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夏季刺網漁短期研修

はじめに

春にトライアル実施をした小田原の刺網漁短期研修について、今回、8月19日(月)~22日(木)までの3泊4日のプランで夏季研修を実施しました。


8月19日(月)~江之浦漁港にて~

8月19日(月)AM3:00に江之浦漁港に集合し、刺網漁の現場研修からスタートしました。

まだ暗い時間から出漁します

海上作業に従事した後、AM5:00頃、帰港。その後は、漁獲物の網外し作業を行い、その後、使用した漁具の修繕作業を行いました。

1日目は江之浦の漁業者にお世話になりましたが、この日にご対応頂いた親方の1人は今回の取組みで、はじめて若者の指導を行ったとのこと。


漁獲物の網外し作業。この日はタカノハダイが多かった

最初は「どの程度までお願いしていいか」といった戸惑いも感じられましたが、参加した若者がアグレッシブに取り組む姿を見て、「よし!」と、最終的には様々な内容をお任せしていました

受け入れ側の親方もはじめての経験だったりするので、「どの程度の仕事なら任せていいのか?」と、戸惑う面もあるところを、実際にコミュニケーションを取る事で、その溝はちょっとずつ埋まっていく様を見て、この研修を実施する意義を感じました。

親方、研修生、地域のお手伝いの方が一体になって作業。
朝日が眩しい…

そう、漁師の後継者を増やすことは簡単なことではないにしても、こうした一つひとつのステップが次に繋がるのではないかと捉えています。何事も地道な取組みが大切ですね。

さて、江之浦での研修はおよそお昼で終了し、翌日に備えて早くお休み頂きました。

8月20日(火)~小田原漁港にて~

この日はAM5:00に小田原漁港に集合し、研修2日目がスタート。
研修2日目はシラス漁師さんにお世話になりました。

生シラスは鮮度が命。船倉に氷を詰め込み、出漁。

前週までの台風の影響もあって、この日シラスは獲れず残念な結果となりましたが、今回の研修ではそうした場合にも備えて前々から仕事を用意していました。

シラス漁後、親方の持つ加工場へ。
この日、アカモクの加工作業を実施しました。

力仕事!


実はこの親方は6次産業化に取り組んでおり、加工~販売までも自ら手掛けています。「いつ寝ているんだろう?」と思うくらいにお忙しい方なのですが、持ち前のバイタリティで各種積極的に取り組んでおられます。

さて、研修内容に戻りますが主にアカモクの裁断などの加工作業を実施しました。これがなかなか力のいる作業で、同行した職員の話では、何度も裁断を繰り返すうちに皮膚が剥けるなど、結構過酷な作業のようです・・・。

アカモクはスーパーフードとも言われ、
栄養素は海藻の中でもトップクラス!

このような作業を夕方までで終え、ここで終了。
研修生も思わずガッツポーズしていました。
ハードな1日でしたが、海上~加工作業まで幅広く実施出来て、充実した1日となりました。

8月21日(水)~小田原漁港にて~

海上研修最終日。
この日は、初めて職員の同行なく研修生のみで親方の船に乗船しました。
この日も前日に引き続き、シラス漁に同行しましたが、やはり漁模様は厳しく、漁獲はないまま帰港となりました。

獲れる日もあれば、獲れない日も。
自然相手の仕事ですから、仕方のないことです。

その後、シラス加工場で干し具の清掃作業を行い、お昼頃には研修が終了しました。

地道な作業でも手を抜かずにしっかりとやりきる研修生


最後は、2日間お世話になった親方にご挨拶。
親方と連絡先を交換し、「シラスが獲れたら手伝いに来いよ、連絡するから」と言われ、研修生も即答で「必ず行きます!」と回答
次に繋がってくれるといいな、そんな期待を持てた瞬間でした。

8月22日(木)~まちあるき研修~

研修最終日は「まちあるき研修」を実施しました。
「まちあるき研修」を実施した意図としては、これからの時代の漁師に求められるのは、「獲って終わり」ではなく、「獲ったその先」をいかに想像・創造できるかにかかっていると考えてるためです。

まちあるきの目線から、水産業が小田原の中にいかにこれまで息づいてきたか、そして、今どのように息づいているのか、そうしたことを目で見て、肌で知るために、研修を実施しました。

