代理コードを完全に理解した
連休中に音楽理論を学んだので、商店街で流してもらっている曲のアレンジについて解き明かす。ついでに下手の横好きからの「曲を作ろう」という話。
完全に理解したとは?
いきなり余談から。「完全に理解した」というのは、IT界隈で用いられるネットスラングで「チュートリアルをこなして分かった気になった」くらいの意味である。入門したての万能感に「ダニング=クルーガー効果」という名前まで付いているのが面白い。
今回は音楽理論の話で、バンドの友達が貸してくれた「最後まで読み通せる 音楽理論の本」を最後まで読み通した。弦楽器バンドマンはTAB譜に頼って五線譜が読めなかったり、行儀よく真面目な理論なんて肌に合わなかったりするところ、音楽理論の必要性を説きつつ噛み砕いてくれる良い本だった。
おかげさまで音楽理論について分かった気になったので、実際に手を動かして確かめてみようという趣旨である。
商店街に放送している紹介ソングの解析
以前に録った商店街ソングがこの5月から水道筋商店街で日に50回くらい流れている。私がメロディとコードを付けたものを持ちより、徳永さんがカッコよくアレンジしてくれたので、後追いながら代理コードによるアレンジを解き明かすことで、完全に理解した感を出す試みである。
まず、私が持ち寄ったメロディ&コードから、ヴォーカルの声や曲のイメージに合わせて転調したものがつぎの楽譜になる。実際にはもっとハネたリズムになっているのを単純化している。
「シ」と「ミ」に調号のフラットを付けることで、臨時記号なしにメロディが書ける。調号の数からキーを判定する方法が本の中で紹介されていた。
♯系の場合は、右端の♯記号を音の第7音と考えてください。
♭系の場合は、右端の♭記号を第4音だと考えてください。
「ミ」が第4音ということはミ♭→レ→ド→シ♭と下がって、ルート音は「B♭」となる。これより長調であればB♭メジャースケールか、短調であれば2音下のGナチュラルマイナースケールであると判断できる。どちらかと言えば明るいメロディーだし、B♭で始まりB♭で落ち着くので、B♭メジャースケールだと判断できる。
みんな知ってるドレミファソラシドは、ドから始まるCメジャースケールであり、黒鍵を挟む全音 or 白鍵続きな半音のパターンが全全半全全全半になっている。ドレミファソラシドを鍵盤2個分だけ下に平行移動すると(シ♭)ドレ(ミ♭)ファソラになり、シ♭から始まるのでB♭メジャースケールと呼ぶ。
メロディラインに出てくる音階で構成されたコードだけ使っとけば間違いない!というのがダイアトニックコードである。まず最初にルート音「B♭」から1つ飛ばしの音階で積んだ和音が「B♭△7」となる。2番目は「Cm7」、3番目は「Dm7」、4番目は「E♭△7」、、、
何番目のダイアトニックコードがどんなキャラクターを持つのか、転調するごとに議論するのは大変なので、バッターを打順で呼んでキャラ付けるが如く、アラビア数字ⅠⅡⅢⅣⅤⅥⅦによって表記する。
ルートⅠからの位置関係(つまりアラビア数字)によって「T:トニック」「D:ドミナント」「S:サブドミナント」の3グループに分ける。曲が展開しても最終的にはT:トニックなコードに落ち着きたい力が働き、そこに向けた展開を演出するためS:サブドミナントやD:ドミナントを駆使する。
このグループ分けができるとコードのアレンジができる。
同じコードのグループから選んだコードに置き換えることを"代理コード"と言います。
実際に書き下してみて、徳永さんアレンジもトニックT→T、サブドミナントS→Sへと同じグループに置き換えていることが確認できた。
もともとAメロもBメロも同じコードだったのが、Aメロにアレンジが入ってガラッと変わっている。アレンジ後は「ツーファイブ」というⅡ→Ⅴ→Ⅰの鉄板ケーデンスが出現したり、同じコードが続く時にメジャー/マイナーの変化を付けたり、Bメロの最後はAメロを先取りしてdim付けたりと小技が効いている。
視界が開ける万能感が好き
冒頭の「ダニング=クルーガー効果」に話を戻して、私はけっこう「完全に理解した」感覚が好きで、いろんな分野に手を出す「下手の横好き」を自覚している。それでも、知らなかった世界に触れて視界が開ける万能感が好き。理論を知れば音楽の楽しむ側面が1つ増えた気がする。
多くの人はわざわざ理屈から入らないので、教本を2~3冊読んで愚直に実践するだけでも、なんとなく趣味でやっている人達の上位3割くらいに入る手応えがある。地道なように見えて、労力対効果では巨人の肩に乗るくらいの裏技である。そのまま情熱が続いて、結果として一流になるまで続ければ素敵な事だと思う。ただ、必死になって一流を目指したりはせず、楽しさに任せる。
「○○でメシを食う」視点からすると上位3割じゃ足りないけれど、繋がるご時世にどの方向を目指しても上には上がすぐ見つかるのと、変化の激しい時代だと極めた頃には希少性がなくなる恐れもあることから、人生をかけるには二の足を踏む。それよりは、いろんな分野にフックをかけておいて、掛け合わせた境界領域でオリジナリティが出せればいいなと思う。
という訳で曲を作ろう
商店街に作った曲が流れるのは、けっこう良い経験になった。ライブ出演もスタジオ合わせもやりにくい昨今、宅録は音楽で表現ができる1つの選択肢としてアリかもしれない。
興味を持ってくれた友達が「曲つくろうぜ」熱を持って、お互いに曲創って披露しあうようなサークル活動を始めそうなので、興味ある方はお声がけください。ガチ勢じゃなくて、これから始めるくらいの人がちょうどよい。