ウィラポンのタイ料理店、バーンチャンプローク（世界チャンプの家）

2023年10月23日 09:13

バンコク中心部から車で東北方面に向かうと、コラート（ナコンラーチャシーマー）県の入口、ラタナコンダム辺りまで3時間半～4時間掛かる。そこから道は分かれて、北へ向かう国道に入り、ひたすらまっすぐ進んでいくと、約2時間で、チャイヤプーム県ナイムアンのバーンチャンプローク（世界チャンプの家）に辿り着く。Googleマップでは、当初4時間半と出ていたが、途中で混んだり、休憩を挟んだりで6時間をみたほうが良いだろう。

バーンチャンプロークは文字通り「世界チャンプ」がいる家である。タイ料理レストランで、チャイヤプームの街の中心街から外れた場所で、「世界チャンプ」がまだ現役ボクサーとして終わりを迎えた頃、14年ほど前にオープンした。

お店のオーナー兼シェフは、プロボクシングの元「世界チャンプ」のウィラポン・サハプロム氏（又はウィラポン・ナコンルアンプロモーション）。ウィラポン氏が、自ら厨房に立って調理している。

ウィラポン氏は現役時代、プロボクシングで2回、バンタム級で世界王者となった。2回目の王座は大阪で辰吉丈一郎をKOして強奪したもの。以後、日本で西岡利晃の挑戦を4度に渡って退けるなど、14度の防衛に成功した。その後、長谷川穂積に世界王座は奪われたが、辰吉、西岡、長谷川との対戦で日本のボクシングファンに強い印象を残し、その功績をリスペクトする日本のファンも多い。

プロボクシング転向前は、ムエタイの名選手として活躍し、ジュニアフライ級、フライ級、ジュニアバンタム級の3階級でラジャダムヌンスタジアム認定王者となった。

お店に入るとまず目に入るのは、ウィラポン氏が現役時に獲得したチャンピオンベルトの数々だが、ベルトが収められたケースの下の方にはラジャの三本のベルトもしっかりある。「WBC世界バンタム級王者」の印象が強いウィラポン氏だが、最初に獲得したWBAのチャンピオンベルトもある。

プロボクシング転向後に僅か4戦目でWBA世界王者となったが、初防衛戦でナナ・コナドゥに2ラウンドKO負けで王座を失った。当時のことを聞くと「いけそうだからどんどん前に出ていったら、良いパンチをもらった。まだボクシングの経験がなかったから仕方がない」と笑って話してくれた。

著者の訪問当日はウィラポン氏と奥さまがお店で出迎えてくれた。4ｰ5年前にお店に訪問した際は学生だったウィラポン氏の娘さんがお店を手伝っていたのだが、既に巣立って、バンコクで自立しているという。息子さんも大学を卒業して会社員としてバンコクで働いており、現在は夫婦水入らずで暮らし、店を切り盛りしている様子だ。

お店の料理メニューはタイ語のみ、「サラダ系」「炒め物系」「揚げ物系」「スープ系」「和え物（ラープ）」と項目が分かれている。日本人に馴染みのある「トムヤムクン」「パッタイ」「ガパオライス」「グリーンカレー」などのメニューは見当たらない。

「日本人のファンがはるばるやってくることもある」と話すウィラポン氏に日本語や英語のメニューがあったらいいかもしれないと言うと、「携帯のアプリで翻訳できるから大丈夫」とのことだった。細かいことを気にしない性格が少しうかがえた。

メニューには基本的にはタイ東北料理（イサ―ン料理）が多いが、東北料理一辺倒という訳でもないようだ。

著者のお勧めは「ラープムーลาบหมู　/　豚ひき肉の和え物」「ムーデッドディアオหมูแดดเดียว　/　豚肉の揚げ物」「トムセーブクラドゥックムーต้มแซ่บกระดูกหมู　/　肉付き豚軟骨のスープ」「タムタイ（ソムタムタイ）ตำไทย　/　パパイヤサラダ」あたりで、日本人にも食べやすいものをウィラポンシェフに選んでもらうのも良いだろう。プラ―ニン（ティラピア）、カエルの料理もある。