が低い」とか「凡人にはわからない」「本質じゃない」みたいな選民思想でものを作るのはもうやめよう。最近そういうことを思うようになりました。エンターテインメントは素晴らしいけど、エンターテインメントだけが人生じゃない。でも『インターステラー』はIMAXレーザーGTで観ないとダメです。

いいなと思ったら応援しよう!