スターターモーター(セルモーター)の空回り
考えればスターターモーター(セルモーター)ほど重要なパーツはないのかもしれない。エンジン良し、トランスミッション良し、その他車体回りも良しだとして、しかしスターターモーターが正常に動かなければそのバイクに乗って走り出すことは不可能である。正確には不可能ではなく、押し掛けなどエンジンの始動方法はあるが困難なことには変わりない。エンジンの始動=スターターモーターとなっている現代において、その故障は致命的と言えるだろう。今回はそのスターターモーターの故障一つである空回りについて、驚くべき原因を紹介しようと思う。
現在作業中のハーレーは、1976年 XLH アイアンスポーツである。一通り作業が終わりエンジンを始動させようとスターターモーターを回す。しばらくぶりの始動ということもあり、セル一発とはならず何度かスターターモーターを回していると急にモーターの回転が速くなり手ごたえがなくなった。「空回りかっ!」そう思いながら再度スターターを回すも、もう以前の様にエンジンをクランキングさせることはなく、ただただウィーンと手ごたえ無く回るばかりである。
故障には前兆があるものもあるが、やはり急に訪れるものが一般的だ。本当に毎回、「なぜ今?」と思ってしまうが、今回の場合は試乗に出た先やお客さんに引き渡した後でなくてよかった。もう少しで作業が完了すると思っていた矢先に追加作業が舞い込んで来て気分は下がる一方だが、気を取り直して原因を追究する。
ハーレーダビッドソンにおいてスターターモーターの空回りという故障は割と有る、どちらかと言えばメジャーなカテゴリーに入る。そしてその原因のナンバーワンはワンウェイクラッチギヤの故障である。スターターモーターはエンジンをクランキングさせるためにクラッチシェルの外側に設けられたリングギヤを回している。その構成は以下の通りである。
スターターモーター → 減速ギヤ → ワンウェイクラッチギヤ → クラッチシェルのリングギヤ
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