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ジョーカーに厳しいボクシングの洗礼、チャイヤプックはダウンを奪い快勝~2023年12月2日のThe Fighter Next Generation
12月2日にバンコクのスペースプラスで行われたプロボクシング興行”THE FIGHTER NEXT GENERATION”で、メインの4回戦に登場したジョーカーはフランスのジュリアノにフルマークの判定負けを喫した。
地下格闘技のカリスマ選手として、アンダーグラウンドを中心に、若者に人気のジョーカーだったが、プロボクシング転向第3戦で厳しい洗礼を受ける形となった。
NEXT GENERATIONは、新人発掘イベントとして、ここ最近、TL&ギャラクシープロモーションが毎月開催しており、全試合4回戦、または3回戦で行い、テンポが速く、一般層も取り込みやすいという目論見もある。
この日は予定していたうちの1試合が選手の健康上の問題から取りやめとなり、4回戦全4試合での実施となった。出場した8選手のうち、ジョーカーのみが、入場時に3分ものプロフィール動画が流されて、プロモーターからの期待もうかがえた。
動画では朝10キロ走ってからのジムワーク、夕方に4キロ走ってのジムワークを毎日行い、ハードなトレーニングを毎日こなしていると強調、「プロボクシングは、路上の殴り合いとは違う。練習を課して、うまくアジャストしていきたい」と語っていた。
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ジョーカーはこの試合で、プロボクシングでは3戦目、10月14日に同じNEXT GENERATIONでデビューしてから、11月4日、12月2日と矢継ぎ早に試合をこなしてきた。ジョーカーのこの日の対戦相手はフランスのジュリアノ・ファントン。タイ在住で、現地でプロ活動を行っている選手でまだ20歳。バンコクにある、欧米系のボクシングジム、THE BOXで練習し、ここまで、全てタイで戦ってきた。
プロ戦績はこれまで、3勝(2KO)1敗で、この1敗は7月に韓国選手と8回戦を戦い、6回TKO負けをしている。サウスポーのボクサータイプで正統派、ケンカ殺法のジョーカーとは正反対のスタイルである。
試合は、初回開始直後にジョーカーは立て続けに派手に顔面にパンチをもらう。ジュリアノは足を使いながら丁寧にジャブを付いて、切り崩しに掛かる。時折打ち合うも、ジュリアノのパンチのほうが的確で、ジョーカーがダメージを負う。早々の決着の可能性もあったが、初回をなんとか持ちこたえたジョーカー、2回からは少しジュリアノの動きにも慣れたのか、大きなトラブルには至らない。変則的なビックパンチ(左右のフック)を振り回し、応戦するが、ジュリアノには当たらない。
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この試合を観て、今となってはクラシックファイトとなった辰吉丈一郎対アブラハムトーレス戦を思い出した。それまで5戦全勝の若き日の辰吉丈一郎が、トーレスに大苦戦、持ち味の攻撃力も封印され、引き分けた91年の一戦である。
若いホープ対技巧派という図式で、ラウンドを重ねても同じ展開でホープ側が徐々に翼をもがれていく。
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最終回の4ラウンドには、ジョーカーは、散々コーナーに追い込まれて、危険なパンチを被弾する。レフェリーによってはストップをかけるだろう。終了ゴングが鳴り、採点はジャッジ3者とも40-36を付けるフルマーク。あの日の辰吉とトーレス以上に、ジョーカーとジュリア―ノの差は感じられた。
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地下格闘技のカリスマ選手から、RWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)のメインに抜擢されて、三浦孝太と対戦というストーリーは多くのファンを引き付けたが、ジョーカー物語の続編であるプロボクシング編はなかなか厳しい。
しかし、まだ2カ月で3戦を戦ったばかり。プロボクシング編、巻き返しのストーリーが始まることを期待したい。
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この日の第二試合にはジョーカーと同じく、先月(11月4日)に引き続いて期待のスーパーライト級、チャイヤプック・チャイニコムが出場した。
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対戦相手は、この日がデビュー戦の中国人、ジャン・シオジョン。高身長で身体もチャイヤプックと比べてひと廻り以上大きく、やりづらさを感じさせる。サウスポーのチャイヤプックは、前戦同様、右ジャブから接近してのパワフルな左右フックをふるう。
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オーソドックスのジャンはストレート系のパンチで応戦するも、チャイヤプックはなかなか被弾しない。チャイヤプックが丁寧に上下を打ち分け、2ラウンドにはボディへのアッパーなどの連打でコーナーに詰めたジャンに右ストレートを顔面に打ち込み、ダウンを奪う。立ち上がるジャンはこのラウンドをなんとかエスケープする。3ラウンド、4ラウンドともボディへのアッパーを中心にチャイヤプックが責め立てるも、ジャンの頑丈さとスタミナに倒し切ることができず試合終了となった。ジャッジ三名とも40-35をつけてチャイヤプックが判定勝ちを飾った。これでプロ戦績は8勝(4KO)1敗。
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チャイヤプックがトレーナーを努めているThe Boxから練習生が大挙して応援に訪れ、無観客の会場では声援が飛び交った。(関係者以外は一般客を入れないテレビ興行)
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メインでジョーカーに勝利したジュリアノもThe Box の所属選手であり、The Box勢は、今後タイボクシング界の一勢力となるかもしれない。
また、第3試合は元アマチュアボクシングタイ代表で、プロ転向後5戦5勝(4KO)のサキティ・パンヤピウォンがウェルター級4回戦に挑んだが、キャリア1戦(1勝)のイラン人選手にKOで敗れる波乱。
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イラン人選手、ヨウネス・エスマエイザデスは、タイを拠点にムエタイやカンボジアのクンクメールのリングに上がっている。ボクシングシューズではなく、スニーカーでリングに上がり、関係者に失笑されるも実力は確かだった。
イラン式?の独特のステップから、正統派のサキティとパンチを積極的に交換する激しい試合で、2ラウンド2分、ヨウネスが右ストレートをサキティの顎に着弾させダウンを奪い、すぐさま、左フックで2度目のダウンを追加してストップ勝ち。ボクシングはやってみるまで分からないと痛感する試合であった。
※SPACE PLUSで現地観戦
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