ご案内頂いたのは、市内でゲストハウス「Tipy records inn」を営むコアゼ ユウスケさん。コアゼさんは、多くの移住者をまちあるきを通じて、小田原に呼び込むなど数多の実績があるプロであり、またビジネススタートアップや、ビジネスイノベーションを創出する「ARUYO ODAWARA」のマネージャーを務めるなど、幅広く活躍されています。

そうしたコアゼさんのご案内のもと、まちあるき研修を実施しました。

小田原の老舗鮮魚店「魚國」さん
売るプロの意見を聞くことも大切

最初に訪れたのは、前述の「ARUYO ODAWARA」
実は今回参加した研修生も将来的に漁業就業する傍ら、自ら低利用魚のブランディングや商品開発を手掛けたいといった想いがあり、そうした方にとって、ARUYO ODAWARAの存在は非常に大きいものと感じられたのではないでしょうか?

いずれ小田原で漁業就業し、その先のビジネス展開を考えるなら、是非活用して頂きたい場所です。
(ちょうど9/7のあっぱれ!KANAGAWA大行進でTipyやARUYOが特集されていたので、詳細気になる方は下記のリンクをご覧ください。)


その後、市内各所を巡りながら宮小路方面へ。
宮小路は言わずと知れた、漁師たちのお膝元。
かつて、小田原がブリ漁で最盛期を迎えた時代、旧小田原魚市場に隣接する宮小路は、仕事後の漁師の休息地として大いに賑わいました。

宮小路へ向かう遊歩道から
市民会館が解体され、小田原城が見えますね

聞いた話ですが、かつて宮小路には、6~7箇所の映画館があったそうです。当時、映画は庶民の娯楽であり、仕事を終えた漁師さんもよく足を運んでいたとか。
更に、お金のある漁師さんは料亭で芸者遊びをしていたそうで、まさに経済の中心地だったそうです。

少し話が逸れましたね。すいません。
さて、宮小路で松原神社や、旧東海道の本陣を巡った後、早瀬ひもの店へ。
有難いことに、こちらでは加工場の見学をさせて頂きました。

現場を見学できる機会は貴重ですね

小田原を代表する水産加工品と言えば、干物・蒲鉾ですが、職人さんが手作業で丁寧な仕事をする加工屋さんも多く存在しており、早瀬さんもそのようなお店で、小田原でも有数の「美味しい」干物屋さんです。

干物の加工場の見学のあとは、近くの籠常さんへ。
籠常さんは鰹節のお店で、店内に入ると良い香りがするお店です。
近年なかなか見なくなった量り売りをするスタイルで、自分の好みの鰹節を希望の数量を伝えて、購入することが出来ます。

小田原でも鰹節の原料となる、ウズワ(ソーダガツオ)が近年すごく獲れていますが、こうした生業が続いているのも、小田原に漁業があるからと言えます。

ちなみに、鰹節などの出汁に代表される和食文化は、現在海外からも注目されており、外国人のシェフも籠常さんに訪れるそうです。すごいですね。

その後は、旧小田原魚市場跡地を見学した後、すぎせいで「さつま揚げ」休憩。揚げたてのさつま揚げがとっても美味しかったです。

旧魚市場近くの「海へと続くトンネル」
最近、外国人観光客が多く訪れているそう

最後に「himono stand hayase」さんを訪れました。
先ほどの早瀬ひもの店さんの新業種。
炭火で焼いた美味しい干物を使った商品を食べることができるお店です。
店内もとてもオシャレで素敵な空間です。

こうしてまちあるき研修を終え、最後はTipy records innへ。
参加した研修生からも、「まちの中で水産業がどう息づいているかがよくわかった」、「これからの自分のビジネスを考えていく上で参考になった」と、とても大きな感触を得た様子でした。

さいごに

今回は3泊4日と連泊を伴う初の実施でした。
前週の台風の影響もあって、漁模様がすこぶる悪く、思ったような漁獲が出来なかったことが残念でしたが、陸上作業や、加工場での作業を通じて、おおまかには理解できたのではないかと思います。
また、受け入れ先の親方も初めて若者を受け入れた方もいましたが、思った以上に前向きに捉えて頂きました。さらに、「まちあるき研修」もとても満足のいく内容であり、総じてよかったといえる結果だったのではないかと思います。

今後もこうした取組みの継続が大事だとは思いますが、現場の漁師さんとも議論をしていきながら、よりよいカタチを作っていきたいなと思っています。

研修初日の江之浦漁港より
多くの浜で、漁業者と若者の交流が生まれてほしい!

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