数学の必要性
学生諸君に伝えたいことがある。今学んでいる学問の内、数学はかなりユーティリティ性が高い科目だ、ということだ。実際に私は学生時代にこんなことを学んでも将来使うことは無いのにと思っていたがそんなことは無く、むしろもっと真面目に学んでいればと思うことが非常に多い。私の仕事で特に多く使うのが数学で、物作りにおいては必要不可欠なのだ。
例えば何か物を作る時、具体的な設計図は無く頭のイメージだけを頼りに具現化するのと、自分だけ理解できればいい解像度の低い設計図でも有りそれを具現化するのとでは完成までの時間や品質が圧倒的に異なる。前者はいわゆるアート的なアプローチで各寸法に根拠はなく、目的に沿う様にテーラーメイドする手法で、後者は製造だ。ショーバイクの様なアート作品を創る場合は前者の手法がより魅力的な創作が出来るだろう。しかし私の様なビジネスとして物を作る場合には効率化が求められるため後者の手法一択となる。その効率化に求められるのが数学である。
今回はホイールスペーサーなる部品を製作した。
これはフロントホイールスペーサーなのでフロントホイールとアクスルシャフトショルダー間のスペーサーになる。
ブレーキサイドではないのでスラスト方向の寸法には自由度があり、その形状もシンプルな円柱で良いほど自由度が高い。先ほどの効率化の話でいくとより製造しやすい寸法と形状にすべきだが、ここが矛盾点でもあるが、効率化を最優先してしまうとかっこ悪くなる場合がある。特に私の事業で扱うモーターサイクルは趣味性の高いものなので物を作る場合にはデザインも重視される、そして生産の効率性もだ。
そういうわけで今回は円錐形状のスペーサーを作ったのだが、それを具現化するために三角関数が欠かせない。まさにこんなの将来使う?に該当するあれだ。しかしその角度が分からなければ闇雲にトライアンド修正を繰り返さなければならないし最悪トライアンドエラーになる。こんなスペーサー作るのに幾らもらうの?である。
2辺の寸法はすぐに与えられるので後は角度を求めるだけ。その角度を設定し切削していく。設計通り完成まで一直線だ。
学生諸君へ、今学んでいること全ては決して無駄ではないぞ。縄文時代のなんちゃらや、古文漢文の読み方はその道に進まないと必要性は見いだせないかもしれないが、間違いなく数学はどんなジャンルでもそのユーティリティ性を発揮できる学問であるのでしっかりと頭に留めてもらいたいと思う。そのために教える側がこういうことをちゃんと伝えられるかが学ぶ意欲において非常に重要なポイントになるだろう。大半の人が大人に成り、社会に出てこのことに気付くのだから。
ODA SYCLE
小